[PQ-3-3] 当院回復期リハビリテーション病棟退院後の健康関連QOLを予測する機械学習モデルの作成
【背景と目的】回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)退院後の健康関連QOL(HRQOL)改善には,ADL(Kyung 2014),IADL(Mutai 2016),生活活動範囲(久掘ら2019)に関連性があるとされているが,回リハ病棟退院時から退院後の経時的変化とその関連性について検討したものは少ない.HRQOLは患者報告アウトカムを基本としており,その人らしい生活の評価の指標となり回リハ病棟退院後には,HRQOLの改善は重要である.近年, 発症時の状態から運動機能やADL依存度を予測するモデル(Yoo2021,Iwamoto2020)が報告されている. 従って, 医療分野で機械学習を利用することは強力なツールのひとつである.本研究の目的は, 退院後のHRQOLを予測するために重要な退院時の説明変数を探索すること, 探索された説明変数を使用した機械学習モデルの予測精度を評価することである. これにより, 対象者に合わせたより効果的な退院支援に繋げる.
【方法】対象は2019年12月からの1年間で当院回リハ病棟に在宅復帰を目標に入院し,研究の同意が得られた者とした.縦断的に退院時,退院後3ヶ月(郵送と電話連絡にて調査)で実施した.調査項目はHRQOL(EQ-5D-5L,SF-36:8つの下位項目を国民標準値に換算,ADL(FIM),IADL(FAI),活動範囲(LSA)とした.欠損値を含む症例のデータは除外した.予測モデルの作成では,まずランダムフォレスト(RF)による説明変数選択を行った.目的変数はEQ-5D-5Lの最小変化量 MCIDを0.10(Chen,2016)とし退院後3か月と退院時のEQ-5D-5Lの差がMCID 以上を改善群,未満を維持低下群の2つとした.説明変数の選択には,前述の調査項目を逐次減させながら評価指標を算出し,説明変数の組み合わせを採択する手法を用いた.説明変数選択の評価指標は,全体のうち向上群, 維持低下群を正しく予測できる割合である正解率とした. その後, 選択された説明変数を用いたRFによるEQ-5D-5Lの予測モデルを作成した. モデルの精度評価には感度,特異度,ROC曲線のArea Under the Curve:AUCの3つを用いた.また,説明変数の重要度を算出した.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を受けて実施し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】分析対象は,同意が得られた患者105名のうち,本人回答が得られ,かつ欠損値を含まなかった68名とした.HRQOL改善群30名,維持低下群38名だった.説明変数選択では, 正解率が0.64で最大となり, SF-36下位項目:日常役割機能(精神)REとFAIが選択された. これらの説明変数を使用したモデルの精度は,感度0.86,特異度0.43,AUC0.765だった. 説明変数の重要度はRE0.61,FAI0.39だった.
【考察】退院後3か月でのHRQOLの改善には,退院までの入院生活において心理的な理由で支障をきたすことが少なかったこと,IADL能力が高いことが挙げられた.今回選択された説明変数に基づいて退院前までにこれらの介入を重点的に実施することで,より効果的な退院支援に繋げ,HRQOL改善の一助となりうることが示唆された.一方で,今回作成したモデルの予測精度はあまり高くなかった.これはサンプルサイズが少ないことによる影響があること,目的変数を維持低下群と向上群の2群に分けたことが考えられる.今後は,予測モデルに基づいた介入を実施することで退院後のHRQOL改善に寄与するかを前向きに検証するとともに,予測精度を上げるためサンプルサイズを増やして予測モデルの構築を行っていきたい.また,HRQOLが維持の群と低下の群で各説明変数の分布が異なる可能性がある.今後は低下,維持,向上の3つを目的変数としたモデルの構築も実施していく.
【方法】対象は2019年12月からの1年間で当院回リハ病棟に在宅復帰を目標に入院し,研究の同意が得られた者とした.縦断的に退院時,退院後3ヶ月(郵送と電話連絡にて調査)で実施した.調査項目はHRQOL(EQ-5D-5L,SF-36:8つの下位項目を国民標準値に換算,ADL(FIM),IADL(FAI),活動範囲(LSA)とした.欠損値を含む症例のデータは除外した.予測モデルの作成では,まずランダムフォレスト(RF)による説明変数選択を行った.目的変数はEQ-5D-5Lの最小変化量 MCIDを0.10(Chen,2016)とし退院後3か月と退院時のEQ-5D-5Lの差がMCID 以上を改善群,未満を維持低下群の2つとした.説明変数の選択には,前述の調査項目を逐次減させながら評価指標を算出し,説明変数の組み合わせを採択する手法を用いた.説明変数選択の評価指標は,全体のうち向上群, 維持低下群を正しく予測できる割合である正解率とした. その後, 選択された説明変数を用いたRFによるEQ-5D-5Lの予測モデルを作成した. モデルの精度評価には感度,特異度,ROC曲線のArea Under the Curve:AUCの3つを用いた.また,説明変数の重要度を算出した.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を受けて実施し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】分析対象は,同意が得られた患者105名のうち,本人回答が得られ,かつ欠損値を含まなかった68名とした.HRQOL改善群30名,維持低下群38名だった.説明変数選択では, 正解率が0.64で最大となり, SF-36下位項目:日常役割機能(精神)REとFAIが選択された. これらの説明変数を使用したモデルの精度は,感度0.86,特異度0.43,AUC0.765だった. 説明変数の重要度はRE0.61,FAI0.39だった.
【考察】退院後3か月でのHRQOLの改善には,退院までの入院生活において心理的な理由で支障をきたすことが少なかったこと,IADL能力が高いことが挙げられた.今回選択された説明変数に基づいて退院前までにこれらの介入を重点的に実施することで,より効果的な退院支援に繋げ,HRQOL改善の一助となりうることが示唆された.一方で,今回作成したモデルの予測精度はあまり高くなかった.これはサンプルサイズが少ないことによる影響があること,目的変数を維持低下群と向上群の2群に分けたことが考えられる.今後は,予測モデルに基づいた介入を実施することで退院後のHRQOL改善に寄与するかを前向きに検証するとともに,予測精度を上げるためサンプルサイズを増やして予測モデルの構築を行っていきたい.また,HRQOLが維持の群と低下の群で各説明変数の分布が異なる可能性がある.今後は低下,維持,向上の3つを目的変数としたモデルの構築も実施していく.