第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

地域

[PN-5] ポスター:地域 5

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-5-11] 壮年期から作業療法士が関わることの必要性

中嶋 有亮 (Coffee House Sheep)

【序論】
地域に身近な作業療法を模索していた筆者は,平成26年に閉店した前橋市中央通り商店街にあるCoffee House Sheep(コーヒーハウスシープ)で,令和3年に屋号を引き継ぎ,喫茶店経営を軸とする活動を行うことになった.現在では,身体的な悩みの相談やアドバイスなどを行う「からだメンテナンス」,前橋市社会福祉協議会の依頼を受けた無料の「まちなか健康体操サロン」,難聴当事者主催の「難聴カフェ」,地域生活援助サービス「ごようきき」等,地域に根ざした活動を行っている.
喫茶店利用客は近隣の会社員や昔からの常連客,商店街の店主や商業イベント利用客などだが,特に壮年期の方からの身体の悩み相談が多く,「からだメンテナンス(以下,本サービス)」の利用が多い.喫茶店という場所を活かしながら,本サービスと地域での作業療法士としての関わりを考察する.
【方法】
本サービスは1回40分の予約制個別サービスで,料金は都度払い4’400円,月4回の週1コースが月額15’000円,午前11時から18時までの喫茶店営業前後の時間である.対象は肩こり・腰痛,整形外科疾患,生活動作障害,自動車運転に不安のある方等である.今回は,令和3年3月から令和4年12月までの本サービス利用者25名(女性16名,男性9名,年齢57.9±12.3歳)を対象とした.利用に至った経緯や動機の聴取,年齢構成,主訴別の年齢平均を算出した.基本属性を性別,年齢,主訴,手術歴,通院歴とし,Microsoft365Excelの相関係数を用いて各基本属性の関連性を分析した.本発表への同意はサービス開始時に同意書にて署名を頂き得た.
【結果】
利用に至った経緯は喫茶店利用10名,チラシ等の広告9名,本サービス利用者の紹介6名であった.動機は,物理療法で改善しなかった,作業療法士への信用あり,身体の状態の説明に納得感があった,お茶をしながら室内の様子を見られ安心,自宅又は職場が近い等であった.週1コースでの継続利用は6名である(令和4年12月時点).年齢構成は46-56歳で9名と最も多く,66-76歳7名,56-66歳4名,36-46歳2名,76-86歳2名,6-16歳1名であった.主訴別の年齢平均は,肩疼痛7名で63.0歳,腰痛5名で59.0歳,疲労感5名で49.4歳,膝疼痛2名で59.5歳であった.その他主訴は筋力低下,骨折後,身体が固い,発達,免許更新に伴う認知機能検査の練習であった.基本属性の関連性は,性別(女性,男性)と通院歴(あり,なし)に正の相関(r=0.61)を認めた.
【考察】
昨今,健康関連の情報はSNSや動画配信サービス等からも手軽に入手できるが,自分の状態にあった情報かを判断する事は難しい.その為,身体の悩みについて気軽に相談できる場所は,自己の健康管理の為にも重要である.
本サービス利用者は6割が壮年期であり,経緯は喫茶店利用と紹介で6割であった.友人と来店し本サービスを知った女性,就業の合間に利用する男性,カウンターで珈琲を飲みながら,悩みを打ち明ける単身男性等,喫茶店であるが故に打ち解け,本サービスへ繋がる事が多かった.また,本サービスから健康体操サロンへ参加し民生委員と顔見知りになった,喫茶店利用から難聴カフェへ参加し他の支援団体と繋がった等,関係性が拡大していく様子もある.
喫茶店という場所を活かし,作業療法士の視点で質の良い情報や地域と関係を持つキッカケを作る事も,壮年期からの健康管理に寄与する社会資源になり得ると考える.