[PH-9-6] コロナ禍における児童思春期の摂食障害に対する精神科作業療法の実態
【目的】新型コロナウイルス感染症(以下, コロナ)流行後, K大学附属病院精神科神経科(以下, 当院) でも児童思春期の摂食障害患者の増加は顕著で, 入院患者も多く受け入れている. 当院では多職種連携体制をとり, 作業療法士(以下, OTR)も行動療法において重要な役割を担っている. 行動療法では, 病室内安静から退院目標体重まで細かく行動範囲が設定され, 作業療法(以下, OT)も, 個別OTから集団OT, 身体OTへと段階的に進展する. コロナ対策の影響で, OTは治療環境の柔軟な変更を余儀なくされ, それに合わせて治療構造の体系化を行った. 本報告では, 2年経過する中でこれまで実践してきた支援内容の詳細と, 患者経過について後方視的に明らかにすることで, OTRの関わりの意義について検討する.
【方法】
(対象) 2020年7月から2023年1月に当院に入院した児童思春期摂食障害患者は11名(全員女性)で, 平均年齢15.2±2.1歳であった. 診断名は, 神経やせ症10名, 回避・制限性食物摂取症1名であり, 内2名が入院前, 2名が退院後に, それぞれ自閉症スペクトラム症の診断を受けている. そのうち同意の取れた5名を, 本報告の対象者とした.
(調査手順) 診療録より後方視的に, 各職種の経過記録・カンファレンス議事録などを参照した.
本研究は・本学の審査を受け, 研究機関の長の許可を受けて実施した. 研究対象者へは,文章と口頭で説明し,同意書にて承諾を得ている(R2819). 開示すべき利益相反(COI)はない.
【結果】
(個別OT):平均入院14日目より平均BMI 12で開始, 平均利用期間7日であった. 床上安静から病棟内自由となり身体症状回復の時期であった. 余暇時間を目的にOTRと個別環境下の創作活動など簡単な活動を取り入れていた. 治療介入としては, 姿勢や歩行などの身体状態・コミュニケーション応答や仕草・意思表示方法(バーバル・ノンバーバル)などの評価を主に行っていた.
(集団OT・前半):平均入院21日目より平均BMI 12で開始, 平均利用期間34日であった.集団生活に慣れていく時期であり, ホームシックになりやすく, スマートフォンの使用制限等でうまく時間が使えず, 近視眼的思考が働きやすく, 早期退院を目指して治療に積極的で逸脱行為が少ない時期であった. 簡単な言語セッションや脳トレなどの集団療法や集団場面での創作活動などを行っていた. 治療介入としては, 集団における主体性の発揮を促すようにし, 集団場面でのコミュニケーションスキル(受動性から能動性)・家族以外との対人スキル・認知機能改善に着目していた.
(集団OT・後半+身体OT):平均入院55日目より平均BMI 14で開始, 平均利用期間26日であった. 認知機能改善に伴い, 体重増加・家族葛藤・復学などへの不安が急に現実的となり, コントロール欲求が高まることで強迫的になり過活動も目立つ時期であった. 全プログラム参加可能となり, 治療介入としては, 不安の言語化・Helpサインの表出と交渉技術・集団での振る舞いなどに着目, 問題解決能力向上に繋げていた.
【考察】本報告では, 当院で導入している児童思春期の摂食障害に対するOTの治療構造と, 患者の治療経過について紹介した. 児童思春期患者では不登校のケースも多く, 退院後, 復学が大きなテーマとなる. OTの集団場面を現実のシミュレーションとして活用することで, 退院後に実際の社会場面で必要とされる能力への治療介入が可能であると考えられる. また, 多職種との連携, 特に臨床心理士との協働的な治療体制は, 患者本人の認知面と行動面の両者へのアプローチを具体的かつ同時的に行うことができ, より高度な社会スキルの獲得を可能にすると考えられる.
【方法】
(対象) 2020年7月から2023年1月に当院に入院した児童思春期摂食障害患者は11名(全員女性)で, 平均年齢15.2±2.1歳であった. 診断名は, 神経やせ症10名, 回避・制限性食物摂取症1名であり, 内2名が入院前, 2名が退院後に, それぞれ自閉症スペクトラム症の診断を受けている. そのうち同意の取れた5名を, 本報告の対象者とした.
(調査手順) 診療録より後方視的に, 各職種の経過記録・カンファレンス議事録などを参照した.
本研究は・本学の審査を受け, 研究機関の長の許可を受けて実施した. 研究対象者へは,文章と口頭で説明し,同意書にて承諾を得ている(R2819). 開示すべき利益相反(COI)はない.
【結果】
(個別OT):平均入院14日目より平均BMI 12で開始, 平均利用期間7日であった. 床上安静から病棟内自由となり身体症状回復の時期であった. 余暇時間を目的にOTRと個別環境下の創作活動など簡単な活動を取り入れていた. 治療介入としては, 姿勢や歩行などの身体状態・コミュニケーション応答や仕草・意思表示方法(バーバル・ノンバーバル)などの評価を主に行っていた.
(集団OT・前半):平均入院21日目より平均BMI 12で開始, 平均利用期間34日であった.集団生活に慣れていく時期であり, ホームシックになりやすく, スマートフォンの使用制限等でうまく時間が使えず, 近視眼的思考が働きやすく, 早期退院を目指して治療に積極的で逸脱行為が少ない時期であった. 簡単な言語セッションや脳トレなどの集団療法や集団場面での創作活動などを行っていた. 治療介入としては, 集団における主体性の発揮を促すようにし, 集団場面でのコミュニケーションスキル(受動性から能動性)・家族以外との対人スキル・認知機能改善に着目していた.
(集団OT・後半+身体OT):平均入院55日目より平均BMI 14で開始, 平均利用期間26日であった. 認知機能改善に伴い, 体重増加・家族葛藤・復学などへの不安が急に現実的となり, コントロール欲求が高まることで強迫的になり過活動も目立つ時期であった. 全プログラム参加可能となり, 治療介入としては, 不安の言語化・Helpサインの表出と交渉技術・集団での振る舞いなどに着目, 問題解決能力向上に繋げていた.
【考察】本報告では, 当院で導入している児童思春期の摂食障害に対するOTの治療構造と, 患者の治療経過について紹介した. 児童思春期患者では不登校のケースも多く, 退院後, 復学が大きなテーマとなる. OTの集団場面を現実のシミュレーションとして活用することで, 退院後に実際の社会場面で必要とされる能力への治療介入が可能であると考えられる. また, 多職種との連携, 特に臨床心理士との協働的な治療体制は, 患者本人の認知面と行動面の両者へのアプローチを具体的かつ同時的に行うことができ, より高度な社会スキルの獲得を可能にすると考えられる.