[PN-9-8] 精神科に勤務する作業療法士が地域のグループに関与する意義
【序論】
筆者は国立長寿医療研究センター(以下NCGG)よりコグニサイズの指導者認定を受け,当センターデイケアにてコグニサイズを実施している.コグニサイズとはNCGGが開発し,有酸素運動と認知課題を同時に負荷することで認知機能低下を抑制することを目的とした活動の総称であり,習慣化することが推奨されている.また病院や高齢者施設における実施例や教室による運動習慣の効果に関する報告はあるものの,習慣化に向けてグループの設立と継続に焦点をあてた報告は少ない.筆者は福祉・行政との会議の他,認知症予防の活動をするグループに業務派遣として関与する中で,コグニサイズを地域で開催してほしいという多くの要望を聞いていた.
【目的】
コグニサイズの自主グループ立ち上げ支援を通した,新たなコミュニティ作りに作業療法士が関与する意義を明らかにすること.
【方法】
対象者は地域で筆者が講演した『コグニサイズって何だ?』を受講した方のうち,体験を希望した17名のクローズドグループ.隔週木曜日に3か月間全6回開催.内容は①初回オリエンテーション,②~⑤コグニサイズ体験,⑥座談会とした.①の前および⑥の後に運動習慣について問うアンケートを実施した.①ではで本事業開催の経緯と自主化を目的にすることを説明した.出席カードを渡し,3か月後は修了証を贈呈する予定を説明した.また開始・終了時に必要な準備や片付け,清掃への協力等の役割を提示し,体調に合わせて皆で分担するよう促した.運動にあたる注意点は毎回掲示した.特に上達が目的ではないため,課題は皆で提案し合い否定しない配慮を促した.期間中,個別のアドバイスや質問に応じ,希望者にはNCGG-FAT(i-padを用いた認知機能検査)を実施し,結果を返却するとともに個別のアドバイスや質問に応じた.対象者には学会発表の説明を行い,協力の同意を得ている.また本演題発表に際して開示すべきCOⅠ関係にある企業はない.
【結果】
②では,いい加減にやっても意味がない,筆者不在では無理だと発言した方がおり,場は不安や緊張の高まりによると思しき沈黙が流れた.筆者は『他のみなさんはどうですか』と“今ここ“の気持ちの意識化を図った.⑤では『課題は自分達で考えると認知症予防になるよね』と述べる方に,多くの頷きが見られた.⑥では『年齢を理由に諦めがちな新たなことへのチャレンジができた』『雰囲気が良く毎回楽しみだった』等の肯定的な発言が聞かれた.出席率は82%であった.講座前後の両方のアンケートを完遂した有効回答数は12名(回数率70.5%)であった.講座の満足度は『かなり満足』91.6%,参加を機に『グループの時間以外にもコグニサイズをするようになった』50%であった.全6回の講座終了後,自主化を希望した12名のグループが成立した.横浜市が開設した地域活動を検索できるウェブサイトに登録され,1年半後の現在も活動を継続している.
【考察】
①にて教室開催の経緯を伝え,スタッフ,参加者双方の自主化に向けた課題を明確にしたことは,集団力動の軸となった.そのためグループの不安が顕在化しても,情緒に焦点をあてつつ規範となる言動を取り上げた関わりは,自律に向かう力を活性化させた.NCGG-FATを受ける機会は,個別の関係を求める方や,自己の詳細を把握したい方に対して,非侵襲的な方法で満足を提供したと推察する.グループの治療因子やプロセスに関する知識や経験のある作業療法士が地域に出向き協働することは,住民らの安心・安全な場の基盤作りとともに,新たな習慣化へと繋がるコミュニティ作りに貢献できると考える.
筆者は国立長寿医療研究センター(以下NCGG)よりコグニサイズの指導者認定を受け,当センターデイケアにてコグニサイズを実施している.コグニサイズとはNCGGが開発し,有酸素運動と認知課題を同時に負荷することで認知機能低下を抑制することを目的とした活動の総称であり,習慣化することが推奨されている.また病院や高齢者施設における実施例や教室による運動習慣の効果に関する報告はあるものの,習慣化に向けてグループの設立と継続に焦点をあてた報告は少ない.筆者は福祉・行政との会議の他,認知症予防の活動をするグループに業務派遣として関与する中で,コグニサイズを地域で開催してほしいという多くの要望を聞いていた.
【目的】
コグニサイズの自主グループ立ち上げ支援を通した,新たなコミュニティ作りに作業療法士が関与する意義を明らかにすること.
【方法】
対象者は地域で筆者が講演した『コグニサイズって何だ?』を受講した方のうち,体験を希望した17名のクローズドグループ.隔週木曜日に3か月間全6回開催.内容は①初回オリエンテーション,②~⑤コグニサイズ体験,⑥座談会とした.①の前および⑥の後に運動習慣について問うアンケートを実施した.①ではで本事業開催の経緯と自主化を目的にすることを説明した.出席カードを渡し,3か月後は修了証を贈呈する予定を説明した.また開始・終了時に必要な準備や片付け,清掃への協力等の役割を提示し,体調に合わせて皆で分担するよう促した.運動にあたる注意点は毎回掲示した.特に上達が目的ではないため,課題は皆で提案し合い否定しない配慮を促した.期間中,個別のアドバイスや質問に応じ,希望者にはNCGG-FAT(i-padを用いた認知機能検査)を実施し,結果を返却するとともに個別のアドバイスや質問に応じた.対象者には学会発表の説明を行い,協力の同意を得ている.また本演題発表に際して開示すべきCOⅠ関係にある企業はない.
【結果】
②では,いい加減にやっても意味がない,筆者不在では無理だと発言した方がおり,場は不安や緊張の高まりによると思しき沈黙が流れた.筆者は『他のみなさんはどうですか』と“今ここ“の気持ちの意識化を図った.⑤では『課題は自分達で考えると認知症予防になるよね』と述べる方に,多くの頷きが見られた.⑥では『年齢を理由に諦めがちな新たなことへのチャレンジができた』『雰囲気が良く毎回楽しみだった』等の肯定的な発言が聞かれた.出席率は82%であった.講座前後の両方のアンケートを完遂した有効回答数は12名(回数率70.5%)であった.講座の満足度は『かなり満足』91.6%,参加を機に『グループの時間以外にもコグニサイズをするようになった』50%であった.全6回の講座終了後,自主化を希望した12名のグループが成立した.横浜市が開設した地域活動を検索できるウェブサイトに登録され,1年半後の現在も活動を継続している.
【考察】
①にて教室開催の経緯を伝え,スタッフ,参加者双方の自主化に向けた課題を明確にしたことは,集団力動の軸となった.そのためグループの不安が顕在化しても,情緒に焦点をあてつつ規範となる言動を取り上げた関わりは,自律に向かう力を活性化させた.NCGG-FATを受ける機会は,個別の関係を求める方や,自己の詳細を把握したい方に対して,非侵襲的な方法で満足を提供したと推察する.グループの治療因子やプロセスに関する知識や経験のある作業療法士が地域に出向き協働することは,住民らの安心・安全な場の基盤作りとともに,新たな習慣化へと繋がるコミュニティ作りに貢献できると考える.