[PH-12-2] 統合失調症の認知機能に対する個別作業療法:ランダム化比較試験
目的:我々は,統合失調症患者の転帰を改善するために,個別作業療法(IOT)プログラムを開発した.以前のランダム化比較試験では,通常治療である集団作業療法(GOT)にIOTを追加すると,認知機能と内発的動機づけが改善することを示唆した.しかし,この試験は日本の限られた地域で実施されたため,結果の一般化には限界がある.そこで,IOTに関するより頑健な根拠を得るために,全国14施設での共同研究を実施した.本研究は日本作業療法士協会学術部主導型研究「統合失調症に対する個別作業療法に関する研究」の一環として実施された.
方法:統合失調症の新規入院患者をランダムにGOT+IOT群とGOTのみ群に割付けた.IOTは面接,セルフモニタリング,訪問指導,クラフト活動,個別心理教育,退院時プランのサブプログラムから構成され,作業療法士と1対1の時間を設けて実施し,全OT時間の半分以上をIOTの時間にあてた.GOTは各施設の通常プログラムを実施した.評価はベースラインとフォローアップ(退院時または入院3ヵ月後)に,認知機能(BACS),内発的動機づけ(QLSの目的意識,意欲,好奇心の3項目の合計),QOL(EQ-5D-5L),社会機能(LASMI),精神症状(PANSS),機能レベル(mGAF-F),治療満足度(CSQ-8)を測定した.また,ベースラインからフォローアップまでの認知機能の変化量に影響するIOTの要因を調査するために,IOTの各サブプログラムの回数,時間を調査した.本研究は日本作業療法士協会及び各研究施設の倫理委員会の承認を得た.
結果:ランダム化された68名は,GOT+IOT群34名(44.97[SD=9.17]歳,男性50.00%),GOTのみ群34名(43.47[SD=9.59]歳,男性52.94%)に割付けられ,GOTのみ群1名が脱落した.一般化線形混合モデルにおいて,GOT+IOT群では,GOTのみ群と比較して,ベースラインからフォローアップの間に,BACSの言語性記憶(F=5.47,p=0.021),ワーキングメモリ(F=17.55,p<0.001),言語流暢性(F=9.53,p=0.002),注意(F=18.21,p<0.001),遂行機能(F=10.70,p=0.001),総合得点(F=25.18,p<0.001),QLSの3項目の合計得点(F=30.92,p<0.001),EQ-5D-5LのIndex得点(F=6.19,p=0.014),LASMIの日常生活プロフィール得点(F=27.05,p<0.001),対人関係プロフィール得点(F=16.84,p<0.001),労働プロフィール得点(F=11.50,p<0.001),PANSSの陰性症状(F=60.06,p<0.001),合計得点(F=5.89,p=0.017),mGAF-F得点(F=12.15,p<0.001)の有意な改善がみられた.CSQ-8得点はGOT+IOT群が有意に高かった(t=5.85,p<0.001).多変量重回帰分析(強制投入法)において,BACS総合得点には,クラフト活動(β=0.502,95%CI=0.000-0.066,p=0.049)が有意に関連していた.
結論:本研究は,統合失調症の入院治療において,GOTにIOTを追加すると,GOTのみと比較して,認知機能及びその他のアウトカムが改善することを示す.また,IOTのサブプログラムであるクラフト活動が,認知機能の改善に有益であることが示唆された.今後は,退院後の追跡調査により,入院中のOTによる認知機能の改善の持続及び再入院への影響を検証する予定である.
方法:統合失調症の新規入院患者をランダムにGOT+IOT群とGOTのみ群に割付けた.IOTは面接,セルフモニタリング,訪問指導,クラフト活動,個別心理教育,退院時プランのサブプログラムから構成され,作業療法士と1対1の時間を設けて実施し,全OT時間の半分以上をIOTの時間にあてた.GOTは各施設の通常プログラムを実施した.評価はベースラインとフォローアップ(退院時または入院3ヵ月後)に,認知機能(BACS),内発的動機づけ(QLSの目的意識,意欲,好奇心の3項目の合計),QOL(EQ-5D-5L),社会機能(LASMI),精神症状(PANSS),機能レベル(mGAF-F),治療満足度(CSQ-8)を測定した.また,ベースラインからフォローアップまでの認知機能の変化量に影響するIOTの要因を調査するために,IOTの各サブプログラムの回数,時間を調査した.本研究は日本作業療法士協会及び各研究施設の倫理委員会の承認を得た.
結果:ランダム化された68名は,GOT+IOT群34名(44.97[SD=9.17]歳,男性50.00%),GOTのみ群34名(43.47[SD=9.59]歳,男性52.94%)に割付けられ,GOTのみ群1名が脱落した.一般化線形混合モデルにおいて,GOT+IOT群では,GOTのみ群と比較して,ベースラインからフォローアップの間に,BACSの言語性記憶(F=5.47,p=0.021),ワーキングメモリ(F=17.55,p<0.001),言語流暢性(F=9.53,p=0.002),注意(F=18.21,p<0.001),遂行機能(F=10.70,p=0.001),総合得点(F=25.18,p<0.001),QLSの3項目の合計得点(F=30.92,p<0.001),EQ-5D-5LのIndex得点(F=6.19,p=0.014),LASMIの日常生活プロフィール得点(F=27.05,p<0.001),対人関係プロフィール得点(F=16.84,p<0.001),労働プロフィール得点(F=11.50,p<0.001),PANSSの陰性症状(F=60.06,p<0.001),合計得点(F=5.89,p=0.017),mGAF-F得点(F=12.15,p<0.001)の有意な改善がみられた.CSQ-8得点はGOT+IOT群が有意に高かった(t=5.85,p<0.001).多変量重回帰分析(強制投入法)において,BACS総合得点には,クラフト活動(β=0.502,95%CI=0.000-0.066,p=0.049)が有意に関連していた.
結論:本研究は,統合失調症の入院治療において,GOTにIOTを追加すると,GOTのみと比較して,認知機能及びその他のアウトカムが改善することを示す.また,IOTのサブプログラムであるクラフト活動が,認知機能の改善に有益であることが示唆された.今後は,退院後の追跡調査により,入院中のOTによる認知機能の改善の持続及び再入院への影響を検証する予定である.