第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-7] ポスター:高齢期 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-7-2] 訪問・通所リハビリテーションを利用する高齢者の作業療法目標と支援

平松 恭介1,2, 古田 憲一郎2, 笹田 哲3 (1.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科博士前期課程, 2.医療法人社団苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院, 3.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【目的】本研究の目的は, 訪問・通所リハビリテーション(以下, 訪問・通所リハ)における高齢者の作業療法実践を対象にナラティブレビューを行い, 作業療法士が高齢者に対し, どのような目標を定め, どのような支援を実施しているか, 明らかにすることである. 本研究を実施することにより, 地域における高齢期作業療法介入手段の検討の一助になると考える.
【方法】日本作業療法士協会事例報告登録システムに登録されている事例にて文献レビューを実施した. 検索ワードを「身体障害」「維持期」とし, 一般事例・MTDLP事例区別なく, 訪問・通所リハ利用者の事例を対象として抽出した. 対象期間は, 平成27年度「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書」にて報告された前後7年の2009年~2022年とした. 除外基準は, 年齢が65歳未満の事例とした. また, 抽出された事例について, 各報告から①報告年, ②演題名, ③性別, ④年代, ⑤使用されたアウトカム, ⑥作業療法目標, ⑦実施された作業療法支援を抽出し要約表を作成した. なお①~⑤を単純集計にてまとめ, ⑥の作業療法目標は, ICFの項目に分類し, ⑦の実施された作業療法支援の分類には日本作業療法士協会により作成された2018年度版作業療法ガイドラインに示されているICFに対応した6つの作業活動「感覚・運動活動」「生活活動」「余暇・創作活動」「仕事・学習活動」「用具の提供, 環境整備, 相談・指導・調整」「把握・利用・再設計」の具体例に照らし合わせ分類した.
【結果】抽出された事例は, 375件あり, 最終的な分析対象は81件で, 前7年32件(2009年~2015年), 後7年49件(2016年~2022)年であった. 使用されたアウトカム上位10項目は, 前7年, BI(16), MMT(14), FIM(14), ROM(11), BRS(10), MMSE(6), 握力(6), HDS-R(5), FAI(3), COPM(2), 後7年, BRS(20), MMT(18), FIM(16), HDS-R(15), BI(14), FAI(14), MMSE(10), ROM(9), LSA(7), COPM(6)であった. 作業療法目標は, 前7年全46件, 後7年全69件となり, ICFの分類, 前7年→後7年では, 心身機能13件(28.2%)→9件(13%), 活動20件(43.4%)→34件(49%), 参加7件(15.2%)→18件(26%), 環境因子5件(10.8%)→5件(7%), 個人因子1件(2.1%)→3件(4.3%)であった. 実施された作業療法支援の前7年→後7年では, 感覚・運動活動24件(75%)→33件(67.3%), 生活活動18件(56.2%)→33件(67.3%), 余暇・創作活動4件(12.5%)→15件(30.6%), 仕事・学習活動6件(18.7%)→15件(30.6%), 用具の提供, 環境整備, 相談・指導・調整27件(84.3%)→42件(85.7%), 把握・利用・設計8件(25%)→35件(71.4%)であった.
【考察】高齢者の地域における作業療法目標と支援の, 前後7年の結果を比較すると, 使用されたアウトカムでは, 特にLSAやFAIといった活動・参加に焦点化されたアウトカムが使用されるようになり. また, 作業療法目標においても, 活動・参加が増加傾向となっていた. 「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書」では, 個人の活動や参加レベルの目標設定を促進することを推奨しており, 作業療法分野においても, 同傾向が見られたと考える. 一方, 実施された作業療法支援では, 把握・利用・再設計が増加していた. これは, 生活状況の確認, 作業の聞き取り, 興味・関心の確認などの作業に関する個人特性への支援である. 日本作業療法協会では, 平成30年5月に, 「作業療法の定義」を改訂し, 作業療法は, 作業に焦点を当てた治療, 指導, 援助であるとしており, 今後, 高齢者の地域における作業療法においても, 活動・参加に加え, 作業に焦点を当てた実践への動向が示唆された.