第57回日本作業療法学会

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[PN-12] ポスター:地域 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-12-5] 回復期病棟退院後,生活期の訪問リハビリテーションにて自動車運転評価に関わった一症例

川上 紘司, 星山 望, 北山 朋宏 (社会福祉法人 こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部)

【はじめに】
近年,脳卒中患者に対して自動車運転再開を目指すための支援は増加傾向である.そして,山陰は地域特性からも日常生活において自動車運転の必要性は高い.当院の回復期病棟在院時の院内自動車運転評価の結果にて自動車学校での適性評価まで至らなかったが,退院後に訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)で再度自動車運転評価を行った一症例を経験したので報告する.本報告に際し,当院倫理委員会及び本症例,ご家族に説明し同意を得ている.
【事例紹介】
60歳代男性で要支援1.X年Y月Z日左視床出血を発症しA病院に救急搬送.保存的治療にて入院加療となり,Z+50日にリハビリテーション(以下,リハ)目的にて当院の回復期病棟に入院.当院の回復期リハでは,自動車運転評価として神経心理学的検査と簡易自動車運転シュミレーター(以下,SiDS)を実施している.さらに,院内評価の結果により,主治医の判断にて自動車学校の適性評価を行っている.Z+70日,院内での神経心理学的検査とSiDSは主に注意障害の影響が強く,自動車学校での適性評価は困難と判断,見送りとなった.その後,日常生活動作は自立となり自宅退院, 軽度失語や注意障害は残存しているが,退院後は運動や趣味活動など取り組まれていた.Z+200日,当院の主治医,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)に,かかりつけ医,対象者より自動車運転再開の相談がある.主治医の判断にて,訪問リハでの自動車運転評価の為の介入開始となる.
【評価】
訪問リハではSiDSの実施は困難であり,当院にて定めている神経心理学的検査を実施.終了後, 当院の神経心理学的検査の判定基準において不可項目が見られたが,対象者,ご家族の強い希望や人格も踏まえ主治医と相談し,今回は自動車学校での適性評価も実施した.事前に自動車学校へ情報提供を行い,担当の作業療法士も同席,実車評価等を中心に実施.
【結果】
当院の神経心理学的検査および自動車学校の適性評価において,状況変化や複数同時作業に対する反応の速さや正確性についての遅れやムラが見られ,総合判定は再開不可だった.評価が終了し,主治医,MSW,担当作業療法士,対象者,ご家族と面談を実施.自動車運転再開は不可と判断し延期,訪問リハは終了となるが,通所リハ利用を提案し,当院の通所リハを利用となる.通所リハへは経過を共有し,高次脳機能訓練や自主訓練指導などの関わりを申し送りした.
【考察】
生活期の対象者に対し,当院および自動車学校での適性評価を実施したが,今回は総合的な判断で自動車運転再開とはならなかった.加藤(2010)は,自動車運転に必要な認知機能としては,注意機能や視空間認知機能が重要視されると述べており, 対象者は,状況変化や複数同時作業に対する反応や正確性についての遅れやムラが見られ,注意障害の後遺症があると見られた.また,訪問リハでのSiDSは行えなかったが,自動車学校とも連携を図り,課題やリスク面などを明確にすることで,対象者やご家族も今後また自動車運転再開を目指す上で現状把握ができた.
永島(2019)は,病院等の医療機関だけではなく,医療保険の枠組みだけではない領域での支援の幅が広がることで,対象者の在宅生活をより良いものにすることに貢献できると述べている.在宅支援では住まいによって利用できる社会資源や評価体制等に限りがある.入院時や外来での自動車運転支援が受けられない場合においても,介護保険領域で主治医を中心に適切な評価・情報共有や連携が整えられれば,生活期でも適正な自動車運転支援が行えると思われる.