第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-9] ポスター:発達障害 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-9-4] 親子通園で親と一緒に作る子育てプランの取り組み

中原 あすか, 大城 千秋, 仲間 知穂 (こどもセンターゆいまわる)

【はじめに】
障がいの特定されていない乳幼児や福祉サービスの対象となりにくい子どもへも柔軟な対応をするため,各市町村などでは親子通園施設を設置している1).こどもセンターゆいまわる(以下,当事業所)では,令和3年度より沖縄県南風原町からの事業委託を受けて親子通園を行っている.そこで,保護者の作業に焦点を当てて一緒に子育てプランを立案し,その目標の実現を目的に関わったことで保護者のエンパワメントに繋がったので報告する.なお発表に際し事前に説明し同意を得た.
【方法】
<親子通園(ゆうなえん)>
対象は町の面談にて通園が決定した親子.頻度は週1回午前中で期間は4〜6ヶ月,定員は4組.スタッフは保育士と作業療法士(以下OT)各1名.
<流れ>
□オリエンテーション:指導型ではなく子どもと家族が自由に生活を選択し,叶えることを支えるコンセプトの共有を重視
□子育てプラン立案:保護者の作業に焦点を当てたプランを保護者と一緒に立案
□活動:子ども同士の関わりや習慣活動の定着,保護者が子どもの育つ力を発見し引き出せることを実感できることを目的に遊び等を設定
□お話会:子どもの理解を深める,子育てプランを叶えるための選択肢を広げることを目的に,世間話,地域の情報共有,子育てプランのワークショップ,感覚や言葉の勉強会
□その他:保護者が自身の健康にも着目できるためのヨガや体軸体操
【結果】
集団に馴染めない子どもに対して,保護者は周囲へ謝りながら参加し,強制的に集団へ促す姿が見られていたが,次第に子どもの様子を見守り,子どもが自ら集団活動へ興味を向けるような関わりが増えた.「言葉が出てくると同時に手遊び歌でも遊ぶようになった.今ここが成長している時期なんだと思う」と子どもの成長に見通しを持った言動も増え,「来年度の入園までに,運動教室に通わせようかな」「成長するんだったら福祉サービスを使おうかな」と卒園後のプランを具体的に決めていく保護者もいた.また保護者同士がお互いの子どもの成長を語り合い,地域の情報を交換し合っていた.このように保護者が子どもを理解し,子育ての目標を意識することで子育てを選択し,その実現に向けて保護者自身が力を持ち行動することができた.プランに対する遂行度と満足度も上がった.
【考察】
今回上記のように,保護者の作業に焦点を当てた子育てプランを作成し,その目標の実現を目的にOTと保育士が関わったことで,保護者自身のエンパワメントにつなげることができた.これは,人の行動は望まれる結果(目標)と能力に基づいて選択されるため2)保護者自身が目標を立案したことで,行動の変化が見られたと考えられる.子育てが保育園から小中学校へと参加していく社会が変わっていくなか,さまざまな局面で支援が必要となることがあるが,その際に保護者が選択し叶えられる力を持てることが重要となってくるため,今回のような保護者のエンパワメントを意識した関わりは重要と考えられる.
【参考文献】
1)大鐘啓伸:母子通園施設を利用した母親の心理状態,2011
2)チャールズ・A•ラップ,リチャード・J・ゴスチャ:ストレングスモデル第2版,金剛出版,2008