第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-3-4] 当院回復期リハ病棟における認知症患者に対する集団的個別訓練の効果検証

小柳 康裕 (社会医療法人 北九州病院 北九州古賀病院リハビリテーション科)

【はじめに】近年,認知症高齢者の数は増加の一途を辿り,2025年には65 歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれている中で,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)協会の全国調査では,認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上を有する者の入棟時の割合は,2020年度で43.8%と報告されている.一方で,回復期リハ病棟ではFIMを指標とするアウトカム評価が導入されているが,認知症患者のFIMの改善率・自宅退院率は低かったとの報告もある.昨今の回復期リハ病棟の認知症合併率上昇への対応として,集団的個別訓練の事例報告がなされていたが,その後の追跡調査や同様の研究報告に関して十分に検討されていない.
【目的】本研究の目的は,当院回復期リハ病棟における認知症患者への集団的個別訓練の効果について混合研究法を用いて検証することであった.
【対象】対象は4名だった.包含基準はHDS-Rが15点以下,DBD13かVitaltyIndexのカットオフ値以下,不穏傾向が強い,退院先が施設である者とした.除外基準は意識障害や離床困難の何れかに該当する者とした.
【方法】研究デザインは混合研究法の埋め込み型デザインを用いた群内前後比較試験とした.集団的個別訓練は,各患者に各セラピストが対応する個別対応型の準閉鎖集団を採用し,集団レクや集団起立訓練等を実施した.期間は2021年11月~12月の間で週2回,計8セッション(1セッション30分)実施した.本研究は後方視的に評価用紙や介入に関わったセラピストが記載したフィールドノートからデータ収集し,量的分析は,各評価HDS-R,DBD13,VitaltyIndex,VASの介入前後の値に対してShapiro-Wilk検定で各評価の正規性を確認後,それぞれ反復測定一元配置分散分析し,有意差があった場合Tukeyの多重比較を行った.効果量検定はd,r(d=0.2小 0.5中 0.8大 r=0.1小 0.3中 0.5大)を使用し,統計ソフトはIBM SPSS(ver.27)を用いて有意水準5%とした.また,量的分析では,対象者の主観的体験の変化を捉えきれない為,質的分析にてフィールドノートから逐語録を作成し,KJ法を用いて分析した.本研究は,当院倫理審査委員会の承認を受けている.説明と同意は「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」に沿って本研究の情報公開し,研究への参加を拒否する機会を保障した.
【結果】量的分析では,有意差を認めたのはDBD13:p=.045のみであったが,効果量は,HDS-R:d=0.78,DBD13:d=1.65,VitaltyIndex:r=0.87,VAS:d=1.18と大きな効果量を認めた.対象者の主観的体験の変化を捉えきれなかった部分をKJ法にて質的に分析した.その結果,3個の大カテゴリーと10個の小カテゴリーに分類された.対象者は【集団的個別訓練導入】に〈受動的,要介助,戸惑い,運動量低下〉を経験し,【集団的個別訓練による心身の変化】で〈能動的,他患との交流,他患の模倣,運動量増加〉という変化が生じ,最終的に【主体的にリハに参加】することで〈自発的な動き,楽しむ姿勢〉というプロセスを経ていることが分かった.
【考察】本研究では,量的分析結果から概ね効果があったと結論付けたが,対象者の主観的体験の変化のプロセスを可視化する為KJ法を用いて質的分析し,量的データの結果に質的データを埋め込み集団的個別訓練の効果を検証した.効果としては,「集団」による帰属意識にて残存する社会性の部分を引き出し,尚且つ「個別」による適切な対応によりBPSDの改善に繋がると考える. また,対象者のみならず,VASの結果から個別訓練で難渋する患者の介入セラピストの心理的負荷の軽減も期待できるのではないかと考える.以上のことを踏まえて,集団的個別訓練が回復期リハ病棟における認知症患者の対応の一助になるのではないかと考える.