第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-5] ポスター:精神障害 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PH-5-8] 精神科デイケアにおける誕生会および表彰式プログラムに関する一考察

朝倉 起己, 長嶺 匠, 濵嶋 和馬, 伏原 美恵子, 須藤 明日香 (共和病院地域ケア課)

1.はじめに
 当院精神科デイケアでは2021年11月より誕生会&表彰式(以下;誕生会)を行っている.誕生会は月に1回実施し,当日参加した精神科デイケア利用者(以下;利用者)全員でケーキ等を飲食し,レクリエーションを行い,誕生月の人には祝福とお祝いカードを贈呈する催しである.誕生会の取り組みを通して,承認・肯定される機会となり,他利用者への気遣いが深まり,利用者のリカバリーに繋がったため報告する.なお,本報告は筆者の所属機関の倫理委員会の承認を得ている.
2.対象と方法
 対象者は当院精神科デイケアの利用者で,任意のアンケートに回答した者とした.アンケートは誕生会導入前(1回目;2021年11月)と導入1年後(2回目;2022年12月)の2回行い,1回目は59名,2回目は47名の回答があり,その両方に回答した25名を本調査の対象とした.アンケートは2種行い,1種目は標準化された患者満足度尺度である日本語版Client Satisfaction Questionnaire 8項目(CSQ-8J;立森ら,1999)を誕生会導入前と導入1年後に実施し,それぞれの項目の得点,および総得点の検定を行った.統計解析には統計ソフトStatcel2を用い,対応のあるt検定で有意水準は5%未満とした.2種目は独自の自記式のもので①誕生会で嬉しかったこと,②誕生会で良かったこと,③誕生会の感想の計3項目について回答するもので,導入1年後のみ実施した.
3.結果
 対象者25名の疾患割合は統合失調症20名,気分障害4名,神経症障害1名であった.平均年齢は58.4(±12.6)才,機能の全体的評定尺度(GAF)は51.8(±12.5)であった.
 CSQ-8Jの総得点の平均は誕生会導入前22.8,導入1年後24.4であり,2群間に有意な差を認めた(p値<0.03).またCSQ-8J下位尺度「もし知人が同じ援助を必要としていたらこの治療ケアプログラムを推薦しますか」の項目において有意な差(p値<0.02)を認め,さらに「また援助が必要になったときこの治療ケアのプログラムに戻りたいと思いますか」の項目において有意な差(p値<0.007)を認めた.
 自記式アンケートの①嬉しかった項目では,ケーキ飲食やお祝いカード贈呈,レクリエーション(ビンゴゲーム)や写真撮影が好評であった.②良かったことの項目としては,相手のことを想って贈るメッセージを考えることやお祝いカードのメッセージを見る(受け入れる)こと,気をかけてもらうこと等が挙がった.③感想としては,日常生活にポッと明かりが灯ったよう,嬉しいという一言が言えるのが嬉しい等の意見が挙がった.
 また,誕生会実施日は,その該当月の平均利用者数よりも1割程度の利用者増となった.
4.考察
 誕生会で贈呈されるお祝いカードには,受け手の立場としては他者から自身への誉め言葉が記載されており肯定的な評価を得ることで自信の回復や満足に繋がったと考える.また送り手の立場としては,褒める声かけを考えること自体が相手を想いやる行為となり円滑な対人関係の維持となり,これが「知人への推薦」や「援助が必要になった時にまた戻りたい」といった満足度向上に反映していたと考えられる.関根(2011)は肯定的な心情に対する支援として自己表現・他者評価の場の提供が必要と指摘しており,まさに誕生会は自身の喜びを表現でき,他者から祝福・賞賛(評価)される機会になっていた.この承認・肯定される機会が利用者数が増える要因になっていると考える.
 今後も誕生会の取り組みを通じて他者の役に立ち,共に喜び合い,必要性を感じ合え,満足度が高まるといった当事者のリカバリー支援を続けていきたい.