第57回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-2] ポスター:高齢期 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PJ-2-3] 介護老人保健施設に入所する認知症高齢者のQOL評価法に関するスコーピングレビュー

佐野 龍彦1, 上村 純一2 (1.名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻リハビリテーション療法学コース作業療法分野, 2.名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻 予防・リハビリテーション科学講座 作業療法科学)

はじめに 日本の認知症者は,2025年には700万人(5名に一人(有病率20%))になると推定されている.認知症は進行性の疾患であるため,介護老人保健施設での認知症ケアにおいてはQOLの維持・向上が重要視される.認知症者のQOLの主観的評価は,病態の進行により徐々に難しくなるため,他者評価を含めた様々なQOL評価法が開発されている.認知症者のQOLを評価する必要がある一方で,どの評価法を選択すべきか臨床でしばしば判断に迷う.そこで,本研究では 1.介護老人保健施設において認知症高齢者を対象とした介入研究で用いられることが多いQOL評価法を明らかにすること,2.使用頻度が高いQOL評価法の特徴を比較すること,を目的とした.
方法 本研究は, Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses extension for Scoping Reviews(PRISMA-ScR)のガイドラインを参考に実施した.検索データベースは,PubMed,Web of Science,OT Seekerであった.検索式は,「Dementia AND (Homes for the Aged OR Nursing Homes) AND (Health Status Indicators OR Quality of Life) AND Aged」 とした(最終検索日:2021年8月31日).また,ハンドリサーチによる検索も行った.選択された文献から,アウトカム指標に用いられていたQOL評価法を確認し,その数を計数した.使用頻度が高かった評価法について,「質問項目数」「評価実施者」「評価対象者」「評価に要す時間」「日本語版の有無」「QOLの評価領域の数と内容」について調査した.
結果 最終的に 37 件の文献が選択され,10種類の評価法が確認できた.使用頻度が高かった主な評価法(確認された文献数およびその割合)は,QOL-AD(13 編,30.3%),QUALIDEM(10 編献,23.8%),QUALID(9 編,21.4%),EQ-5D(3 編,7.1%),DQOL(2 編,4.8%)だった.上位の3つの評価法の累計比率は74.4%であった.いずれも他者評価が可能な評価法であった.QOL-ADのみが,自己評価と他者評価ともに実施可能な評価法だった.実施時間は,数分~15分程度であった.QUALIDEM以外は日本語版があった.評価領域は 3~9 項目で構成されていた.
考察 上位3つの評価法について,QOL-AD及びQUALIDの質問数はそれぞれ 13,11 項目であり,他の疾患特異的な評価法 (29,37 項目) と比べると数が少なかった.また,いずれも数分 ~10分程度で評価が可能であった.質問項目が少なく短時間で実施できることは,臨床実践における評価法の選択基準になりやすいと考えられる.QUALIDEM は,質問数は37 項目と多いが,使用頻度は全体の2番目であった.これは,各評価法の信頼性・妥当性を検証した先行研究(Trefor et al.,2014)において,もっとも高く評価されたことが影響していると考えられた.使用頻度上位の評価法は,いずれも他者評価が可能な評価法であった.これは介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者を対象とした研究では,信頼性への疑念から主観的QOL評価法が敬遠された可能性がある.QOL-ADの評価実施者は,自己評価と他者評価ともに実施可能な評価法であった.QOL-ADについては,この実施評価者の適用範囲の広さにより最も使用頻度が高かった可能性が考えられる.本研究により,介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者を対象とした介入研究で,使用頻度が高い評価法とその特徴を明らかにした.最適な評価法は,評価法の特徴について何を重要視するのかで異なってくると考えられる.本研究において QOL-ADは,評価実施者の適用範囲が広く,採用数も多いことから他の評価法よりも応用範囲が広いと考えられる.