第57回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-5] ポスター:援助機器 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PL-5-3] 片手で折り畳み傘を巻き留める自助具の改良

藤嶋 聖子 (東北メディカル学院)

【はじめに】演者は,片手で折り畳み傘を巻き留める自助具を考案し,実用化に向けさらなる改良を行っている.第56回日本作業療法学会では,「使用できる場所が限られる」,「手順が分かり難い」といった解決を要する意見があることを発表した.今回は,改良した自助具について使用場所と操作手順の問題が解決されたのか,また,さらなる改良点の有無を明確にする事を目的とした.
【対象と方法】対象は,健常成人17名(男性4名,女性13名),平均年齢21.2±1.4歳で全員右利きだった.事前に倫理審査委員会の承認を得た上で,被験者に目的と趣旨を説明し書面による同意を得た.自助具は,ファスナー式の折り畳み傘用収納袋で作製した.傘を横に収納した状態で鞄に装着できるように袋の外側に2つのカラビナを取り付けた.また,片手でもファスナーの操作がしやすいようにファスナー生地に針金を縫い付けた.袋の内側下方には鞄が濡れないように薄地のマイクロファイバータオルを縫い付け,内側上方には傘のストラップを掛けるためのコートホックを取り付けた.また,傘を巻き留めやすくするために袋の内側上方と傘のネームバンドにワンタッチホックを取り付けた.自助具は次に示すAからHの流れで使用してもらった.A傘を閉じて中棒を縮める.B自助具を開く.Cストラップをコートホックに掛ける.Dネームバンドと自助具をワンタッチホックで留める.Eストラップを外して傘生地を巻く.Fネームバンドを留める.Gタオルを自助具の中へ入れる.H自助具を閉じファスナーを閉める.手順は,十分に練習を行った後,非利き手のみでAからHを実施し,終了後に自助具について意見を聴取した.動作画像は前方と左側方からデジタルビデオカメラ(C920r,ロジクール社)で撮影し,動作解析装置(マイオモーション,ノラクソン社)に保存した.
【結果】「自助具があればどこでもできる」,「難しい工程がなく使い易かった」,「片手でも使い易かった」,「見た目も使う姿も問題ない」,「鞄の濡れない対策が良かった」という肯定的な意見が挙がった一方で,「傘生地を巻く動作が少し大変だった」,「ファスナーが閉めにくかった」という解決を要する意見が挙がった.動作画像から,傘生地を巻く動作では,固定されているネームバンドに向かって傘を巻き上げる必要があり,前腕回内位で手関節を背屈させながら行っていた.ファスナー操作では,非利き手から利き手方向へ閉じなければならず,肩関節外転から肘関節を伸展していく操作となっていた.
【考察】「自助具があればどこでもできる」,「難しい工程がなく使い易かった」等の意見から,使用場所と操作手順の問題は解決されたと示唆する.一方で,解決を要する意見はさらなる改良点があることを示している.動作画像から,傘生地を巻く動作では前腕回内位で手関節を背屈させながら行っていたことから,手関節背屈の柔軟性が低く動作が行い難かったと推察する.これは,前腕回内位では手関節背屈に比し掌屈の柔軟性が高い(斎藤剛史・他,2010)という報告からも裏付けられる.また,ファスナー操作が肩関節外転からの操作となっていたことから,上腕三頭筋の筋出力が小さかったと推察する.これは,上腕三頭筋は肩関節内転かつ伸展で筋出力が高値を示す(小山泰宏・他,2010)という報告からも裏付けられる.これらのことから,傘生地は掌屈で巻けるように,ファスナーは利き手から非利き手方向(障害のある場合は患側から健側方向)に操作できるように改良することが明確となった.今後は,自助具を改良し,症例での検討を進めていく.