[PN-4-10] 回復期リハビリテーション病院と在宅を繋ぐシームレスな作業療法介入に向けた情報提供シートの臨床的使用感
【序論】病院と在宅の作業療法がシームレスに対象者へ提供される為には,各領域のOTRが「在宅移行後も作業療法が継続される上で重要」と認識する情報が共有されるべきである.我々は大阪府作業療法士会の学術部指定研究(2019~2022)で,各領域のOTRが重視する情報を分析により絞り込んだ,オリジナルの作業療法サマリー「Summary for seamless occupational therapy at the convalescent hospital and at home Osaka-model (以下,SOHO)」(全11項目)を開発した(大阪府作業療法ジャーナルin press).本研究では,実践的な運用に向けたSOHOの有用性と課題検証を目的として,書き手と読み手それぞれの使用感についてアンケートを実施したので,それらの結果に若干の考察を加えて報告する.
【方法】実践事例は,大阪府下の回復期リハビリテーション病院で勤務するOTR(以下,回復期OTR)2名と,訪問リハビリテーションで勤務するOTR(以下,訪問OTR)1名である.回復期OTRには「担当患者の退院時情報提供書を,SOHOを使用して作成すること」を,訪問OTRに対しては「SOHOを用いて提供された情報を閲覧した上で初回訪問を行うこと」を依頼した.使用感については,双方のOTRにGoogleフォームを使用したアンケートへの回答を依頼した.なお,本研究は共著者所属の倫理委員会で承認を得ているとともに,実践事例及び担当患者に研究内容を説明し,同意書を用いて研究と発表の同意を得ている.
【結果】回復期OTRが記載した2事例のSOHOでは,「合意形成した退院後の目標」「大切にしている作業」「生活歴」の項目で,記載内容の具体性に差が生じていた.また,「自宅における環境設定」「医学的検査データにおける特記事項」は1事例が「特記事項無し」との記載であったが,その他の項目は内容が記載されていた.アンケート回答結果では,回復期OTRは「情報不足は感じない」「在宅で作業療法が継続される場合,(SOHOは)ある程度役に立つ」「作業療法の専門性が反映された構成に,ある程度なっていると思う」といった点で回答が一致していた.訪問OTRは「不要と感じる情報は無いが,留意点や服薬情報はあった方がいい」「本人の思いが理解しやすくプランが立てやすい」「生活状況や環境設定,生活課題が理解しやすい」という回答であった.また,2名の回復期OTRから「医学的検査データにおける特記事項は不要」という意見があったことに対し,訪問OTRからは「検査データがあると予後予測やリスク管理がしやすい」という項目の必要性を示す意見が確認された.
【考察】アンケート回答結果から,情報項目について「不足は感じない」等のポジティブな回答が多かったことから,SOHOには,病院から在宅への移行時に回復期と訪問の両OTRが共通して重視する項目が過不足無く設けられていると考えられる.一方,回復期OTR2名のそれぞれのSOHOの記載内容は「合意形成した退院後の目標」「大切にしている作業」「生活歴」では,記載内容の具体性に違いが認められた.これら項目は,担当したOTRのリーズニングが反映されやすい項目であり,作業療法の専門性を伝える重要な項目であると考えられる.また,これらOTRのリーズニングが反映される項目を充実させたことで,開発目的である「病院と在宅における作業療法のシームレス化」に寄与できる可能性が示唆されたと考えられる. 現在,SOHOは,大阪府作業療法士会ホームページでの公開を予定している.それと同時に,SOHOの有用性についても分析を進めており,今後は,分析結果や学会ワークショップ等で収集した意見をもとに,シートの修正や適応幅の拡大についても検討を進める計画である.
【方法】実践事例は,大阪府下の回復期リハビリテーション病院で勤務するOTR(以下,回復期OTR)2名と,訪問リハビリテーションで勤務するOTR(以下,訪問OTR)1名である.回復期OTRには「担当患者の退院時情報提供書を,SOHOを使用して作成すること」を,訪問OTRに対しては「SOHOを用いて提供された情報を閲覧した上で初回訪問を行うこと」を依頼した.使用感については,双方のOTRにGoogleフォームを使用したアンケートへの回答を依頼した.なお,本研究は共著者所属の倫理委員会で承認を得ているとともに,実践事例及び担当患者に研究内容を説明し,同意書を用いて研究と発表の同意を得ている.
【結果】回復期OTRが記載した2事例のSOHOでは,「合意形成した退院後の目標」「大切にしている作業」「生活歴」の項目で,記載内容の具体性に差が生じていた.また,「自宅における環境設定」「医学的検査データにおける特記事項」は1事例が「特記事項無し」との記載であったが,その他の項目は内容が記載されていた.アンケート回答結果では,回復期OTRは「情報不足は感じない」「在宅で作業療法が継続される場合,(SOHOは)ある程度役に立つ」「作業療法の専門性が反映された構成に,ある程度なっていると思う」といった点で回答が一致していた.訪問OTRは「不要と感じる情報は無いが,留意点や服薬情報はあった方がいい」「本人の思いが理解しやすくプランが立てやすい」「生活状況や環境設定,生活課題が理解しやすい」という回答であった.また,2名の回復期OTRから「医学的検査データにおける特記事項は不要」という意見があったことに対し,訪問OTRからは「検査データがあると予後予測やリスク管理がしやすい」という項目の必要性を示す意見が確認された.
【考察】アンケート回答結果から,情報項目について「不足は感じない」等のポジティブな回答が多かったことから,SOHOには,病院から在宅への移行時に回復期と訪問の両OTRが共通して重視する項目が過不足無く設けられていると考えられる.一方,回復期OTR2名のそれぞれのSOHOの記載内容は「合意形成した退院後の目標」「大切にしている作業」「生活歴」では,記載内容の具体性に違いが認められた.これら項目は,担当したOTRのリーズニングが反映されやすい項目であり,作業療法の専門性を伝える重要な項目であると考えられる.また,これらOTRのリーズニングが反映される項目を充実させたことで,開発目的である「病院と在宅における作業療法のシームレス化」に寄与できる可能性が示唆されたと考えられる. 現在,SOHOは,大阪府作業療法士会ホームページでの公開を予定している.それと同時に,SOHOの有用性についても分析を進めており,今後は,分析結果や学会ワークショップ等で収集した意見をもとに,シートの修正や適応幅の拡大についても検討を進める計画である.