[PB-3-2] セルフモニタリングの定着に焦点を当て目標とする作業の再開が可能となった急性心筋梗塞術後の事例
【はじめに】今回,経皮的冠動脈形成術後の患者に対して活動記録を用いたセルフモニタリングを行った.本事例の目標に対して,作業療法(以下OT)ではバイタル記録表を用いてセルフモニタリングを促した.その結果,家事動作で主体的な活動量の調整が可能となった.本事例を通して心臓リハの自己管理能力の獲得に必要な要素について検討したため報告する.尚,発表については当院倫理審査委員会の承認を得ている.
【症例紹介】80代女性で病前は日常生活は自立し,週2~3回徒歩15分かけて買い物をしていた.X年Y月Z日に胸部絞扼感を伴う血圧低下でA病院に搬送され,急性冠症候群と診断.左前下行枝に対し緊急経皮冠動脈形成術を行い,Z+25日に右冠動脈に対し待機的経皮冠動脈形成術施行した.Z +37日に当院転院となる.
【作業療法評価】入院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)は合計95点.移動は短距離歩行器歩行自立であったが,入浴の浴槽跨ぎでは脈拍数(以下PR)60~80,Borg scale 13,動脈酸素飽和度(以下SPO2) 80%後半まで低下していた.NYHA分類はⅢ度で,症状が出現する最小運動量は2.5 Metsであった.洗濯・皿洗いは,実施中にPR60~80,Borg11で経過.掃除機掛けはPR60~120,Borg13で,息切れに気づかずに最後までやろうとし,中断となった.目標設定では作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を使用し,「買い物」「屋外の移動」「階段昇降」「掃除・洗濯」(平均満足度1.5/5)が挙がった.
【問題点】心肺機能低下に加え全身耐久性の低下や筋力低下があり,負荷量の多い動作であると息切れ症状や心拍数の上昇があるにもかかわらず,休憩なしで実施しようとする.そのため,目標の家事や買い物を自立して行うことが困難となっている.
【目標】掃除,洗濯,歩行時に,疲労に気がつき体力に合わせて休憩を挟み,目標とする作業に取り組むことが可能となる.
【介入と経過】入院3週目からOTを開始し,歩行器を使用して病棟での洗濯が自立することを目標とした.入院5週目から屋外歩行に向けた杖歩行練習を実施した.本人には動作時のきつさや脈拍をノートに記載してもらった.この頃より脈拍を確認することが増えた.また,自身で休憩を挟む様子が見られた.入院6週目に屋外のシルバーカー移動,家事や買い物に向けて介入した.自宅での動作の疲労感をMets表を用いて具体化した.本事例からは「買い物に行く日は休憩を多くとらないとね.」などの発言も聞かれた.
【結果】FIMは110点となり,歩行は屋内独歩自立,屋外シルバーカー歩行自立となった.掃除機かけはPR60~100,Borg scale 13で自身で脈を確認し,休憩を挟むようになった.ADOCに関しては平均満足度は4へ向上し,「休憩をはさみながら買い物はできそう.」という発言が聞かれた.
【考察】セルフモニタリングは「身体症状や認知プロセスの気づき」「自律的行動につながるための測定や記録」で構成されている1).バイタル記録表は,症状が出現する活動や脈拍数への気づきを促したり,自律的な行動につながる関わりであると考える.心臓リハのOTでは,自己管理能力の向上を図るためにバイタル記録表など客観的数値で自身を振り返る機会を増やす関わりを行うことが必要であると考える.
【参考文献】
1)Wilde MH,Garvin S:A concept analysis of self-monitoring.J Adv Nurs 57(3):339-350.2007 .
【症例紹介】80代女性で病前は日常生活は自立し,週2~3回徒歩15分かけて買い物をしていた.X年Y月Z日に胸部絞扼感を伴う血圧低下でA病院に搬送され,急性冠症候群と診断.左前下行枝に対し緊急経皮冠動脈形成術を行い,Z+25日に右冠動脈に対し待機的経皮冠動脈形成術施行した.Z +37日に当院転院となる.
【作業療法評価】入院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)は合計95点.移動は短距離歩行器歩行自立であったが,入浴の浴槽跨ぎでは脈拍数(以下PR)60~80,Borg scale 13,動脈酸素飽和度(以下SPO2) 80%後半まで低下していた.NYHA分類はⅢ度で,症状が出現する最小運動量は2.5 Metsであった.洗濯・皿洗いは,実施中にPR60~80,Borg11で経過.掃除機掛けはPR60~120,Borg13で,息切れに気づかずに最後までやろうとし,中断となった.目標設定では作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を使用し,「買い物」「屋外の移動」「階段昇降」「掃除・洗濯」(平均満足度1.5/5)が挙がった.
【問題点】心肺機能低下に加え全身耐久性の低下や筋力低下があり,負荷量の多い動作であると息切れ症状や心拍数の上昇があるにもかかわらず,休憩なしで実施しようとする.そのため,目標の家事や買い物を自立して行うことが困難となっている.
【目標】掃除,洗濯,歩行時に,疲労に気がつき体力に合わせて休憩を挟み,目標とする作業に取り組むことが可能となる.
【介入と経過】入院3週目からOTを開始し,歩行器を使用して病棟での洗濯が自立することを目標とした.入院5週目から屋外歩行に向けた杖歩行練習を実施した.本人には動作時のきつさや脈拍をノートに記載してもらった.この頃より脈拍を確認することが増えた.また,自身で休憩を挟む様子が見られた.入院6週目に屋外のシルバーカー移動,家事や買い物に向けて介入した.自宅での動作の疲労感をMets表を用いて具体化した.本事例からは「買い物に行く日は休憩を多くとらないとね.」などの発言も聞かれた.
【結果】FIMは110点となり,歩行は屋内独歩自立,屋外シルバーカー歩行自立となった.掃除機かけはPR60~100,Borg scale 13で自身で脈を確認し,休憩を挟むようになった.ADOCに関しては平均満足度は4へ向上し,「休憩をはさみながら買い物はできそう.」という発言が聞かれた.
【考察】セルフモニタリングは「身体症状や認知プロセスの気づき」「自律的行動につながるための測定や記録」で構成されている1).バイタル記録表は,症状が出現する活動や脈拍数への気づきを促したり,自律的な行動につながる関わりであると考える.心臓リハのOTでは,自己管理能力の向上を図るためにバイタル記録表など客観的数値で自身を振り返る機会を増やす関わりを行うことが必要であると考える.
【参考文献】
1)Wilde MH,Garvin S:A concept analysis of self-monitoring.J Adv Nurs 57(3):339-350.2007 .