[PP-5-2] 中年期の男性が日常生活において楽しみを感じる作業:質的研究
【はじめに】
中年期の男性は,仕事における責任だけでなく,教育費の増加などによる家計の負担,親世代に対する介護の心配など,様々なストレスに晒され,心身の健康を損なうことがあることが報告されている.しかし,この年代の男性が,楽しむことや夢中になれるような,大事な作業(以下楽しみを感じる作業)があるのか,また,あるとすれば,それがどのような性質なのかは明らかにされていない.これらの作業の特性について知ることは,この年代の男性の健康支援を考慮するために有意義であると考える.
【目的】
本研究の目的は,40歳から50歳代男性が,日常生活において,大事にしていて,かつ,楽しんだり,夢中になったりするような作業に従事しているか,また,それらの作業はどのようなものであるかを明らかにすることである.
【方法と対象】
便宜的に抽出した40〜50歳代の健常男性3名に,60〜120分程度の半構造化面接を行った.面接では,家族構成や職業などの一般的情報,日常生活で楽しみを感じる作業,その作業を始めたきっかけ,従事の方法(いつ,どこで,誰と,どのように行う),その作業と生活・人生の目的(こうありたいと思うこと)との関係,幸福感との関係について探った.インタビューの逐語録を作成後,意味のまとまりごとに概念化,カテゴリー化を行った.研究は,研究者が所属していた組織の倫理審査委員会の承認後,対象者の同意を得て実施した.
【結果と考察】
対象者は,A,B,C氏で,全員が首都圏近郊で充実感をもちながら仕事をしており,妻および子どもを含む家族と暮らしていた.また,A氏は不動産関係,B氏は自営業の土木関係,C氏は旅行代理店で仕事を行っていた.インタビュー実施期間が,2020年12月〜2021年3月と,パンデミックの影響下で生活習慣が大きく変わっていたにも関わらず,3名はいずれも仕事以外で,楽しみを感じる作業(A氏はゴルフ,B氏は車のカスタムと料理,C氏は地域活動)に従事していた. また,A氏は不動産関係,B氏は自営業の土木関係,C氏は旅行代理店で仕事を行っていた.
3名の男性対象者にとって,楽しみを感じる作業は,「人の話から学ぶ」「段取りなどを工夫する」「人が喜ぶことを企画する」など,仕事で大切にしていることと関連が見られた.また,対象者は,作業はやりがいや達成感,他の人との空間や時間の共有,新しいことへの挑戦などのような様々な喜びの側面を持ち,生きていく上で重要なものと考えていた.本研究の「楽しさを感じる」作業は,作業科学や作業療法で見なされる「意味のある作業」の特徴と重複しており,楽しさの側面だけでなく,人生の目的や幸福感と関係していた.
作業療法士は,40歳代から50歳代の男性の対象者に対し,ADLの自立や仕事への復帰に焦点を当てる事が多い.しかし,対象者にとって,楽しさを感じる大事な作業に目を向けることで,対象者の仕事に対する価値観をより深く理解し,余暇時間を通じた生活の質の向上の参考資料となり得る可能性がある.
中年期の男性は,仕事における責任だけでなく,教育費の増加などによる家計の負担,親世代に対する介護の心配など,様々なストレスに晒され,心身の健康を損なうことがあることが報告されている.しかし,この年代の男性が,楽しむことや夢中になれるような,大事な作業(以下楽しみを感じる作業)があるのか,また,あるとすれば,それがどのような性質なのかは明らかにされていない.これらの作業の特性について知ることは,この年代の男性の健康支援を考慮するために有意義であると考える.
【目的】
本研究の目的は,40歳から50歳代男性が,日常生活において,大事にしていて,かつ,楽しんだり,夢中になったりするような作業に従事しているか,また,それらの作業はどのようなものであるかを明らかにすることである.
【方法と対象】
便宜的に抽出した40〜50歳代の健常男性3名に,60〜120分程度の半構造化面接を行った.面接では,家族構成や職業などの一般的情報,日常生活で楽しみを感じる作業,その作業を始めたきっかけ,従事の方法(いつ,どこで,誰と,どのように行う),その作業と生活・人生の目的(こうありたいと思うこと)との関係,幸福感との関係について探った.インタビューの逐語録を作成後,意味のまとまりごとに概念化,カテゴリー化を行った.研究は,研究者が所属していた組織の倫理審査委員会の承認後,対象者の同意を得て実施した.
【結果と考察】
対象者は,A,B,C氏で,全員が首都圏近郊で充実感をもちながら仕事をしており,妻および子どもを含む家族と暮らしていた.また,A氏は不動産関係,B氏は自営業の土木関係,C氏は旅行代理店で仕事を行っていた.インタビュー実施期間が,2020年12月〜2021年3月と,パンデミックの影響下で生活習慣が大きく変わっていたにも関わらず,3名はいずれも仕事以外で,楽しみを感じる作業(A氏はゴルフ,B氏は車のカスタムと料理,C氏は地域活動)に従事していた. また,A氏は不動産関係,B氏は自営業の土木関係,C氏は旅行代理店で仕事を行っていた.
3名の男性対象者にとって,楽しみを感じる作業は,「人の話から学ぶ」「段取りなどを工夫する」「人が喜ぶことを企画する」など,仕事で大切にしていることと関連が見られた.また,対象者は,作業はやりがいや達成感,他の人との空間や時間の共有,新しいことへの挑戦などのような様々な喜びの側面を持ち,生きていく上で重要なものと考えていた.本研究の「楽しさを感じる」作業は,作業科学や作業療法で見なされる「意味のある作業」の特徴と重複しており,楽しさの側面だけでなく,人生の目的や幸福感と関係していた.
作業療法士は,40歳代から50歳代の男性の対象者に対し,ADLの自立や仕事への復帰に焦点を当てる事が多い.しかし,対象者にとって,楽しさを感じる大事な作業に目を向けることで,対象者の仕事に対する価値観をより深く理解し,余暇時間を通じた生活の質の向上の参考資料となり得る可能性がある.