[PD-5-4] 鏡視下腱板修復術後患者の上肢活動量
【はじめに】鏡視下腱板修復術(以下ARCR)は良好な治療成績が報告されているが,術後の日常生活環境での上肢活動の客観的な評価は困難である.近年,三軸加速度計などを用いて患者の日常生活中の上肢活動量を計測した報告が散見されるが,ARCR術後患者の日常生活中の上肢活動量についての報告は少ない.
【目的】本研究の目的はARCR術後患者の術後経過時期の上肢活動量を横断的に調査し,他の評価との関連を明らかにすることである.
【方法】対象は,当院でARCR,術後リハビリを実施した患者で2022年6月から2023年1月までの期間に術前,術後8週,術後12週,術後24週の時期に該当した54例(平均年齢66.5±8.1歳 術前13名,術後8週14名,術後12週15名,術後24週12名)とした.他疾患の既往で上肢機能やADLに支障がある者,認知機能低下から三軸加速度計の装着や質問紙の回答が困難な者は除外した.評価内容は,術後経過時期の三軸加速度計のデータと総合的な肩の機能評価としてConstant Score,患者立脚型評価としてQuick DASHを使用した.測定機器は三軸加速度計(wGT3X-BT,ActiGraph社)を2台使用し,対象者の両上腕部に装着した.装着期間は3日間とし,入浴時を除く起床後から就寝までの装着を依頼した.収集したデータは解析ソフト(ActiLife6,ActiGraph社)を使用し,10秒ごとの時間間隔(epoch)でVector Magnitudeを算出し,以下の4つの指標を計算した.各epochの術側と非術側の総活動量をBilateral Magnitude,両手動作時の術側と非術側の活動比をMagnitude Ratioとして算出し,1日の中央値を代表値とした.また,測定期間内の術側と非術側の活動時間比をUse Ratio術側と非術側の活動量比をLaterality Indexとして算出した.いずれも3日間の平均値を代表値とした.統計解析はEZR(ver.1.61)を使用し,三軸加速度計の各指標を術後経過時期で比較するためにKruskal Wallis 検定,多重比較にSteel-Dwass法を用いた.更に,術後経過時期の三軸加速度計の指標とConstant Score,Quick DASHとの関連性の検討にSpearmanの順位相関係数を算出した.有意水準は5%とした.倫理的配慮は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者に口頭と書面で説明後に同意を得た.
【結果】三軸加速度計の結果では,Laterality Indexで有意差がみられ(p = 0.04),術後8週(中央値:-0.17,範囲:-0.32~-0.00)と術後24週(中央値:0.10,範囲:-0.17~-0.02)で有意に高値となった(p<0.01).しかし,Bilateral Magnitude,Magnitude Ratio,Use Ratioはいずれの時期でも有意差はなかった.また,三軸加速度計の指標とConstant Scoreの相関では,術後24週のみMagnitude Ratio (r=0.68 p=0.02)とLaterality Index (r=0.62 p=0.03)で有意な正の相関がみられた.Quick DASHでも術後24週のみBilateral Magnitude(r=0.60 p=0.04)で有意な正の相関,Magnitude Ratio(r=-0.59 p=0.04)で有意な負の相関がみられた.
【考察】Laterality Indexは値が大きいほど上肢活動中の術側の使用比率が高いことを示す.その為,ARCR後8週から24週の間で上肢活動量比が改善することが考えられる.他の評価との関連では,Constant ScoreとQuick DASHともに術後24週のみ有意な相関がみられた.術後24週は重労働やスポーツが許可される為,日常生活中の上肢活動量と両評価の関連が高くなった可能性が考えられる.今回の結果から術後24週において術側と非術側の同側性が肩の総合的な機能や患者立脚型評価と関連し,また,両上肢活動の大きさが患者立脚型評価と関連することが推測された.今後は縦断研究でARCR後の上肢活動量の変化や他の評価との関連を検討する必要がある.
【目的】本研究の目的はARCR術後患者の術後経過時期の上肢活動量を横断的に調査し,他の評価との関連を明らかにすることである.
【方法】対象は,当院でARCR,術後リハビリを実施した患者で2022年6月から2023年1月までの期間に術前,術後8週,術後12週,術後24週の時期に該当した54例(平均年齢66.5±8.1歳 術前13名,術後8週14名,術後12週15名,術後24週12名)とした.他疾患の既往で上肢機能やADLに支障がある者,認知機能低下から三軸加速度計の装着や質問紙の回答が困難な者は除外した.評価内容は,術後経過時期の三軸加速度計のデータと総合的な肩の機能評価としてConstant Score,患者立脚型評価としてQuick DASHを使用した.測定機器は三軸加速度計(wGT3X-BT,ActiGraph社)を2台使用し,対象者の両上腕部に装着した.装着期間は3日間とし,入浴時を除く起床後から就寝までの装着を依頼した.収集したデータは解析ソフト(ActiLife6,ActiGraph社)を使用し,10秒ごとの時間間隔(epoch)でVector Magnitudeを算出し,以下の4つの指標を計算した.各epochの術側と非術側の総活動量をBilateral Magnitude,両手動作時の術側と非術側の活動比をMagnitude Ratioとして算出し,1日の中央値を代表値とした.また,測定期間内の術側と非術側の活動時間比をUse Ratio術側と非術側の活動量比をLaterality Indexとして算出した.いずれも3日間の平均値を代表値とした.統計解析はEZR(ver.1.61)を使用し,三軸加速度計の各指標を術後経過時期で比較するためにKruskal Wallis 検定,多重比較にSteel-Dwass法を用いた.更に,術後経過時期の三軸加速度計の指標とConstant Score,Quick DASHとの関連性の検討にSpearmanの順位相関係数を算出した.有意水準は5%とした.倫理的配慮は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者に口頭と書面で説明後に同意を得た.
【結果】三軸加速度計の結果では,Laterality Indexで有意差がみられ(p = 0.04),術後8週(中央値:-0.17,範囲:-0.32~-0.00)と術後24週(中央値:0.10,範囲:-0.17~-0.02)で有意に高値となった(p<0.01).しかし,Bilateral Magnitude,Magnitude Ratio,Use Ratioはいずれの時期でも有意差はなかった.また,三軸加速度計の指標とConstant Scoreの相関では,術後24週のみMagnitude Ratio (r=0.68 p=0.02)とLaterality Index (r=0.62 p=0.03)で有意な正の相関がみられた.Quick DASHでも術後24週のみBilateral Magnitude(r=0.60 p=0.04)で有意な正の相関,Magnitude Ratio(r=-0.59 p=0.04)で有意な負の相関がみられた.
【考察】Laterality Indexは値が大きいほど上肢活動中の術側の使用比率が高いことを示す.その為,ARCR後8週から24週の間で上肢活動量比が改善することが考えられる.他の評価との関連では,Constant ScoreとQuick DASHともに術後24週のみ有意な相関がみられた.術後24週は重労働やスポーツが許可される為,日常生活中の上肢活動量と両評価の関連が高くなった可能性が考えられる.今回の結果から術後24週において術側と非術側の同側性が肩の総合的な機能や患者立脚型評価と関連し,また,両上肢活動の大きさが患者立脚型評価と関連することが推測された.今後は縦断研究でARCR後の上肢活動量の変化や他の評価との関連を検討する必要がある.