[PK-11-4] 重度認知症脳卒中患者に対する食事動作改善に向けた介入
【はじめに】重度認知症患者は意思疎通が困難で病前の情報収集に難渋することが多い.さらに近年ではCOVID-19の影響で面会が制限され,情報収集の機会が減少している.今回,脳梗塞により右片麻痺を呈した重度認知症例に対し,病前の活動に着目し介入したところ改善を認めたので報告する.
【症例紹介】90歳台後半女性.右利き.息子夫婦と同居.要介護4.デイサービスとショートステイを組み合わせて利用し,食事以外のADLは重度介助を要していた.Z日,夕食中右手で箸が持てなかった.翌日朝食時も改善なく救急要請.頭部MRIにて左放線冠梗塞と診断,入院となった.
【作業療法評価】Z+2日,JCS3(名前のみ).軽度難聴(補聴器使用なし).単語・短文での簡単な言語指示には応じられるが,表出は相槌程度の返答が多い.BRSは右上肢Ⅳ,手指Ⅳ,下肢Ⅴ.感覚は精査困難だが右への触覚刺激に振り向くなどの反応あり.筋力はMMT右上下肢3,左上下肢3~4,握力は理解得られず測定困難であった.認知面はMMSE-J (HDS-Rとのハイブリッド版を実施)は1点で単語の復唱で加点.順唱3桁,短文の読字は可能.書字・描画は右麻痺にて不可であった.基本動作は床上動作が声かけ誘導にて見守り,立位を伴う動作は中等度介助が必要であった.ADLはFIM21点(運動14点,認知7点)で,食事は2点であった.右手で太柄スプーン使用するが把持不十分でスプーンが手からずれていた.自発的に左手で普通食器を把持する様子もみられた.食器の持ち替えは要介助.運び動作も匙部が口元まで届かず要介助であった.
【経過】Z+4日,右上肢での机上作業に意欲あり,徒手介助にて実施した.食事は手からのスプーンのずれが減少し,食器内の操作もやや改善した. Z+5日,自助食器に変更,すくい動作はしやすそうだが,自助食器を左手で把持していた.Z+8日,ケアマネージャーの情報提供書に「風船バレーに意欲的」との記載あり,棒体操やタオルたたみ,キャッチボールを追加した.Z+12日,スプーンのずれを適宜調整しながら5割自力摂食可能となった.Z+16日,食器の持ち替えに見守り必要だが,9割自力摂食可能.Z+18日,普通食器に変更もすくい動作スムーズ.食器の持ち替えが見守りで可能となった.Z+23日,配膳のセッティングと食事開始の声かけのみで全量自力摂食可能となった.
【結果】Z+33日,療養型(一般病棟)転院.BRSは右上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢BRSⅤ.筋力はMMT右上下肢3,左上下肢4.基本動作は起き上がり・端座位は声掛け誘導にて可能.起立は殿部の引き上げが軽介助となり,立位も両手で支持物把持し,見守りで可能となった.ADLはFIM23点(運動16点,認知7点)となり,食事で2点増点した.配膳時の食器位置のセッティングは要介助,その他,食事開始の合図・食器内の食残の有無・注意散漫な際の声かけを行うことで右手で太柄スプーン・左手で普通食器を把持し,摂食動作が可能となった.また,食器の持ち替えも可能となった.
【考察】重度認知症で実用的なコミュニケーションは困難であったが,ケアマネージャーの情報をもとに両手の活動を行ったことで食事場面での両手の協調性向上に繋がったのではないかと考えられる.また,観察から病前は左手で食器を把持して摂食していたと推測され自助食器導入に迷ったが,回復に応じて適宜調整することで右手でのすくい動作自立に繋がったと考えられる.
【結語】意思表出困難な患者に対しては,動作観察と病前を知る人からの情報が重要である.また,認知症患者は元のパターンで行動するため,新しい動作パターンの獲得や環境変化への対応には充分な配慮が必要である.
【症例紹介】90歳台後半女性.右利き.息子夫婦と同居.要介護4.デイサービスとショートステイを組み合わせて利用し,食事以外のADLは重度介助を要していた.Z日,夕食中右手で箸が持てなかった.翌日朝食時も改善なく救急要請.頭部MRIにて左放線冠梗塞と診断,入院となった.
【作業療法評価】Z+2日,JCS3(名前のみ).軽度難聴(補聴器使用なし).単語・短文での簡単な言語指示には応じられるが,表出は相槌程度の返答が多い.BRSは右上肢Ⅳ,手指Ⅳ,下肢Ⅴ.感覚は精査困難だが右への触覚刺激に振り向くなどの反応あり.筋力はMMT右上下肢3,左上下肢3~4,握力は理解得られず測定困難であった.認知面はMMSE-J (HDS-Rとのハイブリッド版を実施)は1点で単語の復唱で加点.順唱3桁,短文の読字は可能.書字・描画は右麻痺にて不可であった.基本動作は床上動作が声かけ誘導にて見守り,立位を伴う動作は中等度介助が必要であった.ADLはFIM21点(運動14点,認知7点)で,食事は2点であった.右手で太柄スプーン使用するが把持不十分でスプーンが手からずれていた.自発的に左手で普通食器を把持する様子もみられた.食器の持ち替えは要介助.運び動作も匙部が口元まで届かず要介助であった.
【経過】Z+4日,右上肢での机上作業に意欲あり,徒手介助にて実施した.食事は手からのスプーンのずれが減少し,食器内の操作もやや改善した. Z+5日,自助食器に変更,すくい動作はしやすそうだが,自助食器を左手で把持していた.Z+8日,ケアマネージャーの情報提供書に「風船バレーに意欲的」との記載あり,棒体操やタオルたたみ,キャッチボールを追加した.Z+12日,スプーンのずれを適宜調整しながら5割自力摂食可能となった.Z+16日,食器の持ち替えに見守り必要だが,9割自力摂食可能.Z+18日,普通食器に変更もすくい動作スムーズ.食器の持ち替えが見守りで可能となった.Z+23日,配膳のセッティングと食事開始の声かけのみで全量自力摂食可能となった.
【結果】Z+33日,療養型(一般病棟)転院.BRSは右上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢BRSⅤ.筋力はMMT右上下肢3,左上下肢4.基本動作は起き上がり・端座位は声掛け誘導にて可能.起立は殿部の引き上げが軽介助となり,立位も両手で支持物把持し,見守りで可能となった.ADLはFIM23点(運動16点,認知7点)となり,食事で2点増点した.配膳時の食器位置のセッティングは要介助,その他,食事開始の合図・食器内の食残の有無・注意散漫な際の声かけを行うことで右手で太柄スプーン・左手で普通食器を把持し,摂食動作が可能となった.また,食器の持ち替えも可能となった.
【考察】重度認知症で実用的なコミュニケーションは困難であったが,ケアマネージャーの情報をもとに両手の活動を行ったことで食事場面での両手の協調性向上に繋がったのではないかと考えられる.また,観察から病前は左手で食器を把持して摂食していたと推測され自助食器導入に迷ったが,回復に応じて適宜調整することで右手でのすくい動作自立に繋がったと考えられる.
【結語】意思表出困難な患者に対しては,動作観察と病前を知る人からの情報が重要である.また,認知症患者は元のパターンで行動するため,新しい動作パターンの獲得や環境変化への対応には充分な配慮が必要である.