第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-5] ポスター:高齢期 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-5-6] 都市部在住高齢者の社会的孤立とSNSの利用方法

関川 陽平1, 國重 雅史1, 菊池 和美2 (1.文京学院大学保険医療技術学部作業療法学科, 2.帝京平成大学健康メディカル学部作業療法学科)

【はじめに】
 ソーシャルネットワーキングサービス(以下,SNS)の利用は,高齢者の社会的孤立の抑止に活用できる可能性をもっている(Zhou 2018).他にもSNSの利用は社会参加や幸福感の向上,抑うつの軽減など身体的・精神的に肯定的に影響するとされている(Wang, Wang et al. 2017).一方で,利用方法により影響が異なる(Aarts, Peek et al. 2015)ことが指摘されている.そこで本研究では,高齢者の社会的孤立の抑止に,どのようなSNSの利用方法が有効か,探索的に検討する.
【方法】
 調査は,自記式質問紙調査で2022年11月15日から11月25日に実施した.質問紙は,郵送で配布しFAXで回収した.対象は,都市部(東京,神奈川,埼玉,千葉)在住の65歳以上の高齢者のうち,過去2か月で1か月に1回以上SNS利用している者とした.SNSは,総務省の調査で採用されている,LINE,Facebook,Instagram,Twitterとした.社会的孤立の評価は,日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を用いた.利用方法は,自由記述とし「SNSを主にどのように使っていますか」と尋ねた.分析にはKH Coder 3を用いて社会的孤立の有無による対応分析を行った.なお本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:2022-01).
【結果】
 249名を分析対象とした.平均年齢は72.8歳±5.9歳で,女性138名(55.4%)あった.社会的孤立にある者は92名(36.9%)であった.各SNSの利用率は,LINE:94.8%,Facebook:27.7%,Instagram:17.3%,Twitter:20.9%であった.分析の結果,社会的孤立にある者は,会話(通話)や外出に関する報告に用いられていることが分かった.社会的孤立にない者は,食事会や旅行,サークル活動の計画など友人や趣味仲間とのコミュニティにおけるコミュニケーションツールとして用いられていることが分かった.また,社会的孤立にない者は,動画を共有する使い方をしていた.
【考察】
 社会的孤立にない者は,社会的孤立である人に比べ,SNSをコミュニティにおける相互的なやりとりのコミュニケーションツールに用いられている傾向にあることが分かった.また,写真以外にも動画を送り合うなど,多様な手段でコミュニケーションを図っている傾向であった.これらの結果,コミュニティの帰属意識やつながりの維持にSNSが役立っている可能性が考えられる.高齢者は,受傷や病気の発症のほか,急拡大する感染症を起因とした環境によって社会的孤立に陥りやすい.本研究では,SNS上のコミュニティの相互的なやりとりは,社会的孤立に対し抑止的な利用方法であることが示唆された.さらに,動画の共有といった多様な手段を用いたコミュニケーションは,よりつながりの維持に役立つことが考えられる.このことから,SNSを継続的に行えるよう支援すること,多様な方法でSNSを利用できるようにすることは,介護予防としても有用であると考えられる.今後は,縦断的な調査・介入を行っていくことが求められる.