第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-3] ポスター:高齢期 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-3-6] 園芸活動を用いた作業療法の効果検証について

田浦 康代1,2, 島田 翔太2 (1.ケアホーム南淡路, 2.南淡路病院)

【はじめに】
田崎史江(2006)らは,園芸療法は植物を育て,使う活動を通して心身機能を良い状態に導いていく手法で,昔から作業療法の作業種目の1つとして用いられてきた.園芸活動は体を動かす健康的運動であるだけでなく,人の五感を刺激し,これにより楽しさや喜び,驚きを感じ,それは心を良い状態に保ち続けることになる.さらに,グループで作業することは会話を楽しみ,帰属感も責任感も養い,社会性を保つことにも繋がっていくと報告されている.当院においても長期入院にて顕著な意欲低下や認知機能低下等により提供中の作業活動のマンネリ化や本人の興味に基づいた活動が見い出せていない現状であった.そのため,多職種と連携し,園芸療法のプログラムを新たに取り入れた.以前より園芸活動は実施していたが,単発での活動であり持続的な効果検証を行っていなかった.今回,1か月のセッションを通し各指標を用いて多面的に評価し園芸作業の効果・有用性の検証を試みた.その結果を以下に報告する.
【方法】
対象は当院入院中の患者4名(男性2名・女性2名:年齢75.5±7.7歳)約1か月間,1回60分,計11回の園芸療法を週3回実施.参加職種は作業療法士2名,園芸療法士1名.活動の流れは,導入として参加者との談笑を行い,園芸活動では土を触る,育てる,収穫する,創る,食べるまでの行為を取り入れた.活動終了後は散歩を行い,帰棟後は茶話会を実施しセッション終了とした.評価は①FaceScale(以下FS)②血圧・脈拍を測定.③長谷川式簡易知能評価スケール④淡路式園芸療法評価法(以下AHTAS)⑤健康関連QOL評価(以下QOL-D)詳細は①②においては毎回の介入前後に,③~⑤においては1回目と11回目終了後に評価を実施した.尚,今回の発表は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
①介入前後の平均が3.3から2.8に変化した.②4名共血圧・脈拍に低下を認めた.③4名共変化なし.④介入前後の平均が14.2から22に向上した.⑤介入前後の平均が57.5から76に向上した.数値外の変化においては普段発語が少なく無表情の患者が植物について語り,笑顔になる場面がみられるようになった.「今日,水やりは?」と自ら発言するなど主体性の向上・活動の習慣化あり.活動外でも植物を話題に職員・患者間の交流が促進した.植物の世話以外は拒否的な患者が徐々に他活動へ参加するようになった.
【考察】
FSは数値の低下を認め,園芸作業による即時的な気分の改善に効果があったと考える.血圧・脈拍においても数値が低下を認め園芸による心理的安定効果は得られたのではないか.AHTASは得点の向上を認め園芸作業が認知機能に対しても効果があったことが示唆された.QOL-Dは園芸作業以外の場面を含む為,得点向上により漸次的な生活への満足度やアパシー症状緩和・改善に繋がったと考える.長期入院により活動量低下がみられる現状で,園芸活動には多くの身体動作が含まれており,運動能力の維持や増進に繋がり身体面へのリハビリの役割も十分担えた.継続した園芸活動を行うことで,その人に合った軽い負荷をかけることができ,適度な疲労感をもたらすことができるため,当院の対象者にとって非常に重要度の高い作業であると考えられる.行うべき動作が明確であり,満足感や達成感が得られやすい活動であり,共に行うメンバーとの交流が図りやすい作業をグループで分担したり,役割を改めて決めて行うと責任感や連帯感,帰属感を養うことにもなる.今後,対象者となる人の思い出のある植物を用いたり,昔ながらの栽培方法で園芸活動を行い過去の思い出を誘導することで長期記憶や快刺激の働きかけに繋げていくことが重要である.