第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-7] ポスター:基礎研究 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PP-7-3] リハビリテーション専門職養成校学生における作業参加と精神的健康の関連

井村 亘1,2, 大西 正裕1, 大東 真紀3, 石田 実知子4 (1.玉野総合医療専門学校作業療法学科, 2.川崎医療福祉大学医療技術学研究科 健康科学専攻 博士後期課程, 3.岡山大学大学院 保健学研究科 博士後期課程, 4.川崎医療福祉大学保健看護学部 保健看護学科)

【背景】医療福祉系養成校に在籍する学生の中でも,リハビリテーション専門職養成校に在籍する学生(以下:リハビリ学生)の精神的健康は低いという報告がある(西山,2004).精神的健康の低下は,精神疾患の発症に繋がると考えられており,リハビリ学生の精神的健康の向上に資する知見の蓄積は重要である.さて,作業療法士は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念(日本作業療法士協会,2018)に基づいて人々に作業参加を促している.作業療法の基本理念を基にリハビリ学生の精神的健康の向上に対する支援を考えるのであれば,リハビリ学生の作業参加状況と精神的健康の関連を明らかにする必要がある.
【目的】本研究は,リハビリ学生の精神的健康の向上に向けた支援方法の開発に資する基礎資料を得ることをねらいとして,リハビリ学生の作業参加状況と精神的健康の関連を明らかとすることを目的とした.
【方法】研究デザインは,自記式質問紙による横断的研究とした.対象者の包含基準はリハビリ学生とし,除外基準は,同意が得られなかった者とした.調査内容は,「基本情報(性別・学科・学年)」,個人にとって価値のある活動の日々の参加状況である「作業参加状況」,「精神的健康」とした.「作業参加状況」は自記式作業遂行指標(Self-completed Occupational Performance Index:SOPI)(今井,2010)を用い,「精神的健康」はK6質問票日本語版(吉川,2003)を用いて測定した.分析は,作業療法の基本理念を参考にして,作業参加状況が精神的健康に影響を与えるという因果関係モデルを仮定し,モデルの適合性と変数間の関連性について構造方程式モデリングを用いて解析した.また,モデルにはバイアスとなる可能性のある性別,学科,学年を統制変数として投入した.モデルのデータへの適合性は,適合度指標であるComparative Fit Index(以下:CFI)とRoot Mean Square Error of Approximation(以下:RMSEA)で判定し,順序尺度の推定法である重み付け最小二乗法の拡張法によりパラメーターの推定を行なった.一般的にCFIは0.90以上,RMSEAは0.1を超えていなければデータに対するモデルの当てはまりが良いと判断される.分析モデルにおける標準化推定値(パス係数)の有意性は,非標準化推定値を標準誤差で除した値の絶対値が1.96以上(5%有意水準)を示したものを統計学的に有意とした.統計解析には,Mplus 8.5を使用した.なお,本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認を得た後に実施した.申告すべき利益相反はない.
【結果】調査対象者は,4年制の医療系専門学校1校の理学・作業療法学科に在籍する1~4年生,169名であった.調査は,2022年11月に実施した.仮定したモデルのデータへの適合性は,CFI=0.996, RMSEA=0.036であり,統計学的許容水準を満たしていた.変数間の関連性に着目すると,作業参加状況と精神的健康とは統計学的有意な正の関連(0.684)が認められた.なお,本分析モデルの精神的健康に対する寄与率は36.5%であった.
【考察】本研究結果より,リハビリ学生に対して個人にとって価値のある活動である作業の参加を促すことが精神的健康に良好な影響を与える可能性が示唆された.しかし,本研究は横断研究であり,リハビリ学生の作業参加状況と精神的健康の因果関係までは明らかとはなっていない.そのため今後,縦断研究や介入研究による更なる検討が必要であると考える.