第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-2] ポスター:がん 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PF-2-3] 当院において作業療法が処方されたがん患者リハビリテーションの現状と課題

縄手 雪恵1, 今泉 香織1, 三宅 徹郎2, 髙﨑 侑3, 尾形 徹3 (1.小城市民病院リハビリテーション科, 2.小城市民病院外科, 3.小城市民病院内科)

【はじめに】
 当院は2017年11月よりがん患者リハビリテーション料の算定を開始している.今回,当院において作業療法が処方されたがん患者のリハビリテーション(以下リハビリ)の現状を調査し,今後の課題を検討した.
【対象と方法】
 2017年11月から2022年10月までに作業療法が処方され,がん患者リハビリテーション料を算定した患者61名のうち地域包括ケア病床へ移動した11名と拒否により1回の介入で終了となった1名を除く49名を対象とした. 
 診療録より,性別,年齢,診療科,原発巣,依頼目的,入院時Performance Status(以下PS),入院日数,介入日数,開始時Barthel Index(以下BI),転帰,手術の有無,骨折の有無,医療用麻薬使用の有無,リハビリ内容について後方視的に調査した.尚,今回の発表にあたり,当院倫理委員会の承認を得た.
【結果】
 対象者49名の性別は男性29名,女性20名,平均年齢は78.9±10.2歳であった.診療科は外科43名,内科6名,原発巣では,大腸癌19名,胃癌11名,膵癌7名の順で多く,消化器癌が42名と85%を占め,消化器癌以外が8名であった(1名は肺癌と胃癌併発).依頼目的は予防的リハビリ3名,回復的リハビリ14名,維持的リハビリ23名,緩和的リハビリ9名であった.入院時PSはPS1:11名,PS2:12名,PS3:20名,PS4:6名であり,平均は2.43であった.入院日数は,当院全体の平均在院日数は約14日であるが,34.9±21.9日であった.介入日数は平均14.0±10日,開始時BIの平均は62.7±27.7であった.転帰は自宅退院23名,転院8名,死亡退院18名であった.手術有18名(当院9名)であった.病的骨折は2名みられたが,リハビリ中や当院入院中の骨折例はなかった.医療用麻薬使用は15名であった.リハビリ内容に関して,理学療法が48名に実施されており,受動的徒手療法(関節可動域訓練,ストレッチ,モビライゼーション等)48名,筋力訓練43名,歩行訓練38名,基本動作訓練22名,物理療法12名,全身持久力訓練10名,階段昇降訓練8名,バランス訓練3名,家族支援1名が施行されていた.作業療法では,受動的徒手療法46名,上肢手指の運動26名,ADL訓練(基本動作含む)26名,筋力訓練25名,歩行訓練24名,全身持久力訓練12名,認知機能訓練11名,物理療法11名,離床7名,バランス訓練2名,家族支援2名,高次脳機能訓練・階段昇降訓練・趣味活動・環境調整・福祉用具紹介はそれぞれ1名の順で施行されていた.
【考察】
 当院におけるがんリハビリの特徴として,周術期から終末期まで多様ながん患者へリハビリを提供していた.作業療法では,上肢手指の運動,認知機能訓練,外出・外泊・退院を想定しての離床を取り入れた訓練が特徴的であり,福祉用具紹介やベット周囲の環境調整等個々に応じた細かな支援を行い,身体機能やADLの維持改善へアプローチしていた.
 今回,評価不十分な現状があり,終了時の状況まで調査をすることができなかった.評価内容の見直しや終了時の状況を明確にし,病期やPS別での介入の効果検証を行っていく必要があると考える.また,身体機能やADLに限らず,作業活動を通して家族や周囲の人々とのコミュニケーションの機会の提供や心理的支援等専門性を発揮し,Quality Of Life向上へ繋がるよう積極的に介入していく必要があると考える.さらに,多職種連携や院内でがん患者のリハビリを促すシステム作り等支援体制の充実を図る必要があると考える.