[PH-9-8] 精神科訪問看護における作業療法士による就労支援の可能性
【はじめに】
厚生労働省が掲げる地域生活支援において,精神科訪問看護がその役割を果たすことが期待されている.しかしながら,精神科訪問看護における作業療法士の介入に関する報告は,現段階では未だ十分になされておらず,作業療法介入の可能性に関して検討する余地が残されている.
【目的】
本報では,精神科に特化した訪問看護ステーションにおける30代の注意欠如・多動症 (ADHD)の訪問事例を通して,精神科訪問看護における作業療法介入が自宅生活及び社会参加の支援に向けてどのように機能するのか,その可能性を検討する.
【方法】
事例は,30代男性A氏.大学卒業後,独居生活で流通業に従事していたが,X-3年前に退職してから引きこもりがちとなり,通院加療しADHDと診断.主治医より,部屋の片づけをはじめとした日常生活能力低下の改善に向けて週3回の精神科訪問看護の指示を受け,X年4月より介入を開始した.A氏より,①体調面の相談,②住環境整備のニーズが聞かれた為,看護師と連携し,週に1回の看護師による服薬管理及び栄養面の助言と,週2回の作業療法士による住環境整備の助言・介入を行った.担当作業療法士は,介入の過程でA氏の作業遂行能力を評価する為に,住環境整備の進行状況に合わせてAMPS (Assessment of Motor and Process Skills)による評価を行った.
【倫理的配慮】
本報は株式会社東京リハビリテーションサービス研究倫理委員会に承認された(承認番号2050).また,ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則「ヘルシンキ宣言」「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」「臨床研究に関する倫理指針」を順守し,A氏に文書及び口頭で十分な説明を行い,研究協力依頼書による同意を得た.
【結果】
介入当初,自宅内に生活ごみが散乱しており,その上を歩かなければ室内の移動が出来ない環境であった.更に,部屋にはゴキブリが散見され衛生面の問題も著明であった.そこで,まずはA氏の自宅環境改善のニーズに基づき,訪問の度に掃除する場所の相談や助言を行い,A氏が自宅内の掃除を行う支援をした.訪問を重ねることで生活ごみは減少し,自宅内の動線の確保が出来た時期にAMPS評価を行った.結果は運動技能1.7ロジット,プロセス技能1.1ロジットとなり,地域生活の自立が予想されるスコアとなった.
上記の経過を主治医及びA氏と共有し,X+1年4月に就労移行を目標にすることとなり,今後も住環境を整えつつ生活リズムの安定及び体力の向上を行う運びとなった.
【考察】
本報では,A氏のニーズである掃除を主として介入を行った.そして,その過程で作業遂行能力を評価して地域生活の自立が予想されるスコアを確認し,その結果を主治医・A氏と共有した上で就労という目標を設定することに成功した.
このことから,精神科訪問看護において作業療法士が介入することで,対象者の作業遂行能力の定量化を通して地域生活の技能を見える化し,更にその先の就労支援をはじめとする社会参加へとアプローチできる可能性が示唆された.
本報に関して,開示すべき利益相反関連事項は無い.なお,本事例は,訪問リハビリテーション第12巻・第5号(2022年)にて介入初期から中期までを部分的に発表された.
厚生労働省が掲げる地域生活支援において,精神科訪問看護がその役割を果たすことが期待されている.しかしながら,精神科訪問看護における作業療法士の介入に関する報告は,現段階では未だ十分になされておらず,作業療法介入の可能性に関して検討する余地が残されている.
【目的】
本報では,精神科に特化した訪問看護ステーションにおける30代の注意欠如・多動症 (ADHD)の訪問事例を通して,精神科訪問看護における作業療法介入が自宅生活及び社会参加の支援に向けてどのように機能するのか,その可能性を検討する.
【方法】
事例は,30代男性A氏.大学卒業後,独居生活で流通業に従事していたが,X-3年前に退職してから引きこもりがちとなり,通院加療しADHDと診断.主治医より,部屋の片づけをはじめとした日常生活能力低下の改善に向けて週3回の精神科訪問看護の指示を受け,X年4月より介入を開始した.A氏より,①体調面の相談,②住環境整備のニーズが聞かれた為,看護師と連携し,週に1回の看護師による服薬管理及び栄養面の助言と,週2回の作業療法士による住環境整備の助言・介入を行った.担当作業療法士は,介入の過程でA氏の作業遂行能力を評価する為に,住環境整備の進行状況に合わせてAMPS (Assessment of Motor and Process Skills)による評価を行った.
【倫理的配慮】
本報は株式会社東京リハビリテーションサービス研究倫理委員会に承認された(承認番号2050).また,ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則「ヘルシンキ宣言」「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」「臨床研究に関する倫理指針」を順守し,A氏に文書及び口頭で十分な説明を行い,研究協力依頼書による同意を得た.
【結果】
介入当初,自宅内に生活ごみが散乱しており,その上を歩かなければ室内の移動が出来ない環境であった.更に,部屋にはゴキブリが散見され衛生面の問題も著明であった.そこで,まずはA氏の自宅環境改善のニーズに基づき,訪問の度に掃除する場所の相談や助言を行い,A氏が自宅内の掃除を行う支援をした.訪問を重ねることで生活ごみは減少し,自宅内の動線の確保が出来た時期にAMPS評価を行った.結果は運動技能1.7ロジット,プロセス技能1.1ロジットとなり,地域生活の自立が予想されるスコアとなった.
上記の経過を主治医及びA氏と共有し,X+1年4月に就労移行を目標にすることとなり,今後も住環境を整えつつ生活リズムの安定及び体力の向上を行う運びとなった.
【考察】
本報では,A氏のニーズである掃除を主として介入を行った.そして,その過程で作業遂行能力を評価して地域生活の自立が予想されるスコアを確認し,その結果を主治医・A氏と共有した上で就労という目標を設定することに成功した.
このことから,精神科訪問看護において作業療法士が介入することで,対象者の作業遂行能力の定量化を通して地域生活の技能を見える化し,更にその先の就労支援をはじめとする社会参加へとアプローチできる可能性が示唆された.
本報に関して,開示すべき利益相反関連事項は無い.なお,本事例は,訪問リハビリテーション第12巻・第5号(2022年)にて介入初期から中期までを部分的に発表された.