第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-4] ポスター:高齢期 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-4-6] 回復期リハビリテーション病棟から自宅退院した認知機能低下高齢者の自宅生活継続要因および主介護者の介護継続要因の検討

木村 優斗1, 加藤 拓彦2, 田中 真2, 澄川 幸志3 (1.社会医療法人 仁生会 西堀病院リハビリテーション課, 2.弘前大学大学院 保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域, 3.福島県立医科大学 保健科学部 作業療法学科)

【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)の指針には自宅退院を促進することが掲げられているが,この指針は認知機能低下高齢者にも適応される.しかしながら,認知機能低下高齢者が自宅退院するケースは少ない現状である.本研究では,回リハビリ病棟から自宅退院した認知機能低下高齢者の自宅生活継続要因および主介護者の介護継続要因を混合研究法によって明らかにすることを目的とし,認知機能低下高齢者の自宅退院促進と在宅継続の促進について検討する.なお,本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
研究①(量的研究)【対象】対象者は2020年12月から2021年12月の間に回リハ病棟から自宅に退院した者の中から,退院時MMSEが27点以下の認知機能低下高齢者とその主たる介護者7名とした.【調査方法】退院1ヶ月後と12ヶ月後に郵送によるアンケート用紙調査を実施した.【調査項目】認知機能低下高齢者の調査項目は,基本属性,ADL,行動・心理症状,認知機能とした.主介護者の調査項目は,基本属性,介護負担感,抑うつ度とした.【統計解析】退院1ヶ月後と退院12ヶ月後の主介護者の介護負担感および各調査項目の比較にWilcoxonの符号付き順位検定を,退院1ヶ月後および退院12ヶ月後の主介護者の介護負担感と他の因子との関連については,Spearmanの順位相関係数を用い,いずれも有意水準を5%とした.【結果】各調査項目の退院1ヶ月後と退院12ヶ月後の比較では,介護保険サービス利用数が増加し,1日の介護時間は減少した.退院1ヶ月後および退院12ヶ月後のZBI_8とそれぞれの時期の他因子との相関分析では,ZBI_8で介護負担感が低い者は,介護者の介護のストレス(r=0.809,r=0.939),CES-D (r=0.829,r=0.819),NPI-Qの重症度(r=0.939,r=0.996),NPI-Qの負担度(r=0.930,r=0.923),BI(r=-0.799,r=-0.820)の評価結果が良好であった.
研究②(質的研究)【対象】量的調査を終了した調査対象者から同意の得られた主介護者5名とした.【調査方法】インタビューガイドを作成したうえで主介護者に対し,電話によるインタビューを実施した.インタビューの記録にはICレコーダーを用いた.【データ分析】データ分析には,修正版グラウンデッド・セオリーアプローチを用いた.【結果】分析より,19個の概念と5個のサブカテゴリー,5個のカテゴリーが生成された.認知機能低下高齢者を自宅で介護する事を継続するには,退院時に自宅での介護を行うことになったきっかけを有し,被介護者の状態に応じた介護の内容を提供する中で生じる介護者の心理を良好に保つための介護負担の軽減が適切に成されていたことが要因として挙げられた.
【考察】混合研究法により次のことが明らかとなった.認知機能低下高齢者の自宅生活の継続には,認知機能低下高齢者に対して,ADLと行動・心理症状の介入を退院後も継続して行うために退院時に主介護者に対して,介護保険サービスの情報提供や調整を行うこと,認知機能低下高齢者の行動・心理症状などの病気の理解や対処法の指導,環境介入が必要であることが示唆され,主介護者の介護の継続には,主介護者が認知機能低下高齢者の状態や介護環境に応じて介護保険サービスを調整できるよう,主介護者に対して,退院時に利用可能な介護保険サービスの種類および内容,介護保険サービスの利用可能な頻度などの情報提供が必要であることが示唆された.