第57回日本作業療法学会

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[PN-7] ポスター:地域 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-7-9] 総合事業移行支援における地域住民主体のサービスへのスムーズな要支援者受け入れに向けた検討

砂川 侑理子1, 藤田 好彦2, 堀田 和司2 (1.茨城県立医療大学保健医療科学研究科, 2.茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科)

【背景】急速な高齢化が進む日本では,社会保障費が増加の一途をたどっている.その抑制施策の一つとして,現在介護施設等で実施されている要支援者向けの介護予防給付サービスを,各自治体が主体となって運営する総合事業へ移行することが勧められている.このことにより,要支援者は介護予防給付サービス以外にも,高齢者サロンをはじめとした,地域に根差した地域住民主体の多様な形態の通いの場に参加することが可能となった.このような取り組みは,要支援者の社会参加・生きがいづくりの場が増加することに加え,社会保障費の軽減,地域の支え合いの体制づくりを促進することができるが,要支援者に対する地域住民主体のサービス事業移行支援の現状と課題は明らかにされていない.
【目的】本研究では,要支援者に対する地域住民主体のサービス事業移行支援の現状と課題について,地域住民主体のサービス運営スタッフの意識の側面に着目し, I県A町で実施されているサービス運営スタッフに対して要支援者に関する意識調査および要支援者を地域で受け入れるにあたっての啓発的な講話を実施し,講話受講前後での要支援者を利用者として受け入れる意識についての変化を明らかにした上で,要支援者に対する地域住民主体のサービス事業移行支援の方法となりうるかを検討することを最終目的とした.今回は,実際に地域で実施する準備段階として,大学生を対象として実施した予備的研究の結果を発表する.なお,本研究は,茨城県立医療大学倫理委員会において承認を受け(承認番号1078)実施している.
【対象】本研究の対象は,A大学の作業療法学科1年生である.予備的研究の対象を1年生としたことは,要支援者に対する専門的な授業を受ける前であること,そのことにより,要支援者に対する知識やイメージ,意識がより地域の高齢者に近いと考えたためである.
【方法】事前調査として,要支援者のイメージ,高齢者サロンへの考え,地域支えあいへの考え,要支援者の高齢者サロン参加について,無記名自記式質問紙調査を実施し,事前調査から約1か月後に,要支援者を地域で受け入れるにあたっての啓発的な講話を行った後,介入後調査を実施した.分析は,事前調査および介入後調査に参加した26名(回答率72.2%)とし,統計学的分析は,それぞれの項目が正規性を認めなかったため,各調査項目についてWilcoxonの符号付順位検定を行った.なお,統計処理にはIBM SPSS Statistics ver28を使用し,有意水準は5%とした.
【結果】事前調査および講話の受講と介入後調査について分析を行った結果,要支援者のイメージ(r=.55,p=.008), 高齢者サロンへの考え(r=.46,p=.022), 地域支えあいへの考え(r=.36,p=.068)について,それぞれ中等度以上の効果量を示し,講話受講前に比べ講話受講後に有効な向上が認められた.
【考察】学生を対象に実施した,要支援者に関する調査および要支援者を地域で受け入れるにあたっての啓発的な講話を実施することにより,要支援者のイメージ,高齢者サロンへの考え,地域支えあいへの考えが良好になることが示唆された.このことにより,今回実施した啓発のための講話は,地域住民主体のサービス運営スタッフを対象とした研究にも活用できるものと考え,今後さらなる研究を進めていきたいと考える.