第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-7] COVID-19流行下における地域在住高齢者の歩行能力,抑うつ気分,作業参加の関連

北澤 一樹, 土屋 謙仕, 古川 智巳, 外里 冨佐江, 宮脇 利幸 (長野保健医療大学保健科学部 作業療法学専攻)

【はじめに】
 COVID-19の流行に伴う社会的制約が高齢者の身体活動の時間を減少させ(Yamada M et al, 2020),精神機能を悪化させる(Ribeiro F et al, 2021)ことが知られている.
 身体活動の低下はうつ病とも関連し(Salman D et al, 2021),うつ病にはバランス,姿勢,歩行の異常が伴う(Murri M B, 2019).これらが作業参加に与える影響は大きいと思われる.
 COVID-19は地域や文化によって流行の時期や感染の大きさが異なるため,様々な地域でその影響を調査する必要がある.
 本研究では,川中島の地域在住高齢者を対象に,Covid-19流行時の歩行能力,抑うつ気分,作業参加の変化と関係を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 対象は長野県長野市川中島町在住の65歳以上の高齢者74名であった.参加者全員には書面による研究の説明を行い,同意を得た.本研究は,長野保健医療大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2020-2).
 参加者は,2022年5月と10月に歩行能力,抑うつ気分と作業参加の状態の評価を実施した.歩行能力の評価は,Two Step Test,Functional Reach Test(FRT),10m歩行であった.抑うつ気分の評価は,老年期抑うつ尺度-短時間版-日本語版(Geriatric Depression Scale –Short Version- Japanese;GDS)を使用した.作業参加の評価は自記式作業遂行指標(Self-completed Occupational Performance Index;SOPI)を使用した.
 2022年5月と10月の2回の歩行能力,抑うつ気分と作業参加のスコアを対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した.
その後,歩行能力の変化量,抑うつ気分の変化量と作業参加の変化量との関係は,Spearmanの順位相関係数分析を行った.有意水準はp<0.05とした.
【結果】
 16名のデータを解析した(男性3名,女性13名,平均年齢77.88(SD=5.93)歳).5ヶ月間の比較の結果,GDSのみが有意に改善した(p=0.03,r=0.53).各評価指標間で有意に関連していた評価項目は,10メートル歩行とTwo step Test(p=0.02,r=0.58),GDSとSOPI(p=0.02,r=0.60)であった.
【考察】
 本研究では,地域在住高齢者を対象にCOVID-19流行による歩行能力,抑うつ気分,作業参加の変化と関連について検討した.
5ヶ月間でGDSのみが有意に改善していた.本研究の測定時期はCOVID-19の流行し始めた時期から2年経っており,新たな生活様式への慣れや社会的な要因が影響している可能性がある.
 先行研究(Chen L et al.2020)のように歩行能力と抑うつ気分の関連は認めなかったが,抑うつ気分と作業参加には有意な正の相関が認められ,別の先行研究(諸星ら.2019)でも示されている内容であった.
 しかし,サンプル数が少ないため,歩行能力,抑うつ気分,作業参加の関係を明らかにするためには更なる調査が必要である.