[PH-3-3] リワークの認知行動療法利用から自己再発予防対策によって復職・就労継続を可能にしたうつ症例の検討
【はじめに】精神疾患による休職者が増加し復職後も不適応で休職を繰り返しやすい.その中で,リワーク(以下RW)プログラム利用者の就労安定性は有意に良好と秋山が報告している.今回,4回目の休職で当院RWを利用し,自己再発予防対策の検討が復職・就労継続を可能にした症例(以下A氏)を担当した.業務のストレスから不安を抱え,周囲に相談できず不調となり休職を繰り返すA氏が,RWの集団認知行動療法(以下GCBT)利用での内省から自己再発予防対策検討・行動に至った経緯,復職後の就労継続の経過を考察,報告する.なお,本研究報告は,研究倫理に配慮し,またA氏より同意を得ている.
【症例・経過】A氏,男性,30代後半,診断名はうつ病,発達障害疑い,妻と同居,最終学歴は大学院卒業,電機メーカー勤務.20代後半,職場で大きな仕事を任された負担から頭痛,微熱,意欲低下,不安,不眠が出現し受診開始.うつ病と診断され休職.復職後1~2年で再び業務負担増により不安が増大.体調悪化し休職を繰り返した.4回目の休職時,職場から早期退職を勧奨され治療に専念を約束し断る.会社から復職条件として月20日の勤務が課され,当院RW週5日利用となった.A氏は頭痛や倦怠感でRWの欠席が多く,出席率は55%だった.休職時と同じ状況がRWでも見られ,面談時にA氏は「疲れ」と答え,内省に繋がらなかった.
面談を重ね,A氏と話し合い自己理解を深めるため,GCBTに繋げていった.
GCBTで他利用者と共にA氏の話を共感的に受け止めた場面で,A氏は「復職に不安がある」「職場やRWで期待に応えられないプレッシャーがある」と徐々に内界を表現した.これ以降A氏は他者に心的内界を表現し受容してもらえると,積極的行動に繋がっていった.RWのGCBTでの行動を具体的に職場に繋げていくことをA氏と共有し,A氏の内界の不安を他者に相談できれば就労継続可能性が高まることが予測された.よってA氏の気持ちを受容して関わり,改善している点を肯定的にフィーバックする.復職時の自己再発予防対策として休職原因,前兆サイン,ストレス対処等をまとめ,OTRと共有し自己覚知を深めた.その上で「周囲に自己内界の不安を相談する」ことを中心に復職準備期,復職時に実施することに繋げていった.
【結果】GCBT終了後,ベック質問紙は開始時6点から終了時1点となる.それに伴い出席率も約90%となった.OTRは出席率の改善や内省等を受容的・肯定的フィードバックを継続的に行った.A氏も復職の不安を自らOTRに相談できるようになり,さらにその不安な気持ちを復職面談時に話す練習を行い,自己再発予防対策は「周囲に相談する」ことを記載して復職に備えた.
復職面談でA氏は復職の不安を上司に相談でき,上司も受け止め,安心感を得た.
復職後,徐々に業務過多により頭痛や倦怠感を起したが,産業医に不安を相談でき業務調整し体調は改善した.その後も業務負担から不調や欠勤になるが産業医や上司と相談し就労継続できた.欠勤が続いた際,職場から業務向上プログラムを提示された.課題業務を上司と相談して行うこのプログラムはA氏とって業務し易くなり体調改善した.RW フォローアップ参加時A氏は「不安な気持ちを話すことで負担が減った」と報告された.現在も職場で相談でき復職し3年が経過した.
【考察】業務負担から20代後半にうつ病となり,休職を4回繰り返すA氏は,不安が強くなり,周囲に話せず不調になった.RWのGCBT利用で,A氏は「受容-自己覚知-心的内界の表出-受容」に至った.それを自己再発予防対策にまとめ,復職時に「表出-受容-表出」行動に繋げ,安心し,就労継続を可能にしたと考えられる.
【症例・経過】A氏,男性,30代後半,診断名はうつ病,発達障害疑い,妻と同居,最終学歴は大学院卒業,電機メーカー勤務.20代後半,職場で大きな仕事を任された負担から頭痛,微熱,意欲低下,不安,不眠が出現し受診開始.うつ病と診断され休職.復職後1~2年で再び業務負担増により不安が増大.体調悪化し休職を繰り返した.4回目の休職時,職場から早期退職を勧奨され治療に専念を約束し断る.会社から復職条件として月20日の勤務が課され,当院RW週5日利用となった.A氏は頭痛や倦怠感でRWの欠席が多く,出席率は55%だった.休職時と同じ状況がRWでも見られ,面談時にA氏は「疲れ」と答え,内省に繋がらなかった.
面談を重ね,A氏と話し合い自己理解を深めるため,GCBTに繋げていった.
GCBTで他利用者と共にA氏の話を共感的に受け止めた場面で,A氏は「復職に不安がある」「職場やRWで期待に応えられないプレッシャーがある」と徐々に内界を表現した.これ以降A氏は他者に心的内界を表現し受容してもらえると,積極的行動に繋がっていった.RWのGCBTでの行動を具体的に職場に繋げていくことをA氏と共有し,A氏の内界の不安を他者に相談できれば就労継続可能性が高まることが予測された.よってA氏の気持ちを受容して関わり,改善している点を肯定的にフィーバックする.復職時の自己再発予防対策として休職原因,前兆サイン,ストレス対処等をまとめ,OTRと共有し自己覚知を深めた.その上で「周囲に自己内界の不安を相談する」ことを中心に復職準備期,復職時に実施することに繋げていった.
【結果】GCBT終了後,ベック質問紙は開始時6点から終了時1点となる.それに伴い出席率も約90%となった.OTRは出席率の改善や内省等を受容的・肯定的フィードバックを継続的に行った.A氏も復職の不安を自らOTRに相談できるようになり,さらにその不安な気持ちを復職面談時に話す練習を行い,自己再発予防対策は「周囲に相談する」ことを記載して復職に備えた.
復職面談でA氏は復職の不安を上司に相談でき,上司も受け止め,安心感を得た.
復職後,徐々に業務過多により頭痛や倦怠感を起したが,産業医に不安を相談でき業務調整し体調は改善した.その後も業務負担から不調や欠勤になるが産業医や上司と相談し就労継続できた.欠勤が続いた際,職場から業務向上プログラムを提示された.課題業務を上司と相談して行うこのプログラムはA氏とって業務し易くなり体調改善した.RW フォローアップ参加時A氏は「不安な気持ちを話すことで負担が減った」と報告された.現在も職場で相談でき復職し3年が経過した.
【考察】業務負担から20代後半にうつ病となり,休職を4回繰り返すA氏は,不安が強くなり,周囲に話せず不調になった.RWのGCBT利用で,A氏は「受容-自己覚知-心的内界の表出-受容」に至った.それを自己再発予防対策にまとめ,復職時に「表出-受容-表出」行動に繋げ,安心し,就労継続を可能にしたと考えられる.