第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-6] ポスター:発達障害 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-6-5] 重症心身障害児の自立活動に対する作業療法士の専門性を学校教諭と共有するための方略

濱田 匠1, 笹田 哲2 (1.鈴鹿医療科学大学保健衛生学部, 2.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】重症心身障害児(以下,重症児)の自立活動では,学校教諭と医療機関に所属する作業療法士(以下,OT)との協働の必要性が示されている(文部科学省,2019).また,OTと学校教諭との協働は,障害児の個別支援から,学校を対象としたコンサルテーションに移行し(Wenonahら,2012),OTは学校の文化・制度的側面に相応するコンサルテーションを行うことが課題である(Sarahら,2012).ここで,重症児の自立活動に対する医療機関に所属するOTによるコンサルテーションの専門性について,OTと学校教諭で認識の相違が生じていると,コンサルテーションが不活性な状況になる.本研究の目的は,重症児の自立活動に対する医療機関に所属するOTによるコンサルテーションの専門性について,特別支援教育の観点である自立活動6区分を視座に,OTと学校教諭における認識の特徴を検証したうえで,学校教諭との認識の相違に留意した協働のプロセスを検討することである.
【方法】混合研究法の説明的順次デザイン(研究1は量的研究,研究2は質的研究)を採用した.なお,本研究はX大学研究倫理審査委員会の3の承認(承認番号:X大第7-20-68,69,70)を得て実施した.
【研究1】①方法:全国の旧肢体不自由児施設に所属し,重症児の自立活動に対するコンサルテーションの経験の可能性がある362名のOTと,重症児が在籍している可能性がある全国の347の肢体不自由や病弱の特別支援学校に所属する学校教諭(各校の代表者1名)を対象に,質問紙調査を実施した.医療機関に所属するOTによるコンサルテーションの専門性について,自立活動6区分で同一の質問項目を設定し,OTと学校教諭における認識の特徴を検証した.調査は2021年5月28日に開始し,回答期限を2021年8月31日とし,無記名回答とした.分析方法は職種別に記述集計を行い,χ2検定から差異を検討した(有意水準は5%未満).②結果と考察:分析対象は,OTは62名で,作業療法の経験年数は平均16.7年(標準偏差±10.4),所属施設の勤務年数は平均12.1年(標準偏差±9.3)であった.学校教諭は54名で,学校教諭歴は平均19.2年(標準偏差±9.1),所属校の学部構成は「小学部・中学部・高等部」が大部分を占めていた.OTと学校教諭で,自立活動6区分の「身体の動き」は統計的な差異は認められず,他の5区分は統計的な差異が認められ,OTは専門性の認識ありが多く,学校教諭は専門性の認識なしが多かった.「身体の動き」で共通認識が,「自立活動6区分を包括する支援」で認識の相違が認められた.
【研究2】①方法:研究1の検証結果をもとに質問項目を設定し,全国の9名の熟練OTを対象に,半構造化インタビューから,学校教諭との認識の相違に留意した協働のプロセスを検討した.インタビューは,2021年11月~2022年1月の期間にZOOMを使用し,個別で実施した.インタビューから得られた逐語録の質的データはSCATを用いて分析した.各熟練OTについて,テーマ・構成概念やストーリーライン,理論記述を生成し,すべてのデータから統合と解釈を行った.②結果と考察:OTと学校教諭で認識の相違が生じている要因は,3個のテーマと7個のカテゴリー,27個のサブカテゴリーに分類され,職種間の専門性における共通点に対する理解不足と,OTの専門性の認識に関する課題点の存在であると考えられた.また,学校教諭との認識の相違に留意した協働のプロセスは,2個のテーマと5個のカテゴリー,26個のサブカテゴリーに分類され,学校の文化や制度の視点を考慮した内容が示され,学校教諭との認識の共有につながる方略であると考えられた.