[PJ-4-4] 回復期リハビリテーション病棟における認知症を有する方へのグループ回想法の継続による気分改善の影響
【はじめに・目的】
現在,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)入院患者の認知症合併率は20~50%と言われており対応が求められている(山口ら,2014).当院では,回復期リハ病棟における認知症を有する方を対象とした認知刺激介入を行なっており,1回の介入にて気分の改善が得られることを確認した(Kenji T, et al. 2022).しかし,介入継続により気分の改善効果が高まるかについては明らかになっていない.奥村(2005)は,グループ回想法を5回継続することで参加中の発語が増加すると報告している.本研究の目的は,グループ回想法の介入継続により,気分改善の効果が異なるかを明らかにすることとした.
【方法】
対象者は令和3年10月~令和4年10月,当院回復期リハ病棟に入院中で認知症と診断され,かつMMSE11点以上の者とした.対象者は介入課題とコントロール課題の両方を5回繰り返して実施した.介入課題は,グループ回想法を1時間程度,7名程度の参加者で行ない,コントロール課題は,グループ回想法実施翌日に,同時間帯・同場所での非介入時間を設けた.回想法課題は,古い生活道具を用いた作業回想法で,季節の行事や味覚,仕事,家事役割,遊び,生活の知恵等とした.評価は気分評価として,それぞれの介入の前後にFace scaleを評価した.分析は,まず1回目と5回目の評価について,時間要因(前・後),介入要因(あり・なし)の2元配置分散分析し,Bonferroni法にて多重比較検定を行ない,交互作用を比較した.その後,1回目と5回目の介入時の気分変化についてウィルコクソンの符号付き順位検定にて比較した.なお,介入時の気分変化は,1回目と5回目のそれぞれの介入後の値から介入前の値の差をとった.有意水準は5%とし,解析ソフトはR2.8.1を使用した.本研究は大誠会グループ倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は男性14名,女性15名,平均年齢86.4±6.8歳であった.Face scaleは,1回目の介入時8.7±6.2点 → 5.9±4.8点,非介入時7.3±4.9点 → 7.1±4.5点であり,有意な交互作用を認め(p=0.04, ηp2=0.16:効果量大),時間要因の有意な主効果(p<0.01, ηp2=0.23:効果量大)が見られた.一方,5回目は介入時7.9±4.9点 → 6.3±3.9点,非介入時8.3±5.1点 → 7.3±4.1点であり,有意な交互作用を認められず(p=0.51, ηp2=0.01:効果量小),時間要因の有意な主効果(p=0.01, ηp2=0.19:効果量大)のみ見られた.介入時の気分変化は,1回目は -2.9±5.0,5回目は -1.6±3.2であり,有意差は見られなかった(p=0.22, r=0.23:効果量小).
【考察】
今回,1回目に気分の即時的な改善が有意に得られたが,5回目は確認できなかった.介入時の気分変化の比較により,有意差は示さなかったが,1回目の方の改善が大きい様子(r=0.23:効果量小)が見られた.このことから,グループ回想法の継続により気分改善の効果が小さくなることが示唆された.
先行研究では,回想法継続の効果として,回想法実施中の発言回数,表情,他者交流等の観察的評価の点数向上を示す報告は多い(黒川1995,奥村ら1997)が,本人の気分聴取などの主観的評価が含まれることは少ない.そのため,回想法の継続による気分改善の効果を評価する際に,観察的評価のみならず,本人の気分を確認するなど,主観的評価を併せて実施することが必要である.
現在,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)入院患者の認知症合併率は20~50%と言われており対応が求められている(山口ら,2014).当院では,回復期リハ病棟における認知症を有する方を対象とした認知刺激介入を行なっており,1回の介入にて気分の改善が得られることを確認した(Kenji T, et al. 2022).しかし,介入継続により気分の改善効果が高まるかについては明らかになっていない.奥村(2005)は,グループ回想法を5回継続することで参加中の発語が増加すると報告している.本研究の目的は,グループ回想法の介入継続により,気分改善の効果が異なるかを明らかにすることとした.
【方法】
対象者は令和3年10月~令和4年10月,当院回復期リハ病棟に入院中で認知症と診断され,かつMMSE11点以上の者とした.対象者は介入課題とコントロール課題の両方を5回繰り返して実施した.介入課題は,グループ回想法を1時間程度,7名程度の参加者で行ない,コントロール課題は,グループ回想法実施翌日に,同時間帯・同場所での非介入時間を設けた.回想法課題は,古い生活道具を用いた作業回想法で,季節の行事や味覚,仕事,家事役割,遊び,生活の知恵等とした.評価は気分評価として,それぞれの介入の前後にFace scaleを評価した.分析は,まず1回目と5回目の評価について,時間要因(前・後),介入要因(あり・なし)の2元配置分散分析し,Bonferroni法にて多重比較検定を行ない,交互作用を比較した.その後,1回目と5回目の介入時の気分変化についてウィルコクソンの符号付き順位検定にて比較した.なお,介入時の気分変化は,1回目と5回目のそれぞれの介入後の値から介入前の値の差をとった.有意水準は5%とし,解析ソフトはR2.8.1を使用した.本研究は大誠会グループ倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は男性14名,女性15名,平均年齢86.4±6.8歳であった.Face scaleは,1回目の介入時8.7±6.2点 → 5.9±4.8点,非介入時7.3±4.9点 → 7.1±4.5点であり,有意な交互作用を認め(p=0.04, ηp2=0.16:効果量大),時間要因の有意な主効果(p<0.01, ηp2=0.23:効果量大)が見られた.一方,5回目は介入時7.9±4.9点 → 6.3±3.9点,非介入時8.3±5.1点 → 7.3±4.1点であり,有意な交互作用を認められず(p=0.51, ηp2=0.01:効果量小),時間要因の有意な主効果(p=0.01, ηp2=0.19:効果量大)のみ見られた.介入時の気分変化は,1回目は -2.9±5.0,5回目は -1.6±3.2であり,有意差は見られなかった(p=0.22, r=0.23:効果量小).
【考察】
今回,1回目に気分の即時的な改善が有意に得られたが,5回目は確認できなかった.介入時の気分変化の比較により,有意差は示さなかったが,1回目の方の改善が大きい様子(r=0.23:効果量小)が見られた.このことから,グループ回想法の継続により気分改善の効果が小さくなることが示唆された.
先行研究では,回想法継続の効果として,回想法実施中の発言回数,表情,他者交流等の観察的評価の点数向上を示す報告は多い(黒川1995,奥村ら1997)が,本人の気分聴取などの主観的評価が含まれることは少ない.そのため,回想法の継続による気分改善の効果を評価する際に,観察的評価のみならず,本人の気分を確認するなど,主観的評価を併せて実施することが必要である.