[PN-5-7] 地域支え合い型ドライバー養成研修は地域住民にどのような変化をもたらすか
【はじめに】
近年超高齢化社会の拡大による,外出難民や買い物難民の増加が社会問題となっている中,どのように地域の移動を支援するかが大きな課題となっている.東京都町田市では,互助でのドライバーとして移動支援の役割を担う地域住民を養成,認定する「町田市地域支え合い型ドライバー養成研修」を2020年から開催している.第一報では受講者へのインタビューから,研修が他者交流や社会参加を促進し,地域貢献に関わることで高齢期の生活をより充実したものへと発展させるという可能性が示唆された.本研究の目的は,研修を通して受講者へどのような役割の変化をもたらすかを,アンケート調査と追跡調査から明らかにすることである.
【方法】
2020〜2022年に計4度開催された「町田市地域支え合い型ドライバー養成研修」を受講した,町田市在住の市民60名を対象とし,研修における事前アンケート調査と,研修後の追跡調査を実施した.事前アンケートの内容として,受講者の身体状況,日常の外出や行動について,日常生活,参加している地域の会やグループについて,自身と周りの人の助け合いについて,健康感,家庭環境等について調査を行った.追跡調査の内容として,市内の各高齢者支援センターが研修後の各年度末に聞き取りを行った,現在従事している,または今後担う予定の地域での役割等,活動経過の調査結果を参考とした.倫理的配慮として,受講者には本研究の主旨を書面と口頭にて説明し同意を得た.
【結果】
集計の結果,有効回答数は56名(回答率93.3%)であった.受講者の男女割合は,男性43名(77%),女性13名(23%)と男性が多くを占めた.平均年齢は66.4±8.8歳であった.事前アンケートでは,「外出する頻度」という問いに対し,88%が「週に4回以上」と答えた.「自治会やサロン等の地域活動への参加頻度」では,それぞれ「参加していない」という割合が一番多く,「収入のある仕事に就いているか」という問いに対し,56%が「就いている」と答えた.「心配事や愚痴を聞いてくれる人,聞いてあげる人」「看病や世話をしてくれる人,してあげる人」ではそれぞれ「配偶者」が一番多い割合であった.追跡調査では,受講者の59%が移動支援に関する役割に従事,または従事予定であり,2021年に関しては,聞き取りを行った17名の受講者全員が移動支援に従事,または従事予定であった.
【考察】
池田ら(2022)は「男性よりも女性が地域活動に参加する傾向が確認された」と述べ,さらに「地域住民との交流頻度も女性で多い」と述べており,女性に比べ男性の方が地域活動に参加しない傾向が背景にある.しかしながら,本研修は男性の参加率が非常に多い結果となり,ドライバーとして地域の移動支援の役割を担うことは,男性の地域活動への参加誘因の一助となると考える.さらに追跡調査にて,受講者はドライバーとしての役割に従事する割合が高い傾向にあることも分かった.伊藤ら(2019)は「高齢者は社会参加割合が高いと要支援・介護認定率が低い」と述べていることからも,高齢期の社会参加を促進することは,介護認定率の低下による社会保障費の削減に繋がる可能性があり,自治体の施策としての有用性も示唆された.以上より,地域在住の高齢者が地域支え合い型ドライバー養成研修に参加することで,男性を中心に地域活動への参加を促しながら,介護予防や社会保障費の削減に繋がる等,地域住民と自治体両面にとって有用な取り組みとなっているという可能性が新たに示唆された.
近年超高齢化社会の拡大による,外出難民や買い物難民の増加が社会問題となっている中,どのように地域の移動を支援するかが大きな課題となっている.東京都町田市では,互助でのドライバーとして移動支援の役割を担う地域住民を養成,認定する「町田市地域支え合い型ドライバー養成研修」を2020年から開催している.第一報では受講者へのインタビューから,研修が他者交流や社会参加を促進し,地域貢献に関わることで高齢期の生活をより充実したものへと発展させるという可能性が示唆された.本研究の目的は,研修を通して受講者へどのような役割の変化をもたらすかを,アンケート調査と追跡調査から明らかにすることである.
【方法】
2020〜2022年に計4度開催された「町田市地域支え合い型ドライバー養成研修」を受講した,町田市在住の市民60名を対象とし,研修における事前アンケート調査と,研修後の追跡調査を実施した.事前アンケートの内容として,受講者の身体状況,日常の外出や行動について,日常生活,参加している地域の会やグループについて,自身と周りの人の助け合いについて,健康感,家庭環境等について調査を行った.追跡調査の内容として,市内の各高齢者支援センターが研修後の各年度末に聞き取りを行った,現在従事している,または今後担う予定の地域での役割等,活動経過の調査結果を参考とした.倫理的配慮として,受講者には本研究の主旨を書面と口頭にて説明し同意を得た.
【結果】
集計の結果,有効回答数は56名(回答率93.3%)であった.受講者の男女割合は,男性43名(77%),女性13名(23%)と男性が多くを占めた.平均年齢は66.4±8.8歳であった.事前アンケートでは,「外出する頻度」という問いに対し,88%が「週に4回以上」と答えた.「自治会やサロン等の地域活動への参加頻度」では,それぞれ「参加していない」という割合が一番多く,「収入のある仕事に就いているか」という問いに対し,56%が「就いている」と答えた.「心配事や愚痴を聞いてくれる人,聞いてあげる人」「看病や世話をしてくれる人,してあげる人」ではそれぞれ「配偶者」が一番多い割合であった.追跡調査では,受講者の59%が移動支援に関する役割に従事,または従事予定であり,2021年に関しては,聞き取りを行った17名の受講者全員が移動支援に従事,または従事予定であった.
【考察】
池田ら(2022)は「男性よりも女性が地域活動に参加する傾向が確認された」と述べ,さらに「地域住民との交流頻度も女性で多い」と述べており,女性に比べ男性の方が地域活動に参加しない傾向が背景にある.しかしながら,本研修は男性の参加率が非常に多い結果となり,ドライバーとして地域の移動支援の役割を担うことは,男性の地域活動への参加誘因の一助となると考える.さらに追跡調査にて,受講者はドライバーとしての役割に従事する割合が高い傾向にあることも分かった.伊藤ら(2019)は「高齢者は社会参加割合が高いと要支援・介護認定率が低い」と述べていることからも,高齢期の社会参加を促進することは,介護認定率の低下による社会保障費の削減に繋がる可能性があり,自治体の施策としての有用性も示唆された.以上より,地域在住の高齢者が地域支え合い型ドライバー養成研修に参加することで,男性を中心に地域活動への参加を促しながら,介護予防や社会保障費の削減に繋がる等,地域住民と自治体両面にとって有用な取り組みとなっているという可能性が新たに示唆された.