第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-10] ポスター:高齢期 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-10-5] 高齢者の自宅の安全評価に活用したICTの使用感

林 咲子1, 長谷川 文2, 玉木 聡1, 木全 千佳1, 松岡 友絵1 (1.社会医療法人愛生会総合上飯田第一病院リハビリテーション科, 2.名古屋女子大学医療科学部作業療法学科)

【はじめに】近年,健康・医療・介護分野におけるICT(情報通信技術)活用が推進されている.在宅高齢者の転倒予防のためには運動や教育に加え,自宅の評価と整備が有効であることが報告されている.また,運動はオンライン運動プログラムの効果が報告されている.今回,自宅の評価と整備という環境的側面においてもICT活用の可能性を探索するために,遠隔から高齢者の自宅を2種類のカメラを使用して評価した.本報告の目的は,専門職が高齢者の自宅の安全評価をする際に,ウェラブルカメラを使用した場合と,スマートフォンのカメラを使用した場合における使用感について検討することである.
【方法】病院勤務の作業療法士(OT)5名が,高齢者の自宅を評価した.高齢者は自宅内を動き,家族がその様子を2種類のカメラを使用して各々動画撮影した.2種類のカメラは,頭部装着タイプのウェラブルカメラと,スマートフォンのカメラであった.各々の動画の共有方法は,家族のスマートフォンでWeb会議システムZoomを活用し,両カメラで撮影した動画を,遠隔から評価しているOTと共有した.通信環境は,高齢者宅はモバイルデータ通信,OT宅はWi-Fiであった.評価後,OTは2種類のカメラの使用感についてアンケートに回答した.アンケート内容は,ウェラブルカメラとスマートフォンカメラの7つの機能を比較したものであった.7つの機能は,①画質,②手振れ,③水平維持,④広角,⑤人と物の距離,⑥音質,⑦接続のための手続きであった.回答方法は,情報収集のために役立ったと感じる機能であれば該当カメラにチェックし,特にその機能が優れていなくても情報収集できたなら「特に差なし」にチェックする方法とした.また,家族も動画撮影した感想について5件法アンケート(1:まったくそう思わない~5:とてもそう思う)に回答した.なお,倫理的事項を遵守し,OT5名と家族に対して本報告の趣旨を説明し同意を得た.また,COIはない.
【結果】7つの機能において,OT5名中3名以上が選択したカメラあるいは「特に差なし」は以下の通りである.①画質は「特に差なし」,②手振れは該当なし,③水平維持は「特に差なし」,④広角は「ウェラブルカメラ」,⑤人と物の距離は「特に差なし」,⑥音質は「特に差なし」,⑦接続のための手続きは「スマートフォンカメラ」であった.また,家族が回答したアンケート結果は,例えば,撮影の負担感は「4:ややそう思う」,遠隔からの評価への抵抗感は「4:ややそう思う」,今後も撮影しようと思うには「3:どちらともいえない」であった.接続のための手続きの手間やICT使用の不慣れ感についても感想を述べ,手軽に実施可能になることへの期待感も述べた.また,2種類のカメラを使用した感想として,スマートフォンカメラの方が,使いやすく,接続しやすく,今後使用する可能性が高いと回答した.
【考察】本結果から,2種類のカメラ機能による情報収集への影響は少ないことが考えられる.また,評価者側の不慣れ感や手続きの不手際によって,家族に負担感を与えた可能性がある.今後,遠隔から評価する際の手続き方法について整理し,事前に練習する等の準備方法についても検討していく必要がある.