第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

Fri. Nov 10, 2023 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-2] COVID-19流行下における地域在住高齢者の感染恐怖とその影響

安野 匠貴1, 関口 謙人2, 高坂 駿3 (1.彩北病院作業療法課, 2.沼田脳神経外科循環器科病院リハビリテーション科, 3.群馬医療福祉大学リハビリテーション学部)

【序論】国立長寿医療研究センターの報告では,COVID-19感染拡大前後で,高齢者の1週間あたりの身体活動時間は約60分(3割)減少した.感染に対する恐怖感は,感染症予防行動を増加させるが,活動を低下させる一因でもある.本研究では,地域在住高齢者のCOVID-19に対する恐怖感の程度,フレイルの状態,過去1か月間における会話頻度・外出頻度・1日の内に一人で過ごす時間・1日の平均外出時間(以下,社会参加状況),生活の満足度,健康状態に関する困りごとについて調査を行った.
【目的】地域在住高齢者のCOVID-19に対する恐怖感の違いからみた,フレイルの状態,社会参加状況,生活の満足度の差および,COVID-19流行下で生じた健康に関する困りごとを明らかにする.
【対象】関東地方平野部にあるA市の地域リハビリテーション活動支援事業に参加する,65歳以上の地域在住高齢者とした.
【方法】新型コロナウイルス恐怖尺度(Fear of COVID-19 scale: 以下,FCV-19S),簡易フレイルインデックス(以下,簡易FI),社会参加状況や生活の満足度に関する自記式アンケートを実施した.統計分析では,COVID-19自体の恐怖感により日常生活への支障が生じているかを判断するカットオフ値(Midorikawa et al.,2022)を基準に,FCV-19Sの高値群と低値群に分け,簡易FI合計点,社会参加状況,生活の満足度の差をMann–WhitneyのU検定で分析した.健康状態に関する困りごとについては,自由記述集計を行った.調査は,2021年第21~24週 の間に計2回行った.本研究は倫理審査委員会の承認を得ており,同意の得られた者のみを対象とした.
【結果】分析対象者は,32名(女性27名,男性5名)であった.FCV-19Sの高値群は13名,低値群は19名が該当した.得点は,高値群が23.9±2.2点,低値群が16.7±2.6点であり(p<0.001),全体では19.63±4.4点であった.2群間の比較では,簡易FI合計点,社会参加状況,生活の満足度に有意差はなかった.なお,簡易FIの結果からは,健常は14名,プレ・フレイルの者は13名,フレイルの可能性がある者は5名が該当した.自由記述集計では,延べ25件のコメントがあり,「身体の痛み」に関するコメントが7件,次いで,「体力低下」に関するコメントが4件であった.他にも,運動や時間の使い方の工夫など健康増進のために取り組んでいることについてコメントがあった.
【考察】全体的には,COVID-19への恐怖から日常生活に支障が生じている者の割合は,先行研究(Midorikawa et al.,2022)と比較するとやや高値であったが,恐怖感の高低によりフレイルの状態,社会参加状況,生活の満足度に差があるとは言えなかった.本研究は,一般介護予防事業参加者を対象としており,自由記述のコメントからも,自身の健康を意識している者は少なくないと思われる.群間差が少なかった背景には,こうした集団の特徴が影響した可能性がある.今後,対象者の選定条件を広げることで,こうした特徴によるバイアスを軽減できると考える.また,簡易FIの結果は,過去の全国的なフレイル調査(Murayama et al.,2020)と比較すると,特にフレイルの可能性のある者の割合が高いように見える.しかし,サンプルサイズが5名と小さいため,今後,統計分析に耐えうるサンプルサイズを確保することで,フレイルの状態からみた恐怖感の差なども検討できると考える.