[PF-1-3] 骨転移患者におけるリハビリテーション介入後のADL
【はじめに】
骨転移患者に対するリハビリテーションはガイドラインで強く推奨されているが,エビデンスの確実性は弱く,具体的なリハビリテーション方法は確立されていない.骨転移患者のリハビリテーションは病的骨折や脊髄圧迫による麻痺などのリスクがあるため,多職種によるリスク管理の検討が必要である.当院ではリハビリテーション選択アルゴリズムを作成し,2020年4月から多職種が参加する骨転移ボードにてリハビリテーション方法を決定している.骨転移患者のADLを維持・改善することはリハビリテーションの重要な目標である.しかし,骨転移患者のADLを調査した報告は乏しく,脊椎不安定性の有無でADLに違いがあるのかは不明である.そこで本研究は,脊椎不安定性の有無でリハビリテーション介入後のADLに違いがあるのかを明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
2020年4月〜2022年3月までに脊椎転移に対して骨転移ボードにて検討し,リハビリテーション介入した59例(年齢67.8±11.4歳,男性37例/女性22例)を対象とした.退院時のADLをBarthel Index(BI)にて評価し,移乗,歩行,階段,食事,更衣,整容,入浴,トイレ動作,排便,排尿の10項目を調査した.(BIは中央値で表記し,[]は四分位範囲とする)脊椎不安定性の評価にはSpinal Instability Neoplastic Scoreを使用し,合計点が7点以上で脊椎不安定性の可能性がある群(不安定群)と7点未満で脊椎不安定性がない群(安定群)の2群に分類した.統計解析はMann-WhitneyのU検定にて検討し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:5191).
【利益相反】
開示すべき利益相反はない.
【結果】
全例にアルゴリズムに基づいた動作指導および運動療法が施行された.対象者の特性としては,原発巣は肺癌が最も多く,放射線療法は41例,装具療法は29例であった.不安定群は41例(年齢67.2±11.9歳,男性25例/女性16例),安定群は18例(年齢69.1±10.4歳,男性12例/女性6例)であった.BIの合計点は不安定群で85[65または70,95]点,安定群で95[80,100]点であり,有意差は認めなかった.下位項目では移乗が不安定群で10または15[10,15]点,安定群で15[15,15]点であり,有意差がみられた(P=0.037).その他の下位項目では有意差を認めなかった.
【考察】
脊椎転移患者のADLを脊椎不安定性の有無を基準に2群間で比較したところ,移乗のみ有意差がみられた.装具装着により,体幹・股関節の屈曲・回旋可動域が制限されることが自立を妨げる要因として考えられる.移乗以外の項目では有意差がみられず,脊椎不安定性がある患者においても適切なリスク管理下でリハビリテーションを実施することで,脊椎不安定性がない患者と同等のADLを獲得できる可能性が示唆された.
骨転移患者に対するリハビリテーションはガイドラインで強く推奨されているが,エビデンスの確実性は弱く,具体的なリハビリテーション方法は確立されていない.骨転移患者のリハビリテーションは病的骨折や脊髄圧迫による麻痺などのリスクがあるため,多職種によるリスク管理の検討が必要である.当院ではリハビリテーション選択アルゴリズムを作成し,2020年4月から多職種が参加する骨転移ボードにてリハビリテーション方法を決定している.骨転移患者のADLを維持・改善することはリハビリテーションの重要な目標である.しかし,骨転移患者のADLを調査した報告は乏しく,脊椎不安定性の有無でADLに違いがあるのかは不明である.そこで本研究は,脊椎不安定性の有無でリハビリテーション介入後のADLに違いがあるのかを明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
2020年4月〜2022年3月までに脊椎転移に対して骨転移ボードにて検討し,リハビリテーション介入した59例(年齢67.8±11.4歳,男性37例/女性22例)を対象とした.退院時のADLをBarthel Index(BI)にて評価し,移乗,歩行,階段,食事,更衣,整容,入浴,トイレ動作,排便,排尿の10項目を調査した.(BIは中央値で表記し,[]は四分位範囲とする)脊椎不安定性の評価にはSpinal Instability Neoplastic Scoreを使用し,合計点が7点以上で脊椎不安定性の可能性がある群(不安定群)と7点未満で脊椎不安定性がない群(安定群)の2群に分類した.統計解析はMann-WhitneyのU検定にて検討し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:5191).
【利益相反】
開示すべき利益相反はない.
【結果】
全例にアルゴリズムに基づいた動作指導および運動療法が施行された.対象者の特性としては,原発巣は肺癌が最も多く,放射線療法は41例,装具療法は29例であった.不安定群は41例(年齢67.2±11.9歳,男性25例/女性16例),安定群は18例(年齢69.1±10.4歳,男性12例/女性6例)であった.BIの合計点は不安定群で85[65または70,95]点,安定群で95[80,100]点であり,有意差は認めなかった.下位項目では移乗が不安定群で10または15[10,15]点,安定群で15[15,15]点であり,有意差がみられた(P=0.037).その他の下位項目では有意差を認めなかった.
【考察】
脊椎転移患者のADLを脊椎不安定性の有無を基準に2群間で比較したところ,移乗のみ有意差がみられた.装具装着により,体幹・股関節の屈曲・回旋可動域が制限されることが自立を妨げる要因として考えられる.移乗以外の項目では有意差がみられず,脊椎不安定性がある患者においても適切なリスク管理下でリハビリテーションを実施することで,脊椎不安定性がない患者と同等のADLを獲得できる可能性が示唆された.