第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-6-10] ADOC-SとCOPMを併用した事により買い物支援に繋げた学童期ASD児の一例

廣澤 健太, 松本 渉, 三小田 彰子, 鳥内 亮平, 多江 和晃 (LE在宅・施設訪問看護・リハビリステーション)

【はじめに】
小児に対する目標設定を支援するツールとしてCanadian Occupational Performance Measure(以下,COPM)を使用されているケースはよく散見されるが,Aid for Decision making Occupation Choice For School (以下,ADOC-S)と併用し目標設定している報告は数少ない.今回ADOC-SとCOPMの併用により買い物支援の目標が定められた.その目標にアプローチすることでIADLの拡大が見られた為,以下に報告する.本報告については,母親に同意を得ている.
【方法・経過】
8歳男児.診断名は自閉スペクトラム症/障害(以,ASD).現病歴はX年Y月に手先の巧緻性低下を認め,訪問リハビリ介入開始.X年+4に前任のOTRから引継ぎにて介入開始.作業療法評価(X年+4)はADOC-S 勉強:(書字,計算),その他:(買い物)COPM勉強:重要度6/10遂行度5/10満足度5/10買い物:重要度4/10遂行度5/10満足度5/10 GMFCS-E-RレベルⅠ,過去知能検査でIQ-2歳程度の遅れがあった.介入当初,母親のHOPEとして「計算や書字の支援をしてほしい」と目標が漠然だった為,COPMを用いて家族と本人へHOPEを聴取した.「困っている事があるはずなのに頭に浮かんでこない」との発言がみられた.その為ADOC-Sを用いて生活上の問題を視覚化し,問題を重要度・遂行度・満足度をCOPMで数値化した.その際に「大きくなったら買い物が出来るようになってもらいたい」と発言がみられた.本人にもHOPEを聞くと「アイスを自分で買いたい」と発言がみられた.上記の要望が見られた為,本人の今後の生活段階を考え買物支援に繋がる学習支援を実施した.
リハビリの介入頻度はOTとSTが隔週ずつ週1回60分訪問した.プリントを使用し数字の概念や繰り上がりの足し算,引き算等を実施.掛け算は可能だったが,暗算として覚えており,実生活には繋がっていなかった.介入当初は1桁や2桁の数の概念が不明瞭であり,問題数を多くすると後半につれて計算ミスが見られ注意散漫になる様子がみられた.その為,出題数を10問に絞り,本人が混乱し分からなくなった場合のみ図を利用し計算を行った.2桁の繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算が出来たタイミングで,母親と相談し電卓での計算に切り替えた.ロールプレイを行い,お菓子に札をつけ電卓で計算する訓練を実施.回答出来たら箱に入っているお菓子を食べる事で外的動機づけを促した.また事前に買い物の際,値札のどの位置を見るか写真を見せる事や買い物に行く前に買い物の際に準備する物,道順を書き出す事で行動変容を促した.
【結果】
作業療法評価(X年+5 )はCOPM勉強:遂行度7/10満足度7/10,買い物:遂行度7/10満足度7/10,GMFCS-E-RレベルⅠだった.介入前の様子の変化として母親は「以前より宿題をしている時楽しそうに勉強している.一緒に買い物に行くと値札のどこを見るか教えてくれた場面があった」との発言がみられた.電卓を利用する事で3~4個の商品を計算できるようになったが商品の個数が増えるほど間違えやすく,失敗を保続する場面も見られた.
【考察】
本症例は,学習支援に対する目標が不明確でIADLに繋がっていない状態であった.その為,目標設定の支援ツールを併用して使う事で,本人や家族にとって意味のある作業にアプローチが可能となり,3個以下の買い物が可能となった.また買い物や学習支援に対しCOPMでは遂行度・満足度の数値の変化が見られ,生活の問題に対する母親の満足度の向上に繋がったと考える.今後の課題としてASD児は汎化しにくい特性を持ち合わせている為,一場面ではなく買い物する場所や買う物,値札の位置等,様々な評価を行っていく.また困難さが見られる事は代償手段や周囲の理解を求めながら活動・参加の拡大を図る.