第57回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-5] ポスター:援助機器 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PL-5-4] 片手用髪留め具の開発

中松 貴子1, 濱 裕光2, 中松 俊介1 (1.大阪河﨑リハビリテーション大学作業療法学専攻, 2.大阪公立大学情報学研究科)

【はじめに】髪を束ねる動作は両手を必要とする.多種多様な福祉用具が製品化されているが,片手で髪を束ねるための汎用性の高い自助具は少ない.そこで片手用髪留め具を開発し,特許を申請して公開した(特開2016-43221).被験者が片手用髪留め具を長期間使用したことで,新たな問題点を発見し,改良を行ったので報告する.
【目的】片手用髪留め具の快適化,修理の簡便化を図り,おしゃれをより楽しむことを目的とした.
【概要】直径22mmの丸いステンレスの芯を布で包んで作ったくるみボタンを基礎とし,指先装着部にカラーテープ,継ぎ目にスナップボタンとヘアゴムを使用する.小林らの研究を参考にし,くるみボタンとスナップボタンの間にココナッツボタンを挟み,よりスナップボタンが留めやすいように補高している.指先装着部の太さとヘアゴムの長さは被験者に合わせて調節した.
【使用方法】右手使用の場合,片手用髪留め具のヘアゴムの位置が内側に来るように右母指と中指に装着する.うなじ付近でひとつに束ねた髪型であるひとつ結びの場合,頸部体幹右側屈し,髪を右側に集めておく.右肩関節外転外旋し,母指と中指を伸展させながら片手用髪留め具のヘアゴムを伸ばしつつ,示指環指小指を屈伸して髪をまとめていく.装着部に髪を挟まないように母指と中指を屈曲して合わせスナップボタンを留めて装着し,片手用髪留め具から母指と中指を外すことで髪を束ねることができる.自身で片手用髪留め具を取り外し,髪をほどくことも可能である.
【症例】20歳代女性.右利き.診断名は左脳動静脈奇形破裂.障害名は右片麻痺.身体機能として,BRST右上肢stageⅤ-2,手指stageⅡ,下肢stageⅣ-2,右上下肢感覚鈍麻,右上肢筋緊張軽度亢進と障害が残存.左上肢機能は,握力22.4kg,指腹ピンチ力1-2指4.5kg,1-3指4.0kgであり,書字動作可能で利き手レベルの実用手である.高次脳機能障害は認められず,独歩でADLもほぼ自立.自身の自動車運転で買物や,電車でコンサートに行くなどアクティブで,化粧等のおしゃれにも気を遣っていた.一人暮らしをしながら勤務している.なお,大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】片手用髪留め具の使用により,髪を束ねる時間が10秒以内で可能となり,緩くなることはなく束ねた状態を維持できるようになった.また,持ち運びが可能で,いつでも髪を束ねることができるなどの便利さがあった.4年間使用を継続していると,1ヵ月に1回程度の頻度でヘアゴムが劣化し,伸びて切れる事象が持続した.また,スナップボタンの破損,パーツ接続部における糸の劣化,布部分の汚れ,指先装着部の拡張などの問題が生じた.改良点として,スナップボタンからマグネットボタンへの変更,ヘアゴムの取り換えが簡単にできるように,スナップボタンをつけたココナッツボタンと,くるみボタンの金具との間に紐を入れる工夫,パーツ装着に使用する糸の強化,布を合皮に変更し汚れの軽減を行った.これらの改良により装着の快適化と修理の簡便化につなげることができたと考える.また,片手用髪留め具をシンプルなデザインにし,シュシュなどの他のヘアアクセサリーなどを被せて,よりおしゃれを楽しむことができることが分かった.
【展望】企業と連携して共同開発を進行中であり,より多くの患者様に提供できるように片手用髪留め具の汎用化を目指していきたい.