[PK-4-4] 作業活動を効果的に導入するためにはどうしたらよいか
【はじめに】
物理的・心理的に孤立しやすい急性期病院において作業活動は対象者の参加を促すために有用であるが,実際は身体・生活機能訓練が優先されることが多い.今回,急性期病院において作業活動を導入し参加につながった事例を複数経験し,共通点を検討することとで有効的な導入方法を考察した.なお,発表にあたり本人の同意を得て個人情報を特定されないよう十分に配慮した.
【①事例情報と②作業活動導入目的】
A:①70歳代女性,腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行,認知機能低下により無関心・無気力で発言や表情が少なくADLは介助者に依存的であった.②自主性の向上.B:①80歳代男性,外傷性くも膜下出血,既往に認知症がありBPSDやせん妄により「仕事に行かなきゃ」「家に帰らなきゃ」と焦燥感があり,生活リズムは昼夜逆転していた.②見当識改善,快刺激の提供.C:①90歳代男性,脳梗塞,意識障害が遷延し開眼が少なく軽度麻痺に比してADLは全介助を要していた.②覚醒向上.D:70歳代女性,感染性心膜炎に対し僧帽弁形成術を施行.食欲不振による栄養不足,安静による運動耐容能低下によりほぼベッド臥床,リハビリ拒否があった.②離床機会の提供,リハビリ意欲向上.
【作業活動導入の経過】
病前生活を聴取後「退院したら何がしたいか」とHOPEを質問し,作業を選択した.
A:HOPE「近所のカフェに行きたい」,理由は「他の客の話を聞くのが楽しい」だった.作業や場の共有が価値をもつと考え,場の雰囲気も楽しめるように工程の簡単な作品共同制作やピアノの連弾を選択.「体力をつけるため」と提案.作品に関連する話題で会話や笑顔が増え,ADLでは「更衣自立」と自ら目標を設定した.B: HOPE「こういうの(塗り絵を実施中)を通じて誰かと仲良くなりたい」 自己表現や社会交流のニーズがあると考え,書道や季節作品の共同制作を選択.リハビリ室の飾り付けとして依頼.不穏が軽減し人生観や生活歴など自己表出が多く聞かれた.C:HOPE「友達と将棋をすること」,日課「社会情勢の討論」.知的活動を通じ他者と交流することが価値をもつと考え,OTRに将棋を教える作業を選択.開眼が得られ,OTRに配慮し手心を加える社交性もみられた.D: HOPE「孫の面倒をみる・家事」.役割的活動が価値をもつと考え,リハビリ室の飾りづけとして編み物や掃除を依頼.病室でも椅子に座って編み物を進めるようになり,リハビリ時間になると身なりを整え作品を準備しOTRを待っているようになった.
【考察】
共通点として「時期」「選択」「提案の方法」があげられた.提案の「時期」としては離床が安定した頃であった.ただし他事例に比べ現状理解が良好であったDに関しては,作業活動に興味が得られた時期が遅く,嗜好の見直しにより食が進み,またトイレ歩行が見守りで可能となった時期であった.これは「生理的欲求」「安全の欲求」が満たされた時期であったと考えられ,これらの欲求も考慮しつつ検討する必要がある.「選択」ではHOPEを聴取するのみでなく,そこから価値観を明らかにすることで作業を選択した.急激な心身・環境変化の中でも,普遍的な価値観を通じて作業活動と日常生活を紐づけることができ心理的負荷の軽減につながったと考える.「提案の方法」では「身体機能に着目した理由付けをする」ことで良好な反応が得られた.急性期において身体障害に着目しがちな対象者のニーズと合致しており,理由として理解やすいからだと考える.社会交流ニーズの高い対象者には「依頼する」が有用であった.他者から役割を与えられたことが受容される体験となり動機づけとなったと考える.
物理的・心理的に孤立しやすい急性期病院において作業活動は対象者の参加を促すために有用であるが,実際は身体・生活機能訓練が優先されることが多い.今回,急性期病院において作業活動を導入し参加につながった事例を複数経験し,共通点を検討することとで有効的な導入方法を考察した.なお,発表にあたり本人の同意を得て個人情報を特定されないよう十分に配慮した.
【①事例情報と②作業活動導入目的】
A:①70歳代女性,腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行,認知機能低下により無関心・無気力で発言や表情が少なくADLは介助者に依存的であった.②自主性の向上.B:①80歳代男性,外傷性くも膜下出血,既往に認知症がありBPSDやせん妄により「仕事に行かなきゃ」「家に帰らなきゃ」と焦燥感があり,生活リズムは昼夜逆転していた.②見当識改善,快刺激の提供.C:①90歳代男性,脳梗塞,意識障害が遷延し開眼が少なく軽度麻痺に比してADLは全介助を要していた.②覚醒向上.D:70歳代女性,感染性心膜炎に対し僧帽弁形成術を施行.食欲不振による栄養不足,安静による運動耐容能低下によりほぼベッド臥床,リハビリ拒否があった.②離床機会の提供,リハビリ意欲向上.
【作業活動導入の経過】
病前生活を聴取後「退院したら何がしたいか」とHOPEを質問し,作業を選択した.
A:HOPE「近所のカフェに行きたい」,理由は「他の客の話を聞くのが楽しい」だった.作業や場の共有が価値をもつと考え,場の雰囲気も楽しめるように工程の簡単な作品共同制作やピアノの連弾を選択.「体力をつけるため」と提案.作品に関連する話題で会話や笑顔が増え,ADLでは「更衣自立」と自ら目標を設定した.B: HOPE「こういうの(塗り絵を実施中)を通じて誰かと仲良くなりたい」 自己表現や社会交流のニーズがあると考え,書道や季節作品の共同制作を選択.リハビリ室の飾り付けとして依頼.不穏が軽減し人生観や生活歴など自己表出が多く聞かれた.C:HOPE「友達と将棋をすること」,日課「社会情勢の討論」.知的活動を通じ他者と交流することが価値をもつと考え,OTRに将棋を教える作業を選択.開眼が得られ,OTRに配慮し手心を加える社交性もみられた.D: HOPE「孫の面倒をみる・家事」.役割的活動が価値をもつと考え,リハビリ室の飾りづけとして編み物や掃除を依頼.病室でも椅子に座って編み物を進めるようになり,リハビリ時間になると身なりを整え作品を準備しOTRを待っているようになった.
【考察】
共通点として「時期」「選択」「提案の方法」があげられた.提案の「時期」としては離床が安定した頃であった.ただし他事例に比べ現状理解が良好であったDに関しては,作業活動に興味が得られた時期が遅く,嗜好の見直しにより食が進み,またトイレ歩行が見守りで可能となった時期であった.これは「生理的欲求」「安全の欲求」が満たされた時期であったと考えられ,これらの欲求も考慮しつつ検討する必要がある.「選択」ではHOPEを聴取するのみでなく,そこから価値観を明らかにすることで作業を選択した.急激な心身・環境変化の中でも,普遍的な価値観を通じて作業活動と日常生活を紐づけることができ心理的負荷の軽減につながったと考える.「提案の方法」では「身体機能に着目した理由付けをする」ことで良好な反応が得られた.急性期において身体障害に着目しがちな対象者のニーズと合致しており,理由として理解やすいからだと考える.社会交流ニーズの高い対象者には「依頼する」が有用であった.他者から役割を与えられたことが受容される体験となり動機づけとなったと考える.