第57回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-1] ポスター:運動器疾患 1

Fri. Nov 10, 2023 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PD-1-5] covid-19ワクチン接種に関連した肩関節障害に対するリハビリテーション介入について

鎌田 規宏1, 佐藤 剛2, 高橋 伶奈1, 杉澤 裕之1, 金子 翔拓3 (1.富良野協会病院リハビリテーション科, 2.富良野協会病院整形外科, 3.北海道文教大学)

ワクチン接種に関連した肩関節障害(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration;SIRVA)は「ワクチン投与後48時間以内に発生し7日以上持続する肩の痛みや機能障害」と定義され,covid-19ワクチン接種時にも生じるとされているが,日本での報告は極めて少ない.今回,SIRVAを発症した症例に作業療法(OT)を実施し改善を認めたため,考察を交えて以下に報告する.
【症例紹介】
症例は50代,女性. X年Y月,covid-19ワクチン接種後, 左肩関節痛が出現し当院整形外科を受診, 診断名は左肩関節周囲炎. X年Y+6月までステロイド注射や投薬治療を行ったが,疼痛・関節拘縮ともに増悪し,Dr.より処方ありOTを開始.しかし関節可動域(ROM)は改善せず,X年Y+8月に肩から肘までの放散痛の増悪を認め,胸郭出口症候群(TOS)の追加診断あり.仕事は介護職で,身体介助や洗濯動作・下衣更衣時に疼痛あり, 疼痛除去を希望される.OT評価では左ROM-T(Active/Passive)肩屈曲・外転145°/160°,1st外旋30°/30°,2nd外旋45°/45°,2nd内旋40°/40°. 疼痛は全運動方向最終域でNRS7-9, 筋力は僧帽筋上部MMT3レベル,腱板テストは全て陰性.TOSテストは全テスト陽性.Morleyテストは肋鎖間隙に強い圧痛と肩から肘へ放散痛を認めた.肩甲骨挙上テストは放散痛が軽減.Quick DASH機能障害スコアは39点,Hand20は18点.
なお,本人に対して今回の報告の目的と内容について説明し同意を得た.
【経過】
OT開始時, 疼痛原因は僧帽筋筋力低下による肋鎖間隙狭小化とそれに伴う神経血管束の圧迫と考えた.治療は介助方法の指導,ポジショニング指導,肩甲帯挙上エクササイズ(シュラグ動作),鎖骨下筋のダイレクトストレッチを行った.①介助方法の指導のみでは,疼痛軽減効果は得られなかった.②シュラグ動作を2週間程度実施後,介助動作時の放散痛・関節可動域ともに改善を認めた.③左肩から肘までの放散痛はNRS3-5と改善した.しかし肩関節水平内転の動作にて左肩前面から外側への疼痛が生じ, 四辺形間隙(以下,QLS)の狭小化による腋窩神経の絞扼が考えられ,大・小円筋のストレッチを実施した.
【結果】
X年Y+11月経過時,ROM-Tは肩屈曲・外転170°/170°,1st2nd外旋75°/75°,2nd内旋80°/80°,動作時痛はNRS1.筋力は僧帽筋上部MMT5レベル,TOSテストは全て陰性.Quick DASHは18点,Hand20は5点と改善し, 身体介助や洗濯動作,下衣更衣が疼痛なく可能となった.
【考察】
本症例はSIRVAに伴う肩関節障害およびTOSによる神経性疼痛で機能障害を呈した. AtanasofらはSILVAによる肩の損傷は滑液包炎,腱板炎であること, Gail B Crossらは治療法にステロイド注射やリハビリテーションを挙げており,改善まで2週間から半年必要であるとしている.今回, 早期からステロイド注射を実施したが,OT開始まで症状出現より6カ月を要した. 本症例に対し,シュラグ動作とQLS構成筋のストレッチが症状改善に繋がったと考え, 結果として疼痛緩和, ADL,IADLの遂行が得られたが, ワクチン接種の際にSIRVAを発症する可能性について考慮していれば, より早期に介入および改善が得られた可能性があり,SIRVAの存在を周知することで, より多くの現場での早期からの治療が可能になるのではないかと考える.