[PN-7-6] 楽しい作業活動を通して生活範囲が拡大した脊髄損傷を呈した一例
【報告の目的】
生活範囲を広げ,社会とかかわりを持つことは,QOLの向上に重要な要素である.しかし,機能障害を呈する状態では,生活範囲を拡大することに消極的になることが多い.今回,訪問リハビリテーション(訪問リハ)において,楽しい作業との関わりから,生活範囲の拡大に繋がった事例を報告する.
【事例紹介】
60代後半の男性(A氏),X年自宅前の木を剪定中に梯子から転落しC6・7の頸椎脱臼骨折となった.急性期病院で治療後,X+33日にリハ目的で転院し,X+212日に寝たきり状態で自宅退院した.妻と2人暮らし,敷地内に長男家族が住んでおり介護に協力的であった.定年まで土木関係の仕事に従事し,定年後は農業や木工作業,妻との日帰り温泉を楽しんで生活していた.本報告に際して本人と家族に説明し,同意を得た.
【作業療法評価】
Frannkelの分類はBであり,Manual Muscle Test(MMT)は左上肢近位3~4,遠位筋2,右上肢近位筋4,遠位筋3,体幹2,下肢0であった.左肩関節は他動屈曲85°であり,可動域制限があった.ベッド上端座位保持は困難であった.機能的自立度評価法(FIM)は57/126点(運動22/91点,認知35/35点)であり,食事以外の動作に介助を要していた.食事の時間以外は寝て過ごしており,妻の介護負担感は大きかった.生活への意欲は低下しており,表出は少なく「何もできない」と消極的であった(Vitaly Index(VI)):4/10点).
【介入の基本方針】
問題点として,機能障害となり,生活の見通しがつかないことで消極的な生活となっていた. 介入の方針として,基本動作練習(寝返り,起居動作),移乗練習から介入し,出来たことを確認しながら関わることとした.並行して,能動的な生活につなげるために,楽しめる作業を提案し,肯定的な作業経験を積む関わりを実施した.
【介入経過】
I期(介入~3か月):寝返り動作が軽介助で可能となり,意思の表出が増える変化が見られた.Ⅱ期 (3~6か月):起居動作が軽介助で実施可能になり,A氏は農業や木工作業が楽しみであったことを担当作業療法士に話すようになった.Ⅲ期 (6~9か月):起居動作は見守りで可能になり,移乗動作はスライディングボードを設置することで可能となった.離床時の活動として木工作業を提案した.はじめは車椅子上で工程数の少ない看板作りから実施し,経過とともに工程数の多い木箱作りに挑戦するようになった.妻はA氏を賞賛する場面がみられ,夫との関わり方に前向きな態度に変化した.
【結果】
ROMは左肩関節屈曲120°となり,MMTは左上肢近位筋5,遠位筋4,右上肢近位筋5,遠位筋5に改善した.体幹,下肢に変化はなかった.ベッド上端座位は支持物を使用し自立した.FIMは63/126点(運動31/91点,認知35/35点)と向上し,移乗動作と車椅子駆動が可能になった.VIは8/10点と向上し,自ら離床することが増加した.家族の協力のもと外出することが増加し,温泉施設をスマートフォンで自ら調べるようになった.
【考察】
訪問リハを通して,ADL,生活への意欲が改善し,生活範囲が拡大した.基本動作の獲得と並行に実施したA氏が楽しめる木工作業は,離床する目的を強化することや,家族と交流する機会を増加させ,生活範囲を広げるきっかけとなった.楽しい作業への関わりは,生活への意欲を引き出し,他者との交流を促進させ,生活範囲を広げる一助になることが示唆された.
生活範囲を広げ,社会とかかわりを持つことは,QOLの向上に重要な要素である.しかし,機能障害を呈する状態では,生活範囲を拡大することに消極的になることが多い.今回,訪問リハビリテーション(訪問リハ)において,楽しい作業との関わりから,生活範囲の拡大に繋がった事例を報告する.
【事例紹介】
60代後半の男性(A氏),X年自宅前の木を剪定中に梯子から転落しC6・7の頸椎脱臼骨折となった.急性期病院で治療後,X+33日にリハ目的で転院し,X+212日に寝たきり状態で自宅退院した.妻と2人暮らし,敷地内に長男家族が住んでおり介護に協力的であった.定年まで土木関係の仕事に従事し,定年後は農業や木工作業,妻との日帰り温泉を楽しんで生活していた.本報告に際して本人と家族に説明し,同意を得た.
【作業療法評価】
Frannkelの分類はBであり,Manual Muscle Test(MMT)は左上肢近位3~4,遠位筋2,右上肢近位筋4,遠位筋3,体幹2,下肢0であった.左肩関節は他動屈曲85°であり,可動域制限があった.ベッド上端座位保持は困難であった.機能的自立度評価法(FIM)は57/126点(運動22/91点,認知35/35点)であり,食事以外の動作に介助を要していた.食事の時間以外は寝て過ごしており,妻の介護負担感は大きかった.生活への意欲は低下しており,表出は少なく「何もできない」と消極的であった(Vitaly Index(VI)):4/10点).
【介入の基本方針】
問題点として,機能障害となり,生活の見通しがつかないことで消極的な生活となっていた. 介入の方針として,基本動作練習(寝返り,起居動作),移乗練習から介入し,出来たことを確認しながら関わることとした.並行して,能動的な生活につなげるために,楽しめる作業を提案し,肯定的な作業経験を積む関わりを実施した.
【介入経過】
I期(介入~3か月):寝返り動作が軽介助で可能となり,意思の表出が増える変化が見られた.Ⅱ期 (3~6か月):起居動作が軽介助で実施可能になり,A氏は農業や木工作業が楽しみであったことを担当作業療法士に話すようになった.Ⅲ期 (6~9か月):起居動作は見守りで可能になり,移乗動作はスライディングボードを設置することで可能となった.離床時の活動として木工作業を提案した.はじめは車椅子上で工程数の少ない看板作りから実施し,経過とともに工程数の多い木箱作りに挑戦するようになった.妻はA氏を賞賛する場面がみられ,夫との関わり方に前向きな態度に変化した.
【結果】
ROMは左肩関節屈曲120°となり,MMTは左上肢近位筋5,遠位筋4,右上肢近位筋5,遠位筋5に改善した.体幹,下肢に変化はなかった.ベッド上端座位は支持物を使用し自立した.FIMは63/126点(運動31/91点,認知35/35点)と向上し,移乗動作と車椅子駆動が可能になった.VIは8/10点と向上し,自ら離床することが増加した.家族の協力のもと外出することが増加し,温泉施設をスマートフォンで自ら調べるようになった.
【考察】
訪問リハを通して,ADL,生活への意欲が改善し,生活範囲が拡大した.基本動作の獲得と並行に実施したA氏が楽しめる木工作業は,離床する目的を強化することや,家族と交流する機会を増加させ,生活範囲を広げるきっかけとなった.楽しい作業への関わりは,生活への意欲を引き出し,他者との交流を促進させ,生活範囲を広げる一助になることが示唆された.