[PN-7-11] 支援体制が移行しづらい状態にあった特別支援児とその家族への共生的支援
【はじめに】厚生労働省は,地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制の構築を重視している.そのためには,サービスごとの縦割りという関係を超え,制度の狭間や社会的孤立のケースを確実に支援へ繋げていく必要がある(原田,2021).今回,特別支援教育を受ける児(以下,本児)を育てる母親が資格取得のために本児の預け先を探したが,教育と福祉の受け渡しにずれが生じ,主に定型発達児童が生活する放課後児童クラブ(以下,クラブ)が特別保育として本児を受け入れることになった.作業療法士(以下,OT)や多職種で協働し支援した結果,母親の資格取得,本児の特別保育終了後の福祉サービス利用につながったので,ここに報告する.なお,発表について家族に同意を得ている.
【対象】11歳男児,診断名は中等度知的障害・自閉スペクトラム症.田中ビネーⅤにてDQ=38.療育手帳Bを取得しA支援学校小学部へ在籍.身辺動作は自立,対人意識,発語,言語理解に著明な遅れ,他者への攻撃,脱走歴あり.家族構成は両親・本児・妹の4人家族.妹は難病診断を受け通院している.本児の就学時に相談支援専門員・日中一時支援事業の利用を開始したが,感情のすれ違いが生じ母親から日中一時支援を利用中止していた.母親の資格取得に関する講座の受講が新型コロナウイルス感染症の影響をうけ長期休みに重複したため,日中一時支援の利用再開に向けて動き出した.しかし母親が焦燥感を抱いて各所に働きかけ,情報が錯綜し利用に繋がらない状態であった.
【方法】X年Y月の長期休み開始から20日クラブを利用.クラブ所属児童約30名.本児の関わり・環境づくりを目的に家族と事前面談,家庭訪問,学校訪問を実施し,①一人で落ち着ける環境の確保,②外遊びや体を動かすことによるクールダウン,③視覚支援の導入が検討された.OTは教材作成やクラブでの直接支援9回および助言を通した間接支援20回を実施.直接支援では本児の関わりや他者交流の繋ぎ役を実施した.また,本児の叩く・脱走行為には1-2回の声かけ,部屋を出る際は言葉で伝える,感覚刺激を取り入れた関わりで褒める対応を一貫した.家族に同意を得てOT・放課後児童支援員(以下,支援員)・児童発達支援管理責任者・大学教員・ヘルパーが参加したSNSグループを作成し,本児の支援を模索した.特別保育終了間際に,家族・SNSグループ・特別支援コーディネーター・相談支援専門員とオンライン会議を実施.OTは本児のクラブでの様子・支援員の関わり・多職種の支援の提案をもとに,本児のサポートブックを作成した.
【結果】部屋の脱走,他者への叩く行為は減少.支援員やOTを介して,本児と子どもたちが風船バレーや遊具遊びを通して交流していた.また,子どもたちが「どうやったら過ごしやすくなるかな?」と考え,本児の好きなキャラクターを描き視覚支援を始めた.特別保育終了後は,日中一時支援事業の利用へと繋がった.そして,母親は資格取得ができ現在は就労へと繋がっている.
【考察】日本作業療法士協会は,地域共生社会の構築に向け制度間の連携,地域の特性・資源の把握と利用を通して地域づくりへの積極的参加を求めている.今回,一時的に制度の狭間にて支援体制が移行しづらい状況にあった家族に対してクラブを中心に迅速に多職種で協働し,専門性を活かした支援の提案がなされた.そのため,多角的な視点で支援が出来たと考える.また,OTが本児と他児の繋ぎ役を行うことで,子どもたちが同じ場で過ごし多様な価値観に触れ合える経験も生じた.世代や分野を超えて支援を模索し,実行したことが本児と家族の自分らしい地域生活へと繋がったと考える.
【対象】11歳男児,診断名は中等度知的障害・自閉スペクトラム症.田中ビネーⅤにてDQ=38.療育手帳Bを取得しA支援学校小学部へ在籍.身辺動作は自立,対人意識,発語,言語理解に著明な遅れ,他者への攻撃,脱走歴あり.家族構成は両親・本児・妹の4人家族.妹は難病診断を受け通院している.本児の就学時に相談支援専門員・日中一時支援事業の利用を開始したが,感情のすれ違いが生じ母親から日中一時支援を利用中止していた.母親の資格取得に関する講座の受講が新型コロナウイルス感染症の影響をうけ長期休みに重複したため,日中一時支援の利用再開に向けて動き出した.しかし母親が焦燥感を抱いて各所に働きかけ,情報が錯綜し利用に繋がらない状態であった.
【方法】X年Y月の長期休み開始から20日クラブを利用.クラブ所属児童約30名.本児の関わり・環境づくりを目的に家族と事前面談,家庭訪問,学校訪問を実施し,①一人で落ち着ける環境の確保,②外遊びや体を動かすことによるクールダウン,③視覚支援の導入が検討された.OTは教材作成やクラブでの直接支援9回および助言を通した間接支援20回を実施.直接支援では本児の関わりや他者交流の繋ぎ役を実施した.また,本児の叩く・脱走行為には1-2回の声かけ,部屋を出る際は言葉で伝える,感覚刺激を取り入れた関わりで褒める対応を一貫した.家族に同意を得てOT・放課後児童支援員(以下,支援員)・児童発達支援管理責任者・大学教員・ヘルパーが参加したSNSグループを作成し,本児の支援を模索した.特別保育終了間際に,家族・SNSグループ・特別支援コーディネーター・相談支援専門員とオンライン会議を実施.OTは本児のクラブでの様子・支援員の関わり・多職種の支援の提案をもとに,本児のサポートブックを作成した.
【結果】部屋の脱走,他者への叩く行為は減少.支援員やOTを介して,本児と子どもたちが風船バレーや遊具遊びを通して交流していた.また,子どもたちが「どうやったら過ごしやすくなるかな?」と考え,本児の好きなキャラクターを描き視覚支援を始めた.特別保育終了後は,日中一時支援事業の利用へと繋がった.そして,母親は資格取得ができ現在は就労へと繋がっている.
【考察】日本作業療法士協会は,地域共生社会の構築に向け制度間の連携,地域の特性・資源の把握と利用を通して地域づくりへの積極的参加を求めている.今回,一時的に制度の狭間にて支援体制が移行しづらい状況にあった家族に対してクラブを中心に迅速に多職種で協働し,専門性を活かした支援の提案がなされた.そのため,多角的な視点で支援が出来たと考える.また,OTが本児と他児の繋ぎ役を行うことで,子どもたちが同じ場で過ごし多様な価値観に触れ合える経験も生じた.世代や分野を超えて支援を模索し,実行したことが本児と家族の自分らしい地域生活へと繋がったと考える.