第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-12] ポスター:地域 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-12-3] 退院前後の訪問リハビリテーションにおける目標内容の変化の推移

高瀬 駿, 佐藤 恵美, 渡辺 佳子, 鴨川 孝介, 水落 和也 (川崎協同病院リハビリテーション科)

【はじめに】在宅でのリハビリテーションの介入内容として,機能訓練を重視した内容が多い傾向が示されている.この解決策として活動・参加レベルの目標設定を推進する必要性が指摘されている(厚生労働省,高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書,2015).また脳卒中患者の目標設定に関して,機能面に比重が置かれやすい傾向が示されているが(Rice DB,2017),このような目標内容に関する報告は本邦では少ない.リハビリテーションの目標と介入内容は双方が活動・参加レベルに向けて設定されるべきであるが,現状のリハビリテーションがこのような方向性を示せているかには疑問が残る.
【目的】目標が心身機能・身体構造に偏っていないか,活動・参加レベルの目標における具体的なニーズはどのような傾向が示されているかを明らかにする目的で解析した.
当院回復期リハビリテーション病棟退院後に,訪問リハビリテーション介入を行った7例に対して,リハビリテーション総合実施計画書の記載内容を分析したため,ここに報告する.
【方法】後方視的観察研究にて調査.2021年4月から2023年1月の期間で,退院後に当院訪問リハビリテーションを利用した7例を対象とした.当院退院前最終月の目標設定内容と,訪問リハビリテーション開始時に設定した目標設定内容をリハビリテーション総合実施計画書から抽出.ICFにおける心身機能・身体構造にあたる目標と,活動・参加にあたる目標の総数を集計した.また目標内容を活動・参加レベルの評価指標であるカナダ作業遂行測定(以下COPM)の分類を参考にセルフケア(身の回りのことや移動面),仕事(家事等),レジャー(余暇活動)にて分類した.なお本報告は当院倫理委員会の承認を得ており,発表に際して対象者へ書面での説明と同意を得ている.
【結果】対象の内訳は脳血管疾患5例,運動器疾患1例,廃用症候群1例.男性6例,女性1例.年齢は67.71±13.45歳.障害高齢者の日常生活自立度はA1(介助により外出可能)2名,B1(食事,排泄をベッドから離れて行う)4名,B2(車いす移乗介助)1名であった.退院前目標では66個の目標が抽出され,うち心身機能・身体構造に該当する目標49個,活動・参加にあたる目標17個であった.活動・参加目標の内訳はセルフケア6/17個,仕事1/17個,レジャー0/17個,その他10/17個.具体的な目標内容として,日常生活自立度A1はセルフケア「トイレ動作,屋内移動,階段」,B1はセルフケア「屋内シルバーカー歩行自立,屋外シルバーカー歩行見守り,杖歩行軽介助,屋内移動軽介助レベル」,仕事「軽負荷のIADL一部獲得」,B2はセルフケア「トイレ動作の安定性向上,屋内伝い歩行レベル」が記録されていた.
退院後目標では45個の目標が抽出されており,うち心身機能・身体構造に該当する目標17個,活動・参加にあたる目標28個であった.活動・参加目標の内訳はセルフケア16/28個,仕事2/28個,レジャー4/28個,その他6/28個であった.具体的な目標内容として,A1はセルフケア「自宅内トイレまで自身で移動し排泄ができる」,B1はセルフケア「近所の美容院まで介助者と二人で出かけられるようになる」,B2はセルフケア「近所のコンビニまで一人で買い物に行けるようになる」等が記載されていた.
【考察】退院後は活動・参加レベルの目標が一定数設定される点,セルフケアの未自立が継続した問題となりうる点が示唆された.訪問リハビリテーションでは活動・参加への支援が期待されるが,入院時から継続した課題への対応が最優先となりうる事は今後の課題である.限界として1施設少数例の報告である点をふまえる必要がある.