[PP-4-4] 回復期リハビリテーション病棟での目標共有におけるADOC使用に関する比較検討
【はじめに】リハビリテーション領域の目標設定はクライエント(以下;CL)の症状や個人,環境因子によって選択肢が変化するためShared decision-making(以下;SDM)で進めることが望ましい(Whitney,2004).SDMの補助ツールとしては,作業選択意思決定支援ソフト(以下;ADOC)が開発され(Tomori,2012),多職種との目標共有(川口,2019)としても使用されている.当院の回復期リハビリテーション病棟(以下;回復期)において,OTの目標設定時にADOC使用の有無が目標共有におけるCLや多職種間での認識の違いを生じさせている事を経験する.今回,当院の回復期に所属するOTに目標共有に関するアンケート調査を行い,ADOC使用が明確な目標設定を可能にし,CLや多職種間での目標共有の意識に繋がる可能性が示唆された為,報告する.
【目的】当院の回復期に所属するOTを対象に,ADOC使用の有無がCLや多職種との目標共有に対する影響をアンケート形式にて実態を調査した.
【対象】当院の回復期担当OT12名とし,比較検討を行うため,ADOC使用群(以下;使用群)6名(経験年数3~20年目),ADOC未使用群(以下;未使用群)6名(経験年数7~22年目)とした.未使用群は作業療法面接における補助ツールは使用していなかった.
【方法】目標共有の重要性の認識や遂行程度に関するアンケート(川口,2020)を採用した.項目は,重要性の認識(4項目),患者との目標共有の遂行程度(6項目),多職種との目標共有の遂行程度(4項目),活動に焦点化した介入の遂行程度(1項目)とし,回答方法は5件法(非常にそう思う~全く思わない)で最も当てはまるものを選択してもらった.アンケート分析は,各設問の回答比率を算出し正規性を確認したのち,Fisherの正規確率検定を行った.統計学的解析は,HAD Version17を使用し,有意水準はp<0.05(両側)とした.
【結果】各項目における自己評価の高い回答比率は,重要性の認識:使用群100%/未使用群100%,患者との目標共有の遂行程度:使用群33~83%/未使用群0~67%,多職種との目標共有の遂行程度:使用群17~67%/未使用群0~50%,活動に焦点化した介入の遂行程度:使用群33%/未使用群50%であった.統計学的解析において,使用群が未使用群より,重要性の認識3項目(p=0.001),患者・多職種との目標共有の遂行程度10項目(p=0.0001) に対し,高値に有意差を認めた.
【考察】重要性の認識では,3項目に有意差を認めたが,両群とも概ね目標共有に対して重要性を認識できていた.これは,当院の回復期に所属するOTの多くがCLや多職種との目標共有の認識を持っている事を示していると考える.一方,患者・多職種との目標共有では,全項目に有意差を認めた.未使用群は,目標設定時に個人差が生じやすく,曖昧になりやすいため,CLや多職種との共有の必要性の認識を下げてしまうのではないかと考えた.ADOCはイラストを提示するという特徴があり,その特徴がCLの大切な作業を可視化しやすく,ADOCの手順に沿ってSDMのプロセスを踏むことを促進した結果,使用群ではCLとの目標共有の遂行に繋がった可能性がある.さらに,ADOCを通して明確な目標を立案することで,多職種に共有しやすい目標になったことが推測され,多職種間での目標共有の意識に繋がった可能性が示唆された.しかし,活動に焦点化した介入については,群間での差は認めなかった.ADOCを使用することで目標設定におけるSDMを促進することができるが,それを活動に焦点化した介入に繋げるためには異なった知識や技術が必要であると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には研究の主旨を説明し,同意を得た.
【目的】当院の回復期に所属するOTを対象に,ADOC使用の有無がCLや多職種との目標共有に対する影響をアンケート形式にて実態を調査した.
【対象】当院の回復期担当OT12名とし,比較検討を行うため,ADOC使用群(以下;使用群)6名(経験年数3~20年目),ADOC未使用群(以下;未使用群)6名(経験年数7~22年目)とした.未使用群は作業療法面接における補助ツールは使用していなかった.
【方法】目標共有の重要性の認識や遂行程度に関するアンケート(川口,2020)を採用した.項目は,重要性の認識(4項目),患者との目標共有の遂行程度(6項目),多職種との目標共有の遂行程度(4項目),活動に焦点化した介入の遂行程度(1項目)とし,回答方法は5件法(非常にそう思う~全く思わない)で最も当てはまるものを選択してもらった.アンケート分析は,各設問の回答比率を算出し正規性を確認したのち,Fisherの正規確率検定を行った.統計学的解析は,HAD Version17を使用し,有意水準はp<0.05(両側)とした.
【結果】各項目における自己評価の高い回答比率は,重要性の認識:使用群100%/未使用群100%,患者との目標共有の遂行程度:使用群33~83%/未使用群0~67%,多職種との目標共有の遂行程度:使用群17~67%/未使用群0~50%,活動に焦点化した介入の遂行程度:使用群33%/未使用群50%であった.統計学的解析において,使用群が未使用群より,重要性の認識3項目(p=0.001),患者・多職種との目標共有の遂行程度10項目(p=0.0001) に対し,高値に有意差を認めた.
【考察】重要性の認識では,3項目に有意差を認めたが,両群とも概ね目標共有に対して重要性を認識できていた.これは,当院の回復期に所属するOTの多くがCLや多職種との目標共有の認識を持っている事を示していると考える.一方,患者・多職種との目標共有では,全項目に有意差を認めた.未使用群は,目標設定時に個人差が生じやすく,曖昧になりやすいため,CLや多職種との共有の必要性の認識を下げてしまうのではないかと考えた.ADOCはイラストを提示するという特徴があり,その特徴がCLの大切な作業を可視化しやすく,ADOCの手順に沿ってSDMのプロセスを踏むことを促進した結果,使用群ではCLとの目標共有の遂行に繋がった可能性がある.さらに,ADOCを通して明確な目標を立案することで,多職種に共有しやすい目標になったことが推測され,多職種間での目標共有の意識に繋がった可能性が示唆された.しかし,活動に焦点化した介入については,群間での差は認めなかった.ADOCを使用することで目標設定におけるSDMを促進することができるが,それを活動に焦点化した介入に繋げるためには異なった知識や技術が必要であると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には研究の主旨を説明し,同意を得た.