[PB-3-3] MICS-AVR患者に対する自主トレーニング指導と運動記録の習慣化によりリハビリ意欲が向上した一例.
【はじめに】近年の心臓リハビリテーションでは,患者教育によるヘルスリテラシー向上に向けた啓発が注目されている.そのため,自主トレーニング(自主トレ)を通し,運動習慣を定着させる事は重要である.心疾患患者に対する自主トレ指導では,リスク管理を徹底し,適切な運動負荷量の設定に着目した報告はあるが,その習慣化や意欲に関して着目した報告は少ない.目的は,心疾患患者に対して運動記録の指導を行うことで自主トレ意欲が向上するかを明らかにすることとし,良好な結果が得られたため報告する.
【対象】症例は60歳代の男性で,診断名は心不全であった.心エコーでは,大動脈弁閉鎖不全症(severe AR)を認め,Simpson EFは44.0%,E/Aは0.85,E/e’は26.8であった.血液データは,BNPで2370であった.severe ARに対してMICS-AVRが施行された.心不全発症前ADLは自立していたが,手術待機期間は回復期病院に入院し運動療法や生活指導を受けた.運動習慣として,リハビリ介入以外の時間で自ら運動をするまでには至らなかった.本人の主訴は,「自宅に退院して元通りの生活に戻りたい.」であった.
【初期評価】HDS-Rは20点,SPPBは9点,BIは0点であった.Vitality Index(VI)は5点,標準意欲評価法の日常生活行動の意欲評価スケール(CAS)は34%であった.
【方法】スマートフォンへ自主トレ内容を毎日打ち込むよう指導を行った.また,自主トレが定着するよう,スマートフォンへの打ち込み作業の確認を実施し,実際に運動記録ができていた場合は,賞賛を行った.
【倫理的配慮】本報告に際し,症例から口頭及び署名で同意を得ており,報告すべきCOI関係にある企業等はない.
【経過】MICS-AVR施行後,HCU管理となった.術後の心エコーでは,severe ARの改善を認め,Simpson EFは48.9%,E/Aは0.86で改善し,E/e’は16.2となった.血液データは,BNPで70.8となった.術後翌日よりHCUでの理学療法・作業療法介入が開始された.術後3日,50m歩行が可能となった.ポータブルトイレを用いた排泄動作が見守りで可能となった.術後5日,病棟トイレを使用し排泄動作が自立となり,入浴動作以外の病棟内ADLが自立となった.術後10日,一般床へ転棟し,終日スマートフォンを操作しながら過ごすようになった.術後11日より,自宅環境に合わせてリハビリを実施した.布団を使用しているため床上動作練習,家事動作も行うため立位バランス練習,自宅内でも階段を多く使用するため階段昇降練習を実施した.術後20日に自宅退院となった.
【最終評価】HDS-Rは26点,SPPBは12点,BIは100点となり,6分間歩行は320mまで可能になった.VIは10点,CASは0%となった.
【考察】初期評価時は,自発的に行動する様子はなく経過していた.しかし,運動記録を残すことで,その成果を自身で視覚的に感じとることができ,他者から賞賛されることで,行動が強化され,自主トレの定着に至ったと考える.これらから,身体機能面の改善がみられ,ADLが向上したと考える.意欲に関して,退院時には,自主トレだけでなく,ADLも自発的に行うようになった.これらから,VIやCASの改善に繋がったと考える.また,SPPBの3点の向上を認めた.SPPBの臨床的に意義ある最小変化量(MCID)は1点と報告され,自然回復とは異なる結果を追うことができたと考える.
【結語】MICS-AVR患者に対して,運動記録の指導を行うことは,自主トレ意欲の向上を促す一助となる可能性がある.
【対象】症例は60歳代の男性で,診断名は心不全であった.心エコーでは,大動脈弁閉鎖不全症(severe AR)を認め,Simpson EFは44.0%,E/Aは0.85,E/e’は26.8であった.血液データは,BNPで2370であった.severe ARに対してMICS-AVRが施行された.心不全発症前ADLは自立していたが,手術待機期間は回復期病院に入院し運動療法や生活指導を受けた.運動習慣として,リハビリ介入以外の時間で自ら運動をするまでには至らなかった.本人の主訴は,「自宅に退院して元通りの生活に戻りたい.」であった.
【初期評価】HDS-Rは20点,SPPBは9点,BIは0点であった.Vitality Index(VI)は5点,標準意欲評価法の日常生活行動の意欲評価スケール(CAS)は34%であった.
【方法】スマートフォンへ自主トレ内容を毎日打ち込むよう指導を行った.また,自主トレが定着するよう,スマートフォンへの打ち込み作業の確認を実施し,実際に運動記録ができていた場合は,賞賛を行った.
【倫理的配慮】本報告に際し,症例から口頭及び署名で同意を得ており,報告すべきCOI関係にある企業等はない.
【経過】MICS-AVR施行後,HCU管理となった.術後の心エコーでは,severe ARの改善を認め,Simpson EFは48.9%,E/Aは0.86で改善し,E/e’は16.2となった.血液データは,BNPで70.8となった.術後翌日よりHCUでの理学療法・作業療法介入が開始された.術後3日,50m歩行が可能となった.ポータブルトイレを用いた排泄動作が見守りで可能となった.術後5日,病棟トイレを使用し排泄動作が自立となり,入浴動作以外の病棟内ADLが自立となった.術後10日,一般床へ転棟し,終日スマートフォンを操作しながら過ごすようになった.術後11日より,自宅環境に合わせてリハビリを実施した.布団を使用しているため床上動作練習,家事動作も行うため立位バランス練習,自宅内でも階段を多く使用するため階段昇降練習を実施した.術後20日に自宅退院となった.
【最終評価】HDS-Rは26点,SPPBは12点,BIは100点となり,6分間歩行は320mまで可能になった.VIは10点,CASは0%となった.
【考察】初期評価時は,自発的に行動する様子はなく経過していた.しかし,運動記録を残すことで,その成果を自身で視覚的に感じとることができ,他者から賞賛されることで,行動が強化され,自主トレの定着に至ったと考える.これらから,身体機能面の改善がみられ,ADLが向上したと考える.意欲に関して,退院時には,自主トレだけでなく,ADLも自発的に行うようになった.これらから,VIやCASの改善に繋がったと考える.また,SPPBの3点の向上を認めた.SPPBの臨床的に意義ある最小変化量(MCID)は1点と報告され,自然回復とは異なる結果を追うことができたと考える.
【結語】MICS-AVR患者に対して,運動記録の指導を行うことは,自主トレ意欲の向上を促す一助となる可能性がある.