[PD-6-7] 手根管症候群患者における知覚障害の範囲とCTSI-JSSHとの関連に関する予備的研究
【諸言】手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)は知覚障害を主症状とする絞扼性神経障害である.知覚障害の評価として質,強さ,閾値や局在等の評価が行われているが,臨床的に知覚障害の増悪とともにしびれの範囲の増大を訴える症例も多い.近年,知覚障害の範囲を患者自身に評価してもらい,定量化するheat mapと呼ばれる評価が行われている.しかし,知覚障害の範囲と患者立脚型評価として使用されている手根管症候群質問表日本手の外科学会版(JSSH version of CTS Instrument:CTSI-JSSH)との関連は明らかとなっていない.本研究の目的は,CTS患者における知覚障害の範囲とCTSI-JSSHとの関連を調査することである.
【利益相反】本発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業はない.
【倫理的配慮】対象症例にはヘルシンキ宣言に基づき説明し同意を得た.
【対象・方法】対象は2021年10月から2023年1月までに手根管症候群の診断にて作業療法を実施した10例10手,平均年齢は67.4±15.2歳,男性2例,女性8例である.CTSI-JSSHを実施し,症状スコア(CTSI-SS)および機能スコア(CTSI-FS)の平均値を算出した.また,知覚障害の種類を自発性異常感覚,錯感覚,疼痛の3種類とし,先行研究(Helson JT;2019)に従い,前腕以遠掌側を図示したheat mapを用いて,それぞれの知覚障害の範囲を患者自身に色塗りして示してもらった.その後,前腕以遠の面積に対する知覚障害の範囲の面積比を求め,知覚障害の範囲を定量化した.各知覚障害の範囲(%)とCTSI-SS,CTSI-FSとの関連はSpearmanの順位相関係数を用い相関係数(rs)を算出した.統計解析にはSPSS26.0Jを使用し,危険率5%未満を有意とした.
【結果】知覚障害の範囲は自発性異常感覚が24.0±17.9%,錯感覚が27.1±18.4%,疼痛が11.0±14.0%であり,CTSI-SSの平均値は2.59±0.81, CTSI-FSの平均値は2.81±1.05であった.CTSI-SSと知覚障害との関連は,自発性異常感覚rs=0.760(p=0.011),錯感覚rs=0.821(p=0.004)疼痛rs=0.875(p=<0.001)であり,症状スコアはすべての知覚障害の範囲と有意な正の相関を認めた.一方,CTSI-FSとの関連は,自発性異常感覚rs=0.231(p=0.521), 錯感覚rs=0.170(p=0.638),疼痛rs=0.272(p=0.446)であり,機能スコアはすべての知覚障害の範囲と有意な相関を認めなかった.
【考察】CTSI-JSSHは手根管症候群の重症度と機能的状態を評価する信頼性の高い評価である.CTSI-SSとすべての知覚障害の範囲との間に有意な高い正の相関関係が認められたことから,知覚障害の範囲を算出することで症状の重症度を推定できると考えられた.一方,CTSI-FSはすべての知覚障害の範囲との間に有意な相関は認められなかった.したがって,知覚障害の範囲を算出してもADL上の問題は予測できず,動作・活動能力については作業療法で改めて面接や観察を実施し評価する必要があることが示された.
【利益相反】本発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業はない.
【倫理的配慮】対象症例にはヘルシンキ宣言に基づき説明し同意を得た.
【対象・方法】対象は2021年10月から2023年1月までに手根管症候群の診断にて作業療法を実施した10例10手,平均年齢は67.4±15.2歳,男性2例,女性8例である.CTSI-JSSHを実施し,症状スコア(CTSI-SS)および機能スコア(CTSI-FS)の平均値を算出した.また,知覚障害の種類を自発性異常感覚,錯感覚,疼痛の3種類とし,先行研究(Helson JT;2019)に従い,前腕以遠掌側を図示したheat mapを用いて,それぞれの知覚障害の範囲を患者自身に色塗りして示してもらった.その後,前腕以遠の面積に対する知覚障害の範囲の面積比を求め,知覚障害の範囲を定量化した.各知覚障害の範囲(%)とCTSI-SS,CTSI-FSとの関連はSpearmanの順位相関係数を用い相関係数(rs)を算出した.統計解析にはSPSS26.0Jを使用し,危険率5%未満を有意とした.
【結果】知覚障害の範囲は自発性異常感覚が24.0±17.9%,錯感覚が27.1±18.4%,疼痛が11.0±14.0%であり,CTSI-SSの平均値は2.59±0.81, CTSI-FSの平均値は2.81±1.05であった.CTSI-SSと知覚障害との関連は,自発性異常感覚rs=0.760(p=0.011),錯感覚rs=0.821(p=0.004)疼痛rs=0.875(p=<0.001)であり,症状スコアはすべての知覚障害の範囲と有意な正の相関を認めた.一方,CTSI-FSとの関連は,自発性異常感覚rs=0.231(p=0.521), 錯感覚rs=0.170(p=0.638),疼痛rs=0.272(p=0.446)であり,機能スコアはすべての知覚障害の範囲と有意な相関を認めなかった.
【考察】CTSI-JSSHは手根管症候群の重症度と機能的状態を評価する信頼性の高い評価である.CTSI-SSとすべての知覚障害の範囲との間に有意な高い正の相関関係が認められたことから,知覚障害の範囲を算出することで症状の重症度を推定できると考えられた.一方,CTSI-FSはすべての知覚障害の範囲との間に有意な相関は認められなかった.したがって,知覚障害の範囲を算出してもADL上の問題は予測できず,動作・活動能力については作業療法で改めて面接や観察を実施し評価する必要があることが示された.