第57回日本作業療法学会

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ポスター

理論

[PO-2] ポスター:理論 2

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PO-2-1] 急性期身体障害作業療法領域における作業に焦点を当てた実践に関する文献レビュー

阿部 直人1,2, 笹田 哲3 (1.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科博士前期課程, 2.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院リハビリテーション部, 3.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】近年,作業に焦点を当てた・作業を基盤とした作業療法が重要視されている.青山ら(2020)は作業を基盤とした作業療法について「作業療法の理論とその他のモデルをクライアントの状況に合わせて選択・組み合わせ,多様性のあるクライアントの作業適応や作業遂行の状況,個人的・環境要因を構成的・非構成的方法を用いて評価・概念化し,訓練したり,作業を手段や目的として利用したり,環境調整しながら焦点をあてた作業遂行を支援できること」と述べている.急性期身体障害作業療法領域においても作業を基盤とした作業療法を実施しクライアントのADLやQOLの向上を認めた報告が散見される.しかし,環境による制限やクライアントの状態などにより実践が困難な場合もある.また,どのような理論が急性期作業療法で使用しているか定かではない.従って,本研究の目的は急性期で使用される理論などについて調査し,急性期における作業を基盤とした作業療法の実践に関する方略について検討することとした.
【方法】医学中央雑誌Webを用いて「急性期」と以下のキーワードを一つずつ投入し検索を行った.キーワードは「人間作業モデル/MOHO」,「作業遂行と結びつきのカナダモデル/CMOP-E」,「作業療法介入プロセス/OTIPM」,「作業に根ざした実践2.0/OBP2.0」,「ストレングスモデル」,「APL/プール活動レベル」とした.文献選別基準は原著論文,症例報告を対象とし,急性期身体障害領域の記載がある文献とした.分析は対象疾患,介入前クライアントの状態,介入期間,理論,評価,介入,成果アウトカムについてまとめた.
【結果】重複した文献を除き20件抽出した.うち除外10件であり,10件11事例を分析の対象とした.急性期における作業を基盤とした作業療法の対象疾患は脳卒中8件,脳腫瘍3件であった.クライアントの状態は意識障害により長期入院が見込まれ,遂行能力の低下があり作業遂行の困難さや作業再開への不安を示していた.介入期間は平均47.6日間であった.理論は人間作業モデル(以下MOHO)8件,作業療法介入プロセス1件,MOHOとカナダ作業遂行プロセスモデルと生体力学モデルの組み合わせが1件,MOHOと生体力学モデルの組み合わせが1件であった.評価内容は身体機能,認知機能,機能的自立度評価法(以下FIM)に次いでMOHOST,OSA,COPM等であった.介入は目的としての作業10件,機能訓練9件,環境調整3件,手段としての作業2件であった.成果アウトカムは遂行能力に関する非構成的評価が14件,FIM9件,Brunnstrom Stage 7件,MOHOST6件,OSA2件,その他COPM,AMPSなど2件であった.
【考察】急性期における作業を基盤とした作業療法の対象者は遂行能力の低下により作業遂行の困難さや作業再開への不安を示す長期入院が見込まれた脳卒中,脳腫瘍患者であった.理論はMOHOやMOHOと他の理論を組み合わせて使用していることが多かった.急性期は心身機能の回復が見込まれる時期であり,生体力学モデルなど心身機能に着目した理論をMOHOなどの理論と組み合わせて使用することが必要である.また,意識障害や認知機能障害などの症状が顕著に出現する時期であるため,MOHOSTなどの観察評価を用いる必要があり,MOHOが多く使用されていたと考える.そして,介入は目的としての作業に加え機能訓練を取り入れており,目的としての作業と機能訓練を並行して行うことが重要であることが示唆された.しかし,急性期では作業環境の制限やクライアントの状態によって介入に取り入れる作業が影響する.そのため,今後は作業療法士がどのような情報から作業を選択し介入に取り入れているかを明らかにする必要がある.