第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-4] ポスター:基礎研究 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PP-4-2] 当院回復期リハビリテーション病棟患者の在宅復帰に関わる要因の検討

宇梶 慶明 (一般社団法人巨樹の会 新宇都宮リハビリテーション病院)

【はじめに・目的】
 回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)は2000年に創設され,2022年6月時点では全国に1,530病院,90,946床の病床数がある.当院は2021年6月に回復期病棟を開設し,現在までに911名の回復期対象患者を受け入れている.先行研究では,回復期病棟から在宅復帰するにあたり,Functional Independence Measure(以下FIM)において,トイレ,移乗(トイレ),移乗(ベッド・椅子・車椅子),移動の項目において重要性が高く,脳血管疾患患者におけるFIM運動項目合計得点が在宅復帰に重要と示唆されている.
 今回,当院回復期病棟から退院した脳血管疾患患者に対し,FIM運動項目,在宅復帰との関係性について検討することで,今後の当院におけるリハビリテーションの質向上を図り,早期ADL獲得,在宅復帰に繋げる一つの手がかりとする.なお本研究は当院における倫理委員会の承認を得て実施した.
【対象・方法】
 対象は2021年6月1日から2022年12月31日までに入退院した脳血管疾患患者183名.アウトカム実績指数において除外している患者を除き,対象者を在宅復帰群140名,男性88名(平均年齢67±13歳),女性52名(平均年齢72±14歳).非在宅復帰群43名,男性27名(平均年齢75±13歳),女性16名(平均年齢85±17歳)の2群に分類した.FIM運動項目を選択するにあたり,有意水準をp<0.05未満に設定しMann-WhitneyのU検定を行い,在宅復帰群,非在宅復帰群で関係性を検証した.すべての項目,年齢に有意差がみられたため,今回は先行研究において重要とされているトイレ,移乗(トイレ),移乗(ベッド・椅子・車椅子),移動の4項目に,排尿コントロール,排便コントロール,年齢の3項目を加え,在宅復帰群,非在宅復帰群を従属変数,FIM運動項目(6項目),年齢を独立変数とし,有意水準をp<0.05未満に設定してロジスティック回帰分析を行った.なお,各項目のFIM点数は入院時の点数を用いて検証した.
【結果】
 ロジスティック回帰分析により,移乗(ベッド・椅子・車椅子)においてp<0.01(オッズ比2.3),年齢p=0.008(オッズ比0.95),回帰式の的中率は80.87%であった.この2項目において有意な結果となり,在宅復帰との関係性が示唆された.それ以外の項目においては有意な関係性は認められなかった.
【考察】
 本研究では,移乗(ベッド・椅子・車椅子),年齢の項目において有意な結果となった.移乗は離床時間や活動量に大きく関わり,入院早期から動作獲得,介助量軽減が必要といえる.また,入院時より移乗に対して重点的な訓練を行うことで,在宅復帰に近づけることが可能となるのではないだろうか.年齢とADL自立の関係性は多くの研究がなされており,今回も関係性が示唆された.当院においても後期高齢者の入院数は増加しており,今後もADL獲得,在宅復帰への課題となる.今回,排泄関連動作に関しては有意差はなかったが,それらの動作は他のADLに比べ実施頻度が高く,動作が不安定であった場合,転倒へのリスクも高くなり,介助者の負担も大きくなる.また,在宅生活を見据えた上で排泄の自立を本人・家族が強く希望することは多く,重要性も高いため,早期獲得を目指す必要がある.
 今回は退院先とFIM運動項目の関係性を対象としたが,認知機能面,介護度などの関係は切り離すことができない課題といえる.当院では在宅復帰した患者に対し,退院後の生活に関する追跡調査を実施している.退院後にどのような生活を送り,入院中に獲得した動作をどの程度継続することができているのかなど,当院でのリハビリテーションの効果を改めて調査していくことが重要となる.