第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-5] 活動・参加とロコモティブシンドロームの関係に関する文献レビュー

栗田 洋平 (聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部作業療法学科)

【序論】
 ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは,運動器の障害に由来する要介護状態および要介護に至る可能性が高い状態を指す.ロコモは,心身機能・身体構造の関連については集約された知見が認められるが(Ikemoto,2018),活動・参加との関連については,どのような知見が得られているか不明確である.作業は,「対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為」であり(日本作業療法士協会,2019),活動・参加や個人因子にあたる.ロコモと活動・参加の関連についての知見を集約することは,作業療法士がロコモ介入に携わる際の指針になる可能性がある.
【目的】
 本文献レビューの目的は,地域在住高齢者のロコモと活動・参加の関連について概観し,先行的知見を集約することである.
【方法】
 文献検索は,医中誌Web,Pub med,CINAHL,MEDLINE,AgeLineを用いた.検索式は,(ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)) and ((活動(activity)) or (参加(participation)) or (日常生活活動 or ADL(ADL)) or (手段ADL or IADL(IADL)) or ((生活習慣) or (ライフスタイル)(lifestyle)) or (作業(occupation)))とし,Web検索を行った.選定基準は,①オリジナルかつ査読付き雑誌に掲載されている日本語または英語の研究,②対象者が地域在住の65歳以上かつ日常的に他者からの援助を必要としない,③ロコモの有無の比較になっている,④アウトカムに活動・参加,ADL,IADL,生活習慣,ライフスタイル,作業が用いられているとした.選定した文献について,ロコモと活動・参加の関連について抽出し分析した.
【結果】
 1220件の文献が抽出され,適合基準を満たした文献は6件であった.ロコモの臨床判断値は,6文献で5通りが使用されていた.ロコチェックを臨床判断値とした文献からは,移動手段としての自動車の使用,中等度の身体活動量,FAI,LSAが抽出された.立ち上がりテストのロコモ度1を臨床判断値とした文献からは,改訂PGCモラールスケールが抽出された.ロコモ25,立ち上がりテストのロコモ度1を臨床判断値とした文献からは,SOPI,重要活動項目数が抽出された.ロコモ25,立ち上がりテスト,2ステップテストのロコモ度2を臨床判断値とした文献からは,活動・参加と関連のある項目は抽出されなかった.運動器に由来する疾患の有無を臨床判断値とした文献からは,隣人との接触,社会とのつながり,生活満足度,主観的健康観,SF-36が抽出された.
【考察】
 分析の対象となった文献から抽出された背景因子の影響を織り込んだ活動・参加についての尺度は,作業参加の尺度であるSOPIのみである.加齢による機能変化の程度は,個人差が大きく,社会背景や生活習慣などの諸因子が相互に作用しているとされ(勝山,2016),高齢者の特徴を捉える上で,背景因子の影響を踏まえた尺度の選択は必須である.特に,作業は,「個人因子の影響を織り込んだ参加に該当する」とされることもあり(今井,2016),個人因子の影響を織り込んだ尺度を用いた知見を積み重ねることは,作業療法士によるロコモ介入をさらに発展させる可能性がある.今後,背景因子の影響を踏まえた尺度を選択し研究をする必要があると考えられる.
 加えて,それぞれの文献で異なるロコモの臨床判断値が用いられており,それぞれの研究で同一の活動・参加の尺度を用いていた場合も,ロコモの臨床判断値の違いによって,関連の有無が異なる場合が認められた.ロコモ介入で活動・参加に焦点を当てる際は,対象者のロコモの状態を捉え,状態に合わせた介入,起こりうる生活上の課題を予測した関わりが必要であると考えられる.