[PN-11-11] 脳卒中者に対する活動と参加に焦点を当てたADOCとMTDLPを用いた訪問リハビリテーションの経過-ケースシリーズ研究-
【はじめに】
地域包括ケアシステムが導入され,これからの訪問リハビリテーション(訪問リハ)に求められている役割は,対象者の「活動と参加」に焦点を当て,一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みを提供して,その人らしい生活を支援することである.そこで我々は,脳卒中者を対象として,Aid for Decision-making in Occupation Choice(ADOC)と生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用いて,対象者の獲得したい作業を目標とした訪問リハによる介入を行い,経過を調査した.
【方法】
本研究のデザインは前後比較によるケースシリーズ研究である.対象は介護保険による訪問リハを新規に開始した地域在住の脳卒中者とした.介入は従来の訪問リハにADOCとMTDLPを用いる方法で,単施設で実施した.訪問リハ初回から2週間以内に各種の評価と,ADOCにて対象者の獲得したい作業の選択を行い,MTDLPを用いて介入プログラムを策定し介入を開始した.評価は3か月に1回実施し最長12か月実施した.評価項目は,身体機能:Short Physical Performance Battery(SPPB),認知機能:Mini-Mental State Examination-J(MMSE-J),日常生活自立度:Barthel Index(BI),応用的日常生活動作:Frenchay Activities Index(FAI),介護負担:日本語版Zarit介護負担尺度(J-ZBI),健康関連QOL :Euro QOL 5 dimension(EQ-5D),およびMTDLPの目標とした作業の実行度,満足度とした.MTDLPの実行度,満足度は開始時と訪問リハ終了時もしくは12か月時に評価した.解析方法は,各評価項目の開始から3か月ごとの変化を確認するために,一般化線形混合モデルを用いた.危険率0.05未満を統計学的に有意とした.尚,本研究は,当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者全員から文書による同意を得た.
【結果】
研究参加者は11名でありすべて解析対象とした.対象者の基本属性は,平均年齢±標準偏差:74.4±11.1,性別:男性2名・女性9名,発症からの訪問リハ開始までの平均日数±標準偏差:121.1±47.2,介護度:要支援2;1名,要介護2;4名,要介護3;4名,要介護4:2名であった.各評価結果の開始時,3か月,6か月,9か月,12か月における経過を以下に示した(数値は,順番に開始時の値の推定値,各月の開始時からの変化量の推定値を示し,*が付いているものは統計的に有意であることを示している).SPPB:3.64*,1.15,0.52,0.9,-0.91.MMSE-J:26.89*,0.56,0.77,1.2*,0.81.BI:69.68*,2.87,6.83*,9.96*,16.05*.FAI:4.4*,4.03*,3.18*,4.83*,6.15*.J-ZBI:18.83*,-4.5,-7.86*,-7.24*,-11.11*.EQ-5D:0.6,0.04,0.11*,0.12*,0.17*.MTDLP実行度:2.19*,2.2*,-,3.7*,5.24*.MTDLP満足度:2.64*,1.48,-,3.63*,4.32*.
【考察】
本研究は前後比較のケースシリーズ研究であり例数が少ないため,今回の介入による効果をすぐに一般化することは難しいが,ADOCとMTDLPを用い,「活動と参加」に焦点を当てた訪問リハによる介入は,生活機能を改善させ,獲得したい作業の実行度,満足度,およびQOLを向上させたことから,地域在住の脳卒中者のその人らしい生活を支援できる可能性があると考える.ADOCは視覚的なツールであるために失語症や高次脳機能障害のある脳卒中者でも作業選択しやすく,また,MTDLPを用いることで,作業療法士の視点が「作業」や「活動と参加」に向くため,ADOCとMTDLPを用いた介入は,特に生活場面で介入を行う訪問リハにおいて効果を発揮すると思われる.
地域包括ケアシステムが導入され,これからの訪問リハビリテーション(訪問リハ)に求められている役割は,対象者の「活動と参加」に焦点を当て,一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みを提供して,その人らしい生活を支援することである.そこで我々は,脳卒中者を対象として,Aid for Decision-making in Occupation Choice(ADOC)と生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用いて,対象者の獲得したい作業を目標とした訪問リハによる介入を行い,経過を調査した.
【方法】
本研究のデザインは前後比較によるケースシリーズ研究である.対象は介護保険による訪問リハを新規に開始した地域在住の脳卒中者とした.介入は従来の訪問リハにADOCとMTDLPを用いる方法で,単施設で実施した.訪問リハ初回から2週間以内に各種の評価と,ADOCにて対象者の獲得したい作業の選択を行い,MTDLPを用いて介入プログラムを策定し介入を開始した.評価は3か月に1回実施し最長12か月実施した.評価項目は,身体機能:Short Physical Performance Battery(SPPB),認知機能:Mini-Mental State Examination-J(MMSE-J),日常生活自立度:Barthel Index(BI),応用的日常生活動作:Frenchay Activities Index(FAI),介護負担:日本語版Zarit介護負担尺度(J-ZBI),健康関連QOL :Euro QOL 5 dimension(EQ-5D),およびMTDLPの目標とした作業の実行度,満足度とした.MTDLPの実行度,満足度は開始時と訪問リハ終了時もしくは12か月時に評価した.解析方法は,各評価項目の開始から3か月ごとの変化を確認するために,一般化線形混合モデルを用いた.危険率0.05未満を統計学的に有意とした.尚,本研究は,当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者全員から文書による同意を得た.
【結果】
研究参加者は11名でありすべて解析対象とした.対象者の基本属性は,平均年齢±標準偏差:74.4±11.1,性別:男性2名・女性9名,発症からの訪問リハ開始までの平均日数±標準偏差:121.1±47.2,介護度:要支援2;1名,要介護2;4名,要介護3;4名,要介護4:2名であった.各評価結果の開始時,3か月,6か月,9か月,12か月における経過を以下に示した(数値は,順番に開始時の値の推定値,各月の開始時からの変化量の推定値を示し,*が付いているものは統計的に有意であることを示している).SPPB:3.64*,1.15,0.52,0.9,-0.91.MMSE-J:26.89*,0.56,0.77,1.2*,0.81.BI:69.68*,2.87,6.83*,9.96*,16.05*.FAI:4.4*,4.03*,3.18*,4.83*,6.15*.J-ZBI:18.83*,-4.5,-7.86*,-7.24*,-11.11*.EQ-5D:0.6,0.04,0.11*,0.12*,0.17*.MTDLP実行度:2.19*,2.2*,-,3.7*,5.24*.MTDLP満足度:2.64*,1.48,-,3.63*,4.32*.
【考察】
本研究は前後比較のケースシリーズ研究であり例数が少ないため,今回の介入による効果をすぐに一般化することは難しいが,ADOCとMTDLPを用い,「活動と参加」に焦点を当てた訪問リハによる介入は,生活機能を改善させ,獲得したい作業の実行度,満足度,およびQOLを向上させたことから,地域在住の脳卒中者のその人らしい生活を支援できる可能性があると考える.ADOCは視覚的なツールであるために失語症や高次脳機能障害のある脳卒中者でも作業選択しやすく,また,MTDLPを用いることで,作業療法士の視点が「作業」や「活動と参加」に向くため,ADOCとMTDLPを用いた介入は,特に生活場面で介入を行う訪問リハにおいて効果を発揮すると思われる.