第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-6] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PK-6-3] スケジュール表を用いて自己管理の再獲得を行い自宅退院につないだ症例

佐藤 はるな1, 小菅 真由美1, 宮本 秀美2, 猪狩 友行3 (1.袖ヶ浦さつき台病院リハビリテーション部, 2.袖ヶ浦さつき台病院看護部, 3.袖ヶ浦さつき台病院リハビリテーション科)

【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)とは,日常生活動作能力の向上による寝たきり防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーション(以下リハ)を集中的に行うための病棟とされている.そのため回リハ病棟でのリハは,医療と住まいの橋渡しのために現在の病気やけがで生活障害となりうることを評価・介入する必要がある.今回,高次脳機能障害を有した患者に対し自己管理の獲得を目標に介入を行い自宅復帰を果たした1事例について報告する.
【倫理的配慮】患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し,口頭と書面で説明を行い家族から同意を得た.
【症例紹介】70歳代女性,自宅にて旦那と2人暮らし.病前よりボランティア参加や学童のパートをしながら自宅の家事なども全て担い活動的に過ごされていた方.今回,ボランティアに参加していた際に左片麻痺の症状があり救急搬送.急性大動脈解離が発覚し緊急手術となりX日に部分弓状動脈人工血管置換術を施行し,X+3日よりリハ開始.X+35日にリハ継続目的で当院回リハ病棟へ転院となった.
【作業療法評価】主治医より血圧(以下BP)80<BP<140の範囲内でのリハ指示が出ているが安静時BP140台.上田式12grade左上肢11手指11下肢11.フリーハンド歩行可能.HDS-R29/30点.TMT-A60秒,-B234秒.コース立方体IQ67.日常生活やリハ時の様子は,身辺動作に介助は必要ないが日常生活動作だけでもBP上昇があり積極的なリハが困難.生活上での注意機能低下あり,声掛けに気が付かない・スケジュールを間違える・自身の疲労感に気が付かないなどがみられる.
【介入の基本方針】多職種カンファレンスにて基礎体力の向上と自己認識の向上を目指し,退院後の自己管理を自身で行えるように目標を設定した.
【作業療法実施計画】基本的プログラムは基礎体力の向上.応用的プログラムはスケジュール表を使用し自己の行動の振り返り実施.掃除・洗濯などの家事動作全般の動作確認.栄養指導実施後に調理練習実施.社会参加プログラムは家族を含めた病状説明を行いケアマネージャーへの情報提供.家屋調査の実施から改修・福祉用具の提案.
【介入経過】基本的プログラムと応用的プログラムを同時並行で行った.スタッフのバイタル管理のもと負荷量を調節した歩行やエルゴメーターなどの運動を実施し体力の向上を図るとともにスケジュール表での予定の管理を実施.スケジュール表にはスタッフとともに1日の予定を書き出し,リハで行った運動内容やBPなども一緒に記載.一日の終わりにはその日の感想を書く欄を設けて自身の疲労度などを振り返ってもらった.徐々にスタッフの補助を減らし,BPの自己測定や先の予定を見越して運動量を調節できるように介入.社会参加プログラムとして病状説明では活動量過多でのBP上昇のリスク,注意機能低下による服薬や火の元などの管理にエラーが生じる可能性があることをご家族様へ説明.家屋調査時は福祉用具の導入や退院後のサービス利用を提案.
【結果】安静時収縮期BP120~130台,運動時で130台とBP安定.上田式12grade左上肢12手指12下肢12.HDS-R27/30点.TMT-A67秒,-B221秒.コース立方体IQ66.耐久性の向上により1日3回のリハもこなすことができる.生活上での注意機能改善あり,スケジュール表を用いて自身の行動を振り返ることができる.
【考察】スケジュール表を用いることにより,自身の行動が与える結果を可視化することができた.これにより自身の思考の一部を視覚代償により客観視して,内省と習慣化を繰り返すことで高次脳機能障害を有している患者でも自己管理の獲得につなげられたと考える.