第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-3-5] 地域連携で療法士の訓練環境を整え,患者さんを笑顔にする取り組み

篠田 昭, 林 佳宏, 吉川 晋矢 (医療法人社団洛和会 洛和会音羽病院リハビリテーション部)

【はじめに】
当院では2022年度よりSDGsの取り組みとしてホテルオークラ京都で使用されたブラシを回収してリユースしている.道具が揃うことにより療法士の働き方や介入内容に変化を起こす一助となったため報告する.
【背景・目的】
当院は第三次救急病院であり,救急搬送から入院に至る患者さんが多い.入院生活準備をしてくることは稀であり,家族からの持ち込みもあるが,疎遠であったり遠方であったりと十分な入院環境を整えることは難しい.入院時に病衣やタオルを契約することでコップとスリッパ,ティッシュは支給されることになったが『整容動作』の1つである整髪に注意が向くことは少ない.急性期病院では整髪がなされずに寝癖が付いた患者さんに出会うことは多い.潤沢にブラシを用意して患者さんに渡すことで療法士の介入内容の変化や患者ADLの変化を起こすために本取り組みを開始した.
当院ではB型肝炎ウィルス対策として当院ではブラシの共用を禁止している背景があり,ADLの関わりとしても十分に介入出来ていなかった.
【方法】
洛和会音羽CSR(corporate social responsibility)会議を発端にホテルオークラ京都のESG(environment social governance)推進室と連携して使用済みのブラシ・櫛を回収して適切な洗浄消毒作業を行い,院内で再利用できる手順を整えた.ブラシ・櫛は患者さんに渡して回収しないことで訓練場面以外にも日常的に道具を使用出来る環境を整えることや回収しないことで導入難易度の軽減を図った.道具は作業療法士のみならず理学療法士や言語聴覚士も使用して提供することとした.
【結果】
経過記録のなかに記載された整容に関するキーワードの出現数を比較すると2021年度の月平均に対して2022年度は月に300回以上キーワードが多く出てくるようになり,療法士の整容動作への介入量が増大した.当院の院内利用だけでなく,法人内の他所管リハビリテーション部への配布や看護部への配布も行っている.ホテルオークラ京都からも廃棄物の削減に繋がり,廃棄物処理費用の抑制ができたと報告を受けている.
療法士からは道具があれば患者さんの動きを引き出しやすく,生活のリズム作りにも役立ったと良好な感想を受けている.
【考察】
ブラシを使用することができず,訓練内容に制限を受けている状況は人-作業-環境モデルで考えると環境が阻害されている状況だと考えることができる.環境を整えることで人である療法士が変わり,作業である訓練プログラムに変化を起こすことができたと考える.整容の訓練に利用出来る道具があることで療法士の視点が広がり,患者さんは日々自身で使用出来る道具があることで入院生活においても生活のリズムを作ることができるようになったと考える.作業療法士にとって道具は大きな武器であり,訓練には必須である.訓練備品の準備や安全利用には日々悩まされるが,院内完結ではなく周りに協力を求めることで昨今話題のSDGsを含めた取り組みが可能となった.