第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PK-2-2] 作業体験がもたらすストレス軽減効果についての研究

藤田 さより, 飯田 妙子, 新宮 尚人 (聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部作業療法学科)

【研究目的】
 長期化するコロナ禍により旅行やスポーツなど従来のような余暇活動が制限され,ストレスが増大し,心身の不調をきたすなど心身の疾患が増えつつある.そのような中,限られた環境でも,気軽にストレスを軽減できる活動が求められている.そこで今回,室内で手軽にできる作業を用いて効果的にストレスを軽減できる作業体験プログラムを作成した.その結果,一定のストレス軽減効果が確認されたため今回報告する.
【研究方法】
 プログラムの内容は,先行文献より,ストレス軽減の効果があるとされる「没頭しやすい作業」,「マインドフルネス作業療法」等で効果の示された作業の中から検討し,「クラフトパンチアート」,「シールアート」,「消しゴムハンコ」,「マクラメ」,「箸づくり」,「塗り絵」,「木材ブロック」,「多肉の寄せ植え」の全8回1回90分のプログラムを作成した.プログラムのストレス軽減の効果を明らかにするためプログラムの介入前後にPOMS2を実施した.介入前後の比較には,IBM SPSS Statisticsを用い,Wilcoxonの符号和検定を行った.さらに背景要因による影響について明らかにするため,性格タイプを把握する東大式エゴグラム(以下,TEG3),ストレスについて把握するストレスコーピングインベントリー(SCI)を実施した.また毎回の終了後には満足度,集中力,次回への意欲を尋ねるアンケートを実施した.尚,本研究の実施にあたっては筆者の所属する機関の倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
 研究参加者は,研究の参加の説明に同意が得られた高次脳機能障害者9名および健常者6名であった. POMS2の総合的気分状態得点(以下,TMD)の平均値は,「クラフトパンチアート」が介入前28.4,介入後12.3,「シールアート」は介入前15.9,介入後6.5,「消しゴムハンコ」は介入前23.3,介入後15.6,「マクラメ」は介入前24.1,介入後8.9,「マイ箸づくり」が介入前10.5,介入後0.4,塗り絵は介入前5.2,介入後-2.1,「木材ブロック」が介入前0.3,介入後-6.8,「多肉の寄せ植え」が介入前3.7,介入後3.4であった.「シールアート」,「消しゴムハンコ」,「多肉の寄せ植え」の3種目については有意な差は見られなかったが,それ以外の5種目には有意に介入後,TMD得点の低下が見られた(P<0.05).特にクラフトパンチアートは高い有意差が見られた(P<0.01).アンケートの結果は,満足度,集中力,次回への意欲についてすべて毎回5段階中4以上の回答であった.全体の振り返りでは「クラフトパンチアート」,「マイ箸づくり」が「特によかった」,「またやりたい」との感想が複数記載されていた.TEG3を用いた性格タイプによる結果の違いは見られなかった.SCIによるストレスコーピングの違いによる差は,「情動型」が「問題解決型」よりPOMS2のネガティブ因子が低い傾向にあったが,明らかな違いはなかった.
【考察】
 結果より,ストレスを軽減する効果が高い作業の特徴として,工程数が3~4工程と少なく,巧緻性を必要とする工程が少なく,繰り返し動作が多い作業であった.さらにデザイン性,創造性も含む作業に効果が高いことが示された.工程数が多いと思考力が必要となり,ストレス軽減に効果が示されている「没頭」や「集中」が出来にくいことが要因ではないかと考える.またストレスを軽減させた背景要因として,性格要因,ストレスコーピングの違いによる影響は低いことが示唆された.今後,その他の要素を含む作業での検証や,対象者の作業歴や興味関心など背景要因の分析を行うことまた,参加者数が少なかったため,さらなる規模を拡大した研究を実施することでより精度の高いストレス軽減のためのプログラムの開発に繋げたいと考える.