[PF-3-2] 環境調整を主とした短期的介入によって自己効力感の向上につながった終末期肺癌患者
【はじめに】
がん患者に対するリハビリテーションにおいて,終末期のADL低下が避けられない時期には,本人や家族の希望を尊重し可能な限りQOLを低下させないことが重要である.今回,最後まで排泄動作を自分で行いたい希望のある終末期肺癌患者に対して,短期間ではあるが環境調整や動作指導を主とした介入を行った.その結果,自己効力感の向上につながったので若干の考察を踏まえて報告する.
【症例紹介】
70歳代男性,妻と同居.X-1年4月,非小細胞肺癌の診断を受け,化学療法が開始される.X年8月,呼吸困難で入院した際にHOT導入となる.その後も入退院を繰り返し,化学療法および対症療法を継続.X年10月,病状進行による胸水増悪,呼吸困難で緊急入院.症状緩和のためドレナージ施行,ステロイドおよびオピオイドが処方される.今後の方針はBest supportive Careとなり,ホスピス療養前に自宅退院を希望,退院3日前にリハ処方され作業療法(OT)開始となった.尚,今回の発表に際して,対象者に口頭にて説明し同意を得た.
【OT経過】
OT介入初日,症例の全身状態としては,Performance Statusは3,Palliative Prognostic Indexは8点で予後は週単位であった.基本動作は自立.安静時はSpO2:98%(5.0L/min),HR:90-100bpm,呼吸困難感は修正ボルグスケール(mBS)で0.5であった.ADLは,FIMで86点(運動51,認知35)であり,入浴動作は全身清拭,排尿はバルーンカテーテール留置,排便はポータブルトイレを使用し,ベッドから移動する際は車椅子で介助されていた.移乗動作後はSpO2:90%,HR:110-120bpm,mBSは3であり,ベッド前を1~2m歩行すると呼吸困難のためそれ以上は動けない状態であった.リハ開始時,「気持ち的には家の中くらいはまだ動きたかね.特にトイレまではね.」と,ADLを低下させたくない気持ちが感じ取られた.精神心理面は,自己効力感はSelf-efficacy scale for Advanced cancer(SEAC)で,68.7点.不安および抑うつは,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)で,不安7点,抑うつ10点であった.OTでは,自宅内生活の動線を確認し,歩行時の息切れの軽減のために歩行補助具(歩行器)の導入,排泄,整容,更衣動作に対する動作指導(動作の細分化,休息のタイミング)を行った.OT介入最終日は,歩行器を使用し10~20mの歩行後でSpO2:94%(5.0L/min),HR:90-100bpm,mBS:0.5-1となった.HADSは,不安6点,抑うつ10点と不安は若干軽減し,SEACは77.3点と向上を認めた.退院時には,症例自身からも「寝たきりと思ったとけど光が見えてきたね.これならトイレもできるし,歩行器使えば散歩もできそう.」との発言も聞かれた.
【考察】
今回,予後週単位の終末期肺癌患者に対して,短期間ではあったが環境調整や動作指導を主とした介入を行った.その結果,退院後の生活に対する希望を少なからず見出すことができ,自己効力感の向上につながった.終末期においてADLの向上を認めにくい状態であっても,補助具等の環境調整によって少しでも対象者の希望が達成できることで,自己効力感の向上につながる可能性がある.
がん患者に対するリハビリテーションにおいて,終末期のADL低下が避けられない時期には,本人や家族の希望を尊重し可能な限りQOLを低下させないことが重要である.今回,最後まで排泄動作を自分で行いたい希望のある終末期肺癌患者に対して,短期間ではあるが環境調整や動作指導を主とした介入を行った.その結果,自己効力感の向上につながったので若干の考察を踏まえて報告する.
【症例紹介】
70歳代男性,妻と同居.X-1年4月,非小細胞肺癌の診断を受け,化学療法が開始される.X年8月,呼吸困難で入院した際にHOT導入となる.その後も入退院を繰り返し,化学療法および対症療法を継続.X年10月,病状進行による胸水増悪,呼吸困難で緊急入院.症状緩和のためドレナージ施行,ステロイドおよびオピオイドが処方される.今後の方針はBest supportive Careとなり,ホスピス療養前に自宅退院を希望,退院3日前にリハ処方され作業療法(OT)開始となった.尚,今回の発表に際して,対象者に口頭にて説明し同意を得た.
【OT経過】
OT介入初日,症例の全身状態としては,Performance Statusは3,Palliative Prognostic Indexは8点で予後は週単位であった.基本動作は自立.安静時はSpO2:98%(5.0L/min),HR:90-100bpm,呼吸困難感は修正ボルグスケール(mBS)で0.5であった.ADLは,FIMで86点(運動51,認知35)であり,入浴動作は全身清拭,排尿はバルーンカテーテール留置,排便はポータブルトイレを使用し,ベッドから移動する際は車椅子で介助されていた.移乗動作後はSpO2:90%,HR:110-120bpm,mBSは3であり,ベッド前を1~2m歩行すると呼吸困難のためそれ以上は動けない状態であった.リハ開始時,「気持ち的には家の中くらいはまだ動きたかね.特にトイレまではね.」と,ADLを低下させたくない気持ちが感じ取られた.精神心理面は,自己効力感はSelf-efficacy scale for Advanced cancer(SEAC)で,68.7点.不安および抑うつは,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)で,不安7点,抑うつ10点であった.OTでは,自宅内生活の動線を確認し,歩行時の息切れの軽減のために歩行補助具(歩行器)の導入,排泄,整容,更衣動作に対する動作指導(動作の細分化,休息のタイミング)を行った.OT介入最終日は,歩行器を使用し10~20mの歩行後でSpO2:94%(5.0L/min),HR:90-100bpm,mBS:0.5-1となった.HADSは,不安6点,抑うつ10点と不安は若干軽減し,SEACは77.3点と向上を認めた.退院時には,症例自身からも「寝たきりと思ったとけど光が見えてきたね.これならトイレもできるし,歩行器使えば散歩もできそう.」との発言も聞かれた.
【考察】
今回,予後週単位の終末期肺癌患者に対して,短期間ではあったが環境調整や動作指導を主とした介入を行った.その結果,退院後の生活に対する希望を少なからず見出すことができ,自己効力感の向上につながった.終末期においてADLの向上を認めにくい状態であっても,補助具等の環境調整によって少しでも対象者の希望が達成できることで,自己効力感の向上につながる可能性がある.